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2018年10月26日金曜日

突発性難聴ではBPPV様の眼振を生じる

突発性難聴ではめまいや眼振を伴うことは有名である.
 どのような眼振を生じるかというと, とてもBPPVに類似したタイプの眼振となる.
(J Neurol. 2016 Oct;263(10):2086-96.)


突発性難聴の5-19%でBPPVと同様の頭位に関連して出現する眼振を認める.
・特に水平半規管のBPPVで認められるような, 向地方向性眼振が最も多く, 次いで背地方向性眼振が多い. 
・眼振は患側に頭を傾けた際に増強することが多い.
(Otol Neurotol 35:1626-1632, 2014. )

突発性難聴において, Spine roll試験とDix-hallpike試験で誘発される眼振を認める44例の解析
(Int J Audiol. 2016 Oct;55(10):541-6. )
・持続性の向地方向性の眼振で, Dix-hallpike陰性が52%, 陽性が11%
 持続性の背地方向性の眼振で, Dix-hallpike陽性が18%, 陽性が2%
 Dix-hallpikeでのみ誘発されるタイプが16%
・HITで末梢性パターンは向地方向性の眼振の半数程度で認める

また, 突発性難聴の眼振は経過中に変化することがある
(Medicine (2018) 97:43(e12982))
・眼振のタイプが経過中に変化することがあり眼振を伴う突発性難聴50例のうち, 15例で眼振が変化.
眼振は麻痺性眼振, 刺激性眼振, 向地方向性, 背地方向性, 後三半規管のBPPVタイプと様々.
・変化は発症2日〜75日で生じている

変化した症例

眼振タイプの変化
・眼振は向地方向性が多い. 変化するのも向地方向性背地方向性で多いが, 様々なパターンがある.

突発性難聴による眼振とBPPVの違いは?
・BPPVによる眼振は耳石の移動が関係しているが, 突発性難聴では”Light cupula”による機序が指摘されている.

Light cupulaとは
(J Audiol Otol. 2018 Jan;22(1):1-5.)
・通常半規管内のクプラと内リンパ液の重さは同じであり体位を変換しても双方の位置関係は変わらない.
クプラが軽く(Light cupula)または重く(Heavy cupula)となると重力がかかる際に両者の位置関係が変化する
・また, 重力がかからない体位(null plane)では眼振が軽快する

症状としては, Light cupulaでは潜時がなく, 減衰もしない点がポイント.
持続性の眼振となる.

Light cupulaの機序は色々説がある.
Cupulaが軽くなる説 
・アルコール摂取では, 体内のアルコールが内リンパ液よりもクプラに先に分布することで, Light cupulaとなる.
 positional alcohol nystagmusと呼ばれる体位性の眼振を生じる.
突発性難聴では, クプラが腫大することで, Light cupulaとなる可能性

内リンパ液が重くなる説
・迷路内への出血や, 内耳の虚血, 炎症により, 血液-迷路内への透過性が亢進し, 蛋白を含んだ浸出液が混ざり, 内リンパ液の比重が増大する.
 相対的なLight cupulaを生じる
・突発性難聴において, 眼振の方向が変化する機序としても考えられている

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突発性難聴の眼振パターンはBPPVと類似する.
Light cupulaが関係しており, 潜時がなく, 持続性がポイント.
経過中に眼振のタイプが変化することも.
難聴ある時点でBPPVではないのはその通りですけども.