中年女性.
両側性, びまん性の多発肺嚢胞が認められ, その一部に結節性病変があり肺癌の疑いで手術治療が行われた.
膿疱は壁は薄く, 円形. 辺縁は明瞭. 散在性に多発していた.
1箇所で結節を伴い, その部位を切除. 組織からMALTomaに矛盾しない所見が得られたが, 他にもアミロイド沈着もあり...
と複雑で病態が難しい状態であった.
膠原病の可能性も視野に入れる必要があり, 相談.
さて, これは即答でSjogren症候群による肺アミロイドーシス (によるLymphocytic Interstitial Pneumonia)と言いたいところです.
肺は全身性アミロイドーシスで沈着しやすい臓器の1つ.
主に肺門リンパ節の石灰化や小結節, 気管支壁肥厚, 小葉間隔壁肥厚を呈することが多い.
(Radiographics. 2015 Sep-Oct;35(5):1381-92.)
しかし稀ながら, 嚢胞性病変を呈することがある.
アミロイドーシスによる肺の嚢胞性病変
(Chest. 2016 May;149(5):1223-33. doi: 10.1378/chest.15-1539.)
・組織的に証明された, 嚢胞性病変を呈した肺アミロイドーシス 21例の Reviewでは,
背景に膠原病(CVD)を認めた症例が12例. このうち10例がSjogren症候群であった.
・MALTomaを合併した症例も多く, CVD+MALTomaは6例(6/12)
CVD(-)症例では1例のみ.
・pSS症例では5/10でMALToma を合併.
他の1例はRA. またpSS症例の大半がAL-κによるもの.
嚢胞の形状
・多発性の円形の嚢胞が多く, 大きさは2cm以内のものが大半.
・嚢胞壁は薄く, 散在している
pSSに伴う肺アミロイドーシス症例28例の特徴
(Respirology (2010) 15, 860–868)
・結節, 嚢胞性病変が45.5%, びまん性結節が33.4%と 一般的なアミロイドーシスよりも嚢胞性病変となる例が多い
・リンパ腫合併例が9%
Mayo clinicにおいて1997-2010年に組織的に診断されたpSS患者における肺アミロイドーシス 8例を解析
(Respiratory Medicine (2013) 107, 616-621)
・年齢中央値は55歳[32-75]. 喫煙歴(+)の症例は無し.
・画像所見は8例全例が嚢胞性病変+結節であった.
3/8でMALTomaを診断. 1例でリンパ過形成所見を認めた.
これらはLymphocytic Interstitial Pneumoniaに分類される
(Radiol Bras. 2020 Set/Out;53(5):287–292.)
・LIP症例 36例の画像所見をReviewした報告 より,
背景疾患はSjogren症候群 42%, HIV 17%, アミロイドーシス 17%,
pSS+二次性アミロイドーシス 11%, 特発性 8%, SLE 5%
・CT所見: 嚢胞性病変, 小結節が多い所見.