いくつかの薬剤により血管炎やLupus, 筋炎を発症することが知られている.
薬剤性の自己免疫性疾患のCase reviewでは, 2009-2010の2年間の検索で56例が報告.
27例(48.2%)が血管炎, 8例(14.3%)がLupus, 13例(23.2%)が筋炎, 2例(3.6%)が強皮症.
薬剤性Lupus 11例の原因薬剤は,
最も多いのがINFで3例. 次いで化学療法(Doxorubicin, cyclophosphamide, fluorouracil)
他はフェニトイン, セフェピム, チクロピジンで報告あり.
薬剤性血管炎 16例の原因薬剤は,
抗TNF阻害薬, Propylthiouracil, levamisole含有コカイン等.
抗TNF阻害薬では, Infliximabが6例, Etenarceptが2例, Golumimab 1例.
抗甲状腺薬はPTU ± Methimazoleでの報告が大半.
他の薬剤として, 化学療法, 抗生剤, スタチン, GRH agonist, インフルエンザワクチンの報告がある.
薬剤性筋炎 13例の原因薬剤
最も多いのは抗TNF阻害薬とスタチン
スタチンは限局性の筋炎が有名だが, 免疫に由来する壊死性筋炎を生じることがある.
薬剤性強皮症 2例の原因薬剤
パクリタキセルと抗TNF阻害薬で報告あり.
それ以外の薬剤性 膠原病
抗てんかん薬によるシェーグレン症候群の報告, Risedronate, efalizumabによるRAの報告がある.
まとめると,
膠原病の原因となり得る薬剤は主に4種類; 抗TNF阻害薬, 化学療法, PTU, INFが特に多い.
抗TNF阻害薬や化学療法はどのタイプも来し得る.
PTUは血管炎が主. 特にANCA関連血管炎の原因となる.
INFはSLEや筋炎の原因となり得る.
(Curr Opin Rheumatol 2012, 24:182 – 186)
Propylthiouracil(PTU)による薬剤性膠原病を色々まとめてみると,
PTUによる11例の膠原病の解析(Rheumatol Int (2012) 32:679–681)
11例中, 7例が血管炎で4例がLupusであった.
血管炎はANCA陽性で, 血管炎所見ある場合に診断し,
LupusはANA陽性で, 1つ以上のSLEの特徴を有し, 血管炎所見(-)で定義
ANCAは全例で陽性.
薬剤開始〜発症までは15m〜134mと様々. 長期間経過後に発症する可能性もある.
血管炎はLupusよりPTU長期内服例で多い(74.7±29.3m vs 32.3±24.9m)
PTUによる血管炎, 薬剤性Lupusの解析(42例のLiterature reviewと4例の経験例の報告)
(Semin Arthritis Rheum. 2006 Aug;36(1):4-9.)
1966-2004年に血管炎 30例, 薬剤性Lupus 12例が報告.
経験例では血管炎が1例, Lupus 3例であった.
経験例の4例は以下の通り
PTU-Lupus 3例全てでp-ANCAは陽性となる. 血管炎でもANCA陽性.
Literature reviewの42例は,
血管炎症例の方がLupusよりもより高齢であり, PTUの内服期間も長い傾向がある.
臨床所見とLabの比較;
Lupusではより筋骨格系症状が多く, 血管炎では腎障害, 肺障害が多い
PTU-lupusではANA陽性が90%, ANCAは血管炎もLupusも同程度陽性. c-ANCAはLupusでの陽性例は無かった.
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経験例4例とReview 42例, (Rheumatol Int (2012) 32:679–681)から4例のPTU-lupus例を考慮すると, PTUによる薬剤性Lupusでは主にp-ANCAとANAが陽性となることが多く, p-ANCAは13/19(68%)で陽性となり, 血管炎ではほぼ全例でANCA陽性となることが分かる.
PTUの場合 内服開始から10年経過後に血管炎, Lupus発症する例もあり, いつ起きても良いが, 基本的に長期内服群では血管炎の方が多い.