臨床におけるGreat mimickerの1つである結核.
しばしば非典型的な経過で我々を陥れにきます.
以前京都GIMカンファレンスにて, 結核によるリンパ節腫大では, 内部が壊死するので造影CTではLow見えるんですよね〜、 と速攻で診断している名読影医がおりました.
今回もそんな症例がおりましたので, その辺の論文を漁ってみます.
結核のリンパ節; CT所見
縦隔リンパ節腫大を伴う結核 49例 (活動性37例, 非活動性12例)のCT所見を比較した報告.
(AJR Am J Roentgenol. 1998 Mar;170(3):715-8.)
活動性 | 非活動性 | P値 | |
サイズ(平均) | 1.5-6.7cm(2.8) | 1.0-4.7cm(2.1) | <0.04 |
造影パターン | |||
造影不良域+ | 100% | 0% | <0.0001 |
均一 | 43% | 100% | <0.004 |
結節内石灰化 | 19% | 83% | <0.0001 |
・活動性の結核では, リンパ節内の造影不良域がある.
非活動性では均一であり, 石灰化も多い.
・造影不良域はリンパ節内の壊死を示唆する所見である
A: LN内に複数の造影不良域が認められる
B: TB治療後9ヶ月のCT. 上記LN腫大が消失
結核性腹膜炎のCT所見のMeta-analysisより
(Clin Radiol. 2020 May;75(5):396.e7-396.e14.)
・腸管膜の>5mmの結節と並び,
壊死を伴うLNは感度21%, 特異度95%と 特異性が高い所見といえる.
・石灰化も特異性が高いが, 感度は12%のみと低い.
結核によるリンパ節腫大では内部壊死により抜けるように見えるが,
同様に菊池病(KD)でも壊死性リンパ節炎を呈するため, 同じような所見となる.
両者の違いはどのようなところか?
CTにて結節内の壊死所見を伴うKD 24例と結核性リンパ節炎 45例の比較
(AJNR Am J Neuroradiol. 2012 Jan;33(1):135-40.)
・リンパ節のサイズは双方平均2-2.5cm程度と同等
CT所見の比較
・壊死範囲は結核の方が広範囲 (<30%, 30-70%, >70%で分類)
・複数部位の壊死所見はKDで多い
・壊死の部位は辺縁が双方とも多い
・壊死の境界が明瞭なのは結核ぽい
・石灰化を認めるのも結核ぽい
・CTN >44.5HU, CTN/M >0.7は KDを示唆する所見.
CTNは壊死部のCT値をエリアで評価 3箇所で評価し, 平均をとる.
CTN/MはCTNと付近の筋のCT値の比
・CTN ≥44.5HUは 感度89.5%, 特異度86%
・CTN/M ≥0.7は 感度94.7%, 特異度76.7% でKDを示唆する.
最終的にKD or 結核性リンパ節炎と診断された87例を 2名の読影医が評価(27例がKD, 60例がTB)
(Jpn J Radiol. 2014 Nov;32(11):637-43.)
・KDを示唆する所見;
・1/2を超えるリンパ節の壊死所見はKDよりもTBを示唆する所見となる (KD OR 0.25)
悪性リンパ腫との比較ではどのような違いがあるか?
腹腔内LN腫大を認める結核26例と悪性リンパ腫 43例の画像所見の比較
(AJR Am J Roentgenol. 1999 Mar;172(3):619-23.)
・造影パターンの比較;
均一な造影はリンパ腫を示唆する.
周囲が造影されるようなパターンや混在は結核を示唆
腸管膜TB 18例とNHL 22例のCT造影パターンを評価
(World J Gastroenterol. 2008 Jun 28;14(24):3914-8.)
・NHLの大半が均一に造影されるパターンとなるが
TBでは均一もあるものの, 混在や辺縁のみのパターンが多い.
縦隔リンパ節のCT所見をTB 37例と悪性リンパ腫 54例で比較
(Clin Radiol. 2012 Sep;67(9):877-83.)
・造影パターンはTBでは辺縁の造影が78%であるが
NHLやHDでは83%が均一な造影となる.
・混在パターンはそれぞれ1割強で認められ, 差はない.
・多房性に造影されるパターンはTBに特異的な所見
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まとめると,
・活動性結核によるリンパ節腫大は内部に壊死を認め, 造影不良域が混在するリンパ節所見となる.
非活動性では均一に造影され, 石灰化所見も多く認められる.
・同様に内部に造影不良域を認める壊死性リンパ節炎を呈する疾患に菊池病があるが, 双方の違いは壊死の範囲(結核の方が広い), 壊死部の境界が明瞭, 石灰化, 壊死部のCT値(KDの方が高くなる)といった所見が挙げられる.
・悪性リンパ腫との鑑別では, リンパ腫は基本的に均一に造影される点でことなる. 一部で混在パターンとなるが, 多房性に造影される場合は結核に特異的な所見と言える.