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2018年10月11日木曜日

症例: 尿から膿. 腎臓には玉

70歳女性尿に膿が.

 重症肺炎にてICU管理中喀痰からは緑膿菌が検出され抗菌薬にて肺炎歯改善傾向にあるしかしながら発熱は微熱が持続. CRP10mg/dL前後で横ばいとなりルート感染, CDI, 肺膿瘍の形成などは否定的
 尿検査では細菌の検出はなく酵母のみ検出

 最初は経過観察していたが炎症が持続しさらに尿道カテーテルより徐々に膿性の尿が漏出し始めたほぼ膿.
 グラム染色では, 多数の好中球に発芽, 仮性菌糸を形成した酵母が多数認められた.

 そこでエコーを当てるとこのような像が得られた.

(写真は本人ではなく論文から)
(Kidney International (2007) 71, 373)

 さてこれはなんだろうか?
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カンジダ腎盂腎炎. Fungus ball形成



カンジダが尿から検出されるのは決して珍しいものではない.健常人では<1%と稀だが入院患者では5%, 重症患者では10%で認められる.
(Clinical Infectious Diseases 2011;52(S6):S433–S436)

リスク因子は以下の通り

 (Infect Dis Clin N Am 28 (2014) 61–74 )

尿からカンジダが検出=カンジダUTIではなく無症候性の真菌尿であることが大半.
・ごく一部でUTI症状や発熱の原因となることがある.・また深在性真菌症カンジダ血症の一部症としてカンジダ尿症を伴うこともある.
UTI症状があり, 他の感染症が否定的でかつ尿中の細菌に対する抗生剤治療で反応しない場合や膣や尿道カテーテルからのコンタミ, 常在によるカンジダ尿症が考えにくい場合, カンジダUTIを考慮する.

ちなみに, 検出されるカンジダは以下の頻度
  (Infect Dis Clin N Am 28 (2014) 61–74)

カンジダUTIを疑った際のアプローチ
(Clinical Infectious Diseases 2011;52(S6):S452–S456 )
まずカンジダ血症からのカンジダ尿症ではないかどうかを評価
・尿検査は繰り返し行い, 有意なカンジダ尿症かの確認も重要
 カンジダ円柱は稀だが, 認められれば腎臓での感染を疑う.
症候性のカンジダ尿症では, 腹部エコーにて腎臓, 膀胱の評価を
 Fungus ballが認められる可能性, 閉塞の評価を行う.
 CTにて腎膿瘍や周囲の炎症所見の確認も考慮する.
症状は他のUTIと同様. 腎盂腎炎や膀胱炎, 前立腺炎, 精巣上体炎など生じる
尿検査では
 膿尿はカテーテル留置中の患者では非特異的に認められるためカンジダUTIの診断に有用とは言えない.
 カテーテル(-), 尿からカンジダのみ検出され, 且つ膿尿があれば疑わしい
尿グラム染色では,
 4-10µmの出芽している酵母で仮性菌糸を認めるものはC. albicans, parapsilosis, tropicalisを疑う.
 2-4µmで仮性菌糸を認めない小さめの酵母はC. glabrataを考慮する.
(Clinical Infectious Diseases 2011;52(S6):S452–S456 )(Clinical Infectious Diseases 2005;41:S371–6 )

カンジダによるFungus ball
 (RadioGraphics 2005; 25:1335–1356)
(Kidney International (2007) 71, 373)

・腎盂や膀胱で認められ, 尿管閉塞もきたす

カンジダUTIの治療
(Journal de Mycologie Médicale (2017) 27, 293—302 )
・感染部位や疑うカンジダにより抗真菌薬の種類, 投与期間を決める
・Fungus ballは長期間投与が必要となる

無症候性の場合は基本的に治療は不要
(Journal de Mycologie Médicale (2017) 27, 293—302 )