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2014年12月22日月曜日

Tolvaptan(サムスカ®)について

長いのでまず初めにまとめると
Tolvaptan(サムスカ®)は,
⚫︎ 急性心不全で使用するとより早く利尿がつく. 症状コントロールが可能だが, 予後は改善させない.
⚫︎ 慢性心不全で使用すると, 心不全増悪による入院頻度が有意に低下する.
 >>基本的には利尿薬でVolコントロールが困難な患者で用いるべきと考える.

⚫︎ 肝硬変の難治性腹水への使用では8割で効果が期待できる

⚫︎ Euvolemic, Hypervolemic hyponatremiaへの使用では
 水制限よりもNa補正効果が良好.
 3%NaClには劣る. 注意点は最後を参照.

心不全へのTolvaptan
心不全では有効循環血液量が低下し, ADH分泌が更新している状態となり悪循環に陥る
 Tolvaptanはvasopressin V2受容体阻害薬であり, 心不全や肝不全による体液貯留, 低Naの治療薬として期待されている

急性心不全の治療におけるTolvaptan(TLV)

NYHA II-IIIのEF<40%, うっ血所見(+)の心不全患者83例 (J Cardiac Fail 2011;17:973-981) 
 Placebo vs TLV 30mg vs Furosemide 80mg vs TLV+FUROに割り付け, 7日間継続.

 塩分制限2g/dを割り付け2日前より継続.
アウトカム:尿量は有意にTLV投与群にて増加する
TLV使用群ではFurosemide併用の有無に関わらず尿中Naは低下し, 血清Na値も低下しない

EVEREST trial: 心不全で入院した4133例のDB−RCT JAMA. 2007;297:1319-1331 
 NYHA III-IVでEF≤40%, 溢水症状がある患者群.
 入院時に心筋梗塞あり, 血行動態不安定, Cre>3.5, K>5.5, Hb<9は除外.
 通常治療に加えて, Tolvaptan 30mg/d群 vs Placebo群に割り付け.
アウトカム
 死亡, 心血管イベントリスク, 心不全増悪リスクは有意差なし.
 体重減少, 呼吸苦, 浮腫改善はTLV使用群で有意に良好.
 血清NaもTLV使用群では増加する.
 副作用は口渇感, 口腔内乾燥が11-16%と高頻度で認められる.

急性心不全におけるTolvaptan vs Carperitide: AVCMA
 109例の慢性心不全のうっ血による急性増悪例を対象としたRCT. The Journal of Clinical Pharmacology 2013;53:1277-1285
 心筋梗塞や無尿, Na>147mEq/L, ショックは除外
 Tolvaptan(サムスカ®) 3.75-15mg/d vs Carperitide(ハンプ®)0.0125-0.025µg/kg群に割り付け.
アウトカム:
 Tolvaptan群のほうが有意に尿量が多いが, 飲水量も増加する
 臨床症状は有意差ないが, BNPはTLVで有意に低下.
 NaもTLVで高い

AVCMAの長期予後を評価したStudyでは再入院率, 死亡率, 心臓イベント率は有意差なし
BioMed Research International Volume 2014, Article ID 704289 

日本国内の発売後調査による副作用 (Circ J 2014; 78: 844–852) 
 口渇感と高Na血症が多く, 投与開始1−3日で出現する例が最多
 高Na血症のリスク因子としては初期Na>142, 15mg/dからの開始, 血清K<3.8mEq/Lが挙げられる。

慢性心不全に対するTLVの効果
NYHA II-III, EF≤30%の心不全患者240例 (J Am Coll Cardiol 2007;49:2151–9) 

 通常の治療に加えて TLV 30mg/d vs Placeboに割り付け
 1年後のLV end-diastolic vol.を比較したDB−RCT.
 Cre>3.0mg/dL, BUN >60mg/dLは除外
LVEDVI, 電解質, VAS全て有意差はない.
死亡は5% vs 9%, 心不全入院は18% vs 28%と有意にTLVで減少効果が認められる.
 おもにHFの入院を抑制できるかもしれない.

肝硬変に対するTLV
肝硬変による腹水貯留に対するTolvaptan(サムスカ®
難治性の肝硬変による腹水貯留患者39例において, TLV 15mg/dを5−14日間とFurosemide 40-80mg/d, Spironolactone 80-160mg/dを投与. World J Gastroenterol 2014 August 28; 20(32): 11400-11405 
 上記治療以外に塩分制限<6g/d, Alb 10−20g投与も併用.
 難治性腹水は以下を行ってもコントロール不良群
  NaCl<6g/dの塩分制限を1週間, Alb投与10-20g, 利尿薬(Furosemide 160mg, Spironolactone 200mg/d). 腹水穿刺 3−5Lを施行してもコントロール不良.
アウトカム;
 8-9割で尿量上昇, 腹囲の改善, 下肢浮腫の改善を認める.
 著明に改善を認めるのが45%
 低Na合併例ではNa値の改善効果も期待できる.

低Na血症(Euvolemic, Hypervolemic hyponatremia)に対するTLV
SALT trial: Euvolemic, Hypervolemic HypoNa患者448例を対象としたDB−RCT. N Engl J Med 2006;355:2099-112. 
 患者は心不全, 肝不全, SIADHによる低Na血症
 Cre>3.5mg/dLの腎不全は除外.
 Tolvaptan 15mg/d(~60mg) vs Placebo群に割り付け, 比較.
 血清Naの変化: (左SALT−1, 右SALT−2)

Tolvaptan
Placebo
Tolvaptan
Placebo
Baseline
128.5±4.5
128.7±4.1
129±3.6
128.9±4.5
Day 4
133.9±4.8
129.7±4.9
135.3±3.6
129.6±5.2
Day 30
135.7±5.0
131.0±6.2
135.9±5.9
131.5±5.7
 TLV群では飲水量, 尿量も増加.

SALTWATER trial: SALT-trialの長期フォロー. J Am Soc Nephrol 21: 705–712, 2010. 
 open-labelでTLVを継続した111例を701日間フォロー.
 SALT trialでPlaceboだった群もTLV内服に切り替え継続.
心不全, 肝硬変, SIADHどのタイプでもNaは上昇する.

TLV vs 水分制限
 Euvolemic, Hypervolemic HypoNa患者28例を対象したopen-label RCT (Am J Cardiol 2006;97:1064–1067) 
 TLV 10mg/d(~60mg) vs 1日1200mlの飲水制限 + Placeboに割り付け.
 TLVの方がNa改善効果は良好.

TLV vs 3%NS負荷

 低Naで入院した患者群のProspective cohort.  Journal of Research in Pharmacy Practice 2014;3:34−36
 そのうち3%NSで治療された群とTLVで治療された群, 合計60例で治療開始後24h, 48hでの血清Na変化をフォローした.

 3%NSのほうが迅速にNa補正が可能.
 急ぐ時は3%NSのほうが良いが, TLVはより緩徐に補正可能であり准緊急や慢性経過ではむしろ良いのかも

低Naに対するバソプレシンV2-R阻害薬を使用する際の注意点
The American Journal of Medicine (2013) 126, S1-S42

⚫︎ Hypovolemic Hyponatremiaを除外しましょう
⚫︎ 他の低Na血症治療との併用は控えましょう
 3%NaClの投与
 飲水制限 >> 従って挿管患者は経口摂取困難な患者、口渇感を訴えられない患者(寝たきり、胃瘻など)では自然に飲水制限になってしまう可能性があるため, そのよう患者では避けるかNaフォローをより頻回にすべきである。
⚫︎ 投与開始後24-48時間はNa濃度を6−8h毎にチェックすべき
⚫︎ 投与開始後24−48時間は補液を併用しつつ、水分摂取制限とならないように注意。急速⚫︎ にNaが上昇する可能性がある
⚫︎ 重度の症候性の低Na血症では3%NaClを優先すべきである

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