関節痛, 炎症反応高値, 皮膚に小結節を伴う有痛性紅斑を認めた患者.
生検では主に好中球浸潤を伴う病変であり, Sweet症候群に矛盾しない.
病変の分布が上肢, 手指が主であるが, 下肢にも同様の皮疹を複数認められた.
下肢に病変を認めるSweet症候群は悪性腫瘍の可能性が高い! とする情報(UpToDate)があるということを教えてもらったが, ピンとこないのでちょっと調べてみる.
その前にSweet症候群は炎症性疾患や感染症, 誘因が不明なClassicalと,
薬剤に関連するもの, 妊娠に関連するもの, そして悪性腫瘍に関連するものがある
悪性腫瘍では血液腫瘍が多く, AMLやMDSで認められるものが有名.
血液悪性腫瘍 | 感染症 | 全身疾患 |
非血液悪性腫瘍 | 薬剤 | 妊娠 |
下肢の病変は腫瘍性が多いとする情報は以下の論文から引用;
(Orphanet Journal of Rare Diseases 2007, 2:34)
この大元の論文は以下; (Clinics in Dermatology 1993;11:149-157)
では, 最近の症例Cohortではどうなのだろうか?
Seoul National Univ. HospとBoramae Medical Centerにおいて, 2000-2020年に診断されたSweet症候群を後ろ向きに評価した報告.
(Annals of Hematology (2022) 101:1499–1508 )
・この期間中に確定診断された症例 52例中,
27例が悪性腫瘍を背景としていた(51.8%)
21例が血液悪性腫瘍, 7例が固形腫瘍
腫瘍の多くがAMLとMDS.
・男女差はなし. 診断時年齢は悪性腫瘍群で62歳(17-78)
非悪性腫瘍群では46歳[28-84]
高齢者ほど悪性腫瘍のリスクは上昇する: OR 1.04[1.00-1.08]
・他に悪性腫瘍との関連があるのはNoduleの形成程度.
・これをみると, 下肢病変の頻度は悪性腫瘍と非悪性腫瘍で変わらない.
それぞれ3割程度で下肢病変を認めている.
Pennsylvania大学附属病院において, 2005-2015年に診断されたSweet症候群 83例を後ろ向きに解析.
(J Am Acad Dermatol. 2018 Feb;78(2):303-309.e4.)
・古典的Sweet症候群は30%, 腫瘍性が44%, 薬剤性が24%
橋本病が7例, 上気道炎が6例,
悪性腫瘍ではAMLが24例と最多. 次いでMDSが10例
・腫瘍関連/非関連性で比較すると, 関節痛は非腫瘍性で48%と多い.
血球減少は腫瘍性で多くなる.
下肢病変は66% vs 78%と差はない
Sweet症候群90例の解析では,
(Int J Dermatol. 2016 Sep;55(9):1033-9.)
・特発性が62例, 感染症関連が14例,
IBDが4例, 妊娠関連が3例
薬剤性が1例, 悪性腫瘍が6例.
・上記母集団において, 下肢病変の頻度は74.4%で認められる
上肢は83.3%, 顔面が27.7%, 頸部16.6%, 体幹13.3%
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最近の報告からは, 下肢病変を認めるSweet → 悪性腫瘍関連, とも言い難い.
Classicalでも下肢病変は同程度認められる