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2014年12月4日木曜日

PCI施行後(Drug-Eluting stent)の抗血小板薬 2剤療法(DAPT)の期間は?(2014/12/4 Up date)

DESによるPCI後のアスピリン+クロピドグレルといった2剤療法の期間については,
N Engl J Med. 2010 Apr 15;362(15):1374-82が有名
12mo以上前にDrug-Eluting Stent留置された2701名のRCT
(REAL-LATE*, ZEST-LATE trial*の混合)
 過去12mo, 99.7%がAspirin + Clopidogrelを併用しており, その間, 出血イベント, 他の心血管イベントを認めなかった患者群.
 Aspirin(100-200mg/d) + Clopidogrel(75mg/d) vs Aspirin単独群で比較. 19.2moフォローし, 心血管イベントを評価(ITT).
母集団と, DAPTの期間: 母集団にはSTEMI, Non-STEMI, UAPも含まれる.
Outcome; 24moの累積発症率
Outcome
A+C併用
A単独
HR
MI, 心血管死亡
1.8%
1.2%
1.65[0.80-3.36]
全死亡
1.6%
1.4%
1.52[0.75-3.50]
MI
0.8%
0.7%
1.41[0.54-3.71]
Stroke
1.0%
0.3%
2.22[0.68-7.20]
Stent thrombosis
0.4%
0.4%
1.23[0.33-4.58]
Repeat revascularization
3.1%
2.4%
1.37[0.83-2.27]

12moを超えてAspirinにClopidogrelを併用してもOutcomeの改善には繋がらない.
出血Riskが上昇するため, 12moを超えての投与は推奨されないという結果.

ARCTIC-Interruption trial: 待機的DES留置予定の2440例を対象
DES留置後1年間DAPTを行い, その後DAPT中断が可能な1259例を, DAPT中止(ASAのみ継続群) vs DAPT継続群(6−18M)に割り付け, フォロー Lancet 2014; 384: 1577–85 

 AMIに対する緊急PCI患者は除外.
 DAPT中断不可能群は割り付け前の1年間で虚血イベントを生じた群, 新たな再還流療法を行い, DAPT延長する必要がある群, ASA耐性, ASAによるGI出血などのASA投与継続が困難な群
母集団
アウトカム

ステント内血栓リスク, 死亡, ACSリスクなどすべて両者で有意差なし.

他にもいくつかのRCTがあり,
Optimal Duration of Dual Antiplatelet Therapy after Drug-Eluting Stent Implantation: A Randomized Controlled Trial. Circulation 2013
DES LATE; 韓国でのopen-label RCT.
 PCI施行した後, DAPTを12ヶ月間以上行い, 出血や心血管系イベントが無く, 安定していた5045名を対象.
 ASA単独投与 vs ASA+Clopidogrel併用群に割り付け, 24ヶ月フォロー. 心血管イベントリスクを比較.
 患者はDrug-eluting stentでPCIを施行後, DAPTを開始され, 重度な出血, 心血管イベント(MI, Stroke, 再狭窄)無く経過した患者群.
 DAPTは12ヶ月以上継続し, 割り付け(12-18ヶ月)

患者群;
 年齢は平均62.4歳, 男性が69.3%. PCIの施行理由は狭心症 39%, 不安定狭心症 37.5%, Non-STEMI 10.6%, STEMI 12.5%
 PCI施行〜割り付けまでの期間は12-18mが81%, 18-24mが12%, 平均13ヶ月程度.

アウトカム;
 心血管イベント, 死亡リスクどれも有意差無し.
 出血リスクも両者で有意差は認めない. また, Sub-analysisでも有意差無し.

DAPTの期間によるアウトカムを評価したMeta-analysis
The Scientific World Journal Volume 2014, Article ID 794078, 
短期投与 vs 長期投与を比較した RR
アウトカム
死亡, MI
MI
再灌流療法
Stent内
血栓
Stroke
3M vs 12M
0.64
[0.25-1.63]
0.50
[0.09-2.72]
1.15
[0.69-1.91]
0.67
[0.11-3.98]
1.00
[0.32-3.09]
6M vs >12M
1.09
[0.84-1.41]
1.18
[0.80-1.73]
1.00
[0.66-1.50]
1.50
[0.77-2.95]
0.66
[0.36-1.20]
12M vs >24M
0.64
[0.35-1.16]
0.71
[0.27-1.85]
0.73
[0.44-1.20]
0.81
[0.22-3.00]
0.45
[0.14-1.45]
全体
0.97
[0.77-1.22]
1.05
[0.74-1.49]
0.95
[0.72-1.24]
1.23
[0.70-2.16]
0.66
[0.41-1.07]
アウトカム
全死亡
心血管
死亡
Major
Bleeding
Total
Bleeding
3M vs 12M
0.62
[0.20-1.90]
0.50
[0.09-2.72]
0.33
[0.07-1.65]
0.50
[0.17-1.46]
6M vs >12M
0.96
[0.70-1.32]
1.00
[0.65-1.55]
0.40
[0.18-0.91]
0.24
[0.12-0.50]
12M vs >24M
0.66
[0.33-1.31]

3.03
[0.32-29.08]

全体
0.87
[0.66-1.16]
0.96
[0.63-1.46]
0.48
[0.25-0.93]
0.50
{0.16-0.54]
母集団別に評価
母集団別
Primary outcome RR
全体
1.01[0.82-1.23]
<65歳
0.97[0.65-1.43]
>65歳
1.03[0.80-1.33]
糖尿病
1.08[0.75-1.56]
糖尿病なし
0.96[0.73-1.25]
ACS/UAP
1.10[0.83-1.45]



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 これらの結果から, AMI以外の待機的なPCI施行例において, DESを使用した場合のDAPTの投与期間は最低12ヶ月で良い可能性がある.
 しかしながらこの結果を覆すRCTが発表: DAPT trial
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DAPT trial: >18yでDESを使用してPCIを施行, その後1年間DAPTを施行された患者群9961例を対象. N Engl J Med 2014;371:2155-66.
 12ヶ月の時点でDAPTをASA単剤に切り替える群 vs DAPTを30ヶ月まで継続する群に割り付け.
 除外項目は, ステント直径 <2.25mm, >4.0mmの症例, 妊婦, DAPTを中止せねばならない待機手術を予定, 余命<3y, 長期間Warfarin投与, 薬剤アレルギー, 同意得られない患者, BMSを併用している患者.
母集団データ:
アウトカムは再狭窄, 心血管系イベントリスクを比較した.
ステント内血栓やMIリスクはDAPT継続群で有意に低い結果.
ステント内血栓NNT 100
MI予防効果NNT 50


死亡リスクはDAPT群で若干高い.(NNH200)
出血リスクはDAPT群で2.6%上昇. NNH 40程度.


DAPT trialとREAL−LATE, ZEST−LATEの母集団を比較
 年齢や性別, PCI施行理由はほぼ同じ(STEMI, non-STEMI 20%程度)
 UAPはREAL−LATE, ZEST−LATEで多い(40%程度 vs 17%程度)
 PCIの部位もほぼ同じ分布を示す.

異なるのが,
 REAL−LATE, ZEST−LATEでは過去のAngioplasty 12%, MIが3.5%,
 一方でDAPTでは過去のPCI 30%, CABG 11.5%, MI 21.5%と
 明らかにDAPT群で冠動脈疾患既往歴が多い.
このリスクの違いがDAPTの期間に関連する可能性はある.
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DESの種類で差があるのかどうか見てみると,
DESの種類別に評価したRetrospective studyでは, 
Coronary Artery Disease 2013, 24:217–223
2141名のACSに対してDESでPCIされた患者群のReview.
 Cypher sirolimus-eluting stent(SES)とEndeavor zotarolimus-eluting stent(ZES)の何れかで治療されている患者群.
SESは第一世代のDESであり, ZESは第二世代のDES.
 DAPTを12mまでで終了している群と, 12m以上継続している群で心血管イベントリスクを評価し, DESの種類別に評価.

母集団;
アウトカム;

全体では投与期間で死亡, イベントリスクは同等.
ステント別では, SESではより長期間のDAPTの方がイベントリスクは低下, ZESでは両者で変わらないという結果.

このSESに関して日本からのProspective studyがでており,
Intern Med 52: 703-711, 2013
日本国内のSES PCI症例のProspective study.
 SESを使用し, PCIを施行された1691名を, DAPT<12m群 749例と>12m施行した942例で, 心血管イベントを比較. (12m以内に心血管イベント再発した症例は除外)
 母集団;
アウトカム;


 SES留置群のProspective cohortではDAPT 12ヶ月未満, 以上の群で死亡やイベントリスクに差はなく, 第一世代, 第二世代DESで差を付ける必要はやはり無いのかもしれない.

….と思っていた所に, JAMAよりOPTIMIZE trialが発表.
Three vs Twelve Months of Dual Antiplatelet Therapy After Zotarolimus-Eluting Stents. The OPTIMIZE Randomized Trial. JAMA 2013
OPTIMIZE trial; ZESにてPCI施行した3119名のopen-label RCT.
 狭心症, 無症候性心筋虚血, 不安定狭心症, Recent MI患者, >50%の狭窄を認める患者群を対象.
 STEMIや, ステント in ステント, Bare-metal使用歴が6ヶ月以内にある場合, DES使用歴(+), 待機的手術ある場合は除外.

DAPT 3ヶ月群 vs 12ヶ月群に割り付け, 心血管イベントを比較

母集団;

アウトカム;
短期投与群と長期投与群で, 1年以内の死亡リスク, 心血管イベントリスクに有意差無し.
 0-90d, 91d-1y別の評価でも有意差は認められない.
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長くなったのでまとめますと,
 DESを使用した待機的なPCIで, 別段再狭窄リスクがものすごく高くない場合(Stent in stent等), 抗血小板薬の2剤投与は12ヶ月程度までで良く, それ以上の投与では出血リスクのみ上昇する可能性がある.
 DESには第一世代であるSESと第二世代と言われるZESがあり,
 SESではやはり12ヶ月のみでは不安かもしれないという危惧があるものの, まぁ、大丈夫であろうという見方もある.
 ZESでは12ヶ月でよいのは確かであり、現在もっと短くても良くない? というStudyがでており, ただしこれ(OPTIMIZE)は1年予後までの発表であり, 今後の長期予後の発表が楽しみ。

 という感じの認識でOK?