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2023年5月17日水曜日

感染性心内膜炎 Duke基準の2023年改訂: 2023 Duke-ISCVID基準

感染性心内膜炎の診断基準であるDuke基準は1994年にオリジナルが発表され,

2000年に現在よく使用される修正Duke基準となった.


さらにそれから画像検査技術の発達; 心臓CTやMRI, PET/CTなど,

 培養検査の発達; PCRなどがあり, 修正Duke基準に追加する形で各ガイドラインが画像基準などを組み込んでいるのが現状.


修正Duke基準から23年. あらたなDuke基準. 来る.


2023 Duke-ISCVID基準 (Clin Infect Dis. 2023 May 4;ciad271. doi: 10.1093/cid/ciad271.)

修正Duke基準からの変更点は太字としました.

Major criteria

Major criteria

内容

A) 微生物学的基準

(1)血液培養陽性
・心内膜炎の原因となる細菌*が別々で採取された2セット以上で陽性となる.
・時折, たまに心内膜炎の原因となる細菌が別々に採取された3セット以上で陽性となる.
(2)血清学的検査陽性
・Coxiella burnetii, Bartonella spp, Tropheryma whippleiのPCRや核酸検査が陽性
・Coxiella burnetiiのphase I IgG >1:800, または1回でも血液培養で分離される
・Bartonella henselaeまたはBartonella quintanaのIgM, IgGが検出され, IgG 
1:800を満たす

B) 画像基準

(1) 心エコー, 心臓CT検査所見
・疣贅の証明, 弁/弁尖の穿孔, 弁/弁尖の瘤形成, 膿瘍, 仮性瘤, 心内瘻孔

・心エコーにおいて, 新規の著明な弁逆流を認める. 以前認めた逆流所見の増悪や変化のみでは不十分とする
・以前の画像と比較して, 新たに人工弁の部分剥離が認められる.

(2) PET/CT所見
・自然弁, 人工弁, 上行大動脈グラフト(弁を含む), 心内デバイス(リードや人工物)の異常な代謝信号を認める

C) 外科基準

心臓手術において, 直接観察された心内膜炎所見を認める.
画像基準やその後の組織所見, 微生物学的基準を満たす必要がない.

* 心内膜炎の起因菌として典型的な細菌: S. lugdunensis, E. Faecalis, 肺炎球菌と溶連菌を除く連鎖球菌, Granulicatella spp, Abiotrophia spp, Gemella spp.

 
人工弁や心内デバイス留置患者では典型的と判断する菌: CNS, Corynebacterium striatum, C. Jeikeium, Serratia marcescens, Pseudomonas aeruginosa, Cutibacterium acnes, NTM, Candida spp.

Minor criteria

Minor criteria

内容

A 背景因子

心内膜炎の既往

・人工弁

・心臓弁手術の既往

・先天性心疾患

・中等度以上の弁逆流症や弁狭窄症

心血管植え込み型電子デバイス

・閉塞性肥大型心筋症

・静注薬物濫用

B 発熱

38度以上の発熱

C 塞栓所見/徴候

臨床的, 画像的に認められる動脈塞栓, 肺の敗血症性塞栓, 脳膿瘍や脾膿瘍, 細菌性動脈瘤, 頭蓋内出血, 眼瞼結膜出血, Janeway lesion, 化膿性紫斑

D 免疫学的徴候

リウマチ因子陽性, Osler結節, Roth斑, 免疫複合体性糸球体腎炎

E 微生物学的証拠
(Major criteriaには及ばない)

・心内膜炎の起因菌となる細菌が血液培養より検出されたが, Major criteriaは満たさない

・心臓組織, 心内デバイス, 塞栓以外の無菌部位より採取された培養より心内膜炎の起因菌となる細菌が検出される. または弁やワイヤーより, 皮膚常在菌のPCRが1回のみ検出され, 他に心内膜炎を示唆する証拠が認められない場合.

F 画像基準

人工弁, 上行大動脈グラフト(弁を含む), 心内デバイス留置後3ヶ月以内で, PET/CTにより異常な代謝信号が認められた.

G 身体所見基準

心エコーが困難な状況で, 聴診により新規に弁逆流が認められた場合
以前に認められた心雑音の増悪や変化のみでは不十分である


判定

判断


Definite

A) 病理学的基準
(1) 臨床的に心内膜炎を疑う状況で, 疣贅や心臓組織, 人工弁や心内デバイス, 上行大動脈グラフト, 動脈塞栓より微生物が検出される.
(2) 心臓組織, 人工弁や上行大動脈グラフト, 心内デバイス, 塞栓より検出された疣贅より, 活動性の心内膜炎を示唆する所見が認められる

B) 臨床基準
(1) 2つ以上のMajor criteriaを満たす
(2) 1 Major + 3 Minor criteria

(3) 5 Minor criteriaを満たす

Possible

A) 1 Major + 1 Minor criteria
B) 3 Minor criteria