潰瘍性大腸炎の患者でPR3-ANCAが陽性であった.
この意義は?
潰瘍性大腸炎におけるPR3-ANCAの陽性率
久留米大学病院で2015-2016年に診療したUC 102例, CD 67例, non-IBDの腸疾患 44例, 健常人 66例を対象にMPO-ANCA, PR3-ANCAを評価した報告.
(J Gastroenterol Hepatol. 2018 Sep; 33(9):1603-1607)
・UCの39.2%でPR3-ANCA陽性,
CDでは6.0%のみ.
・MPO-ANCAの陽性率はUCの12.8%と陽性はあるがPR3ほどではない.
・PR3-ANCAのTiter: 2桁台〜100前半程度の上昇がありえる.
2011年までに紹介されたIBD患者142例を対象.
(Clinic Rev Allerg Immunol (2013) 45:109–116)
・初診時の冷凍保存されている検体を用いてPR3-ANCAを評価
・患者群は13.9±8.0年フォローされている
・疾患毎のPR3-ANCA陽性率は
CD(74例): 2.7%, Titer 3.8[3.0-4.7]
UC(48例): 29.2%, Titer 29.7[15.2-44.2]
IC(20例): 15%, Titer 12.6[0.4-24.8]
・PR3-ANCA陽性の炎症性腸疾患の大半がUC・各マーカーとUC, CDの鑑別能 : PR3-ANCAはよりUCを示唆する情報となる
GPA, IBDを始め, 様々な疾患におけるPR3-ANCA陽性率を評価
(Clinica Chimica Acta 424 (2013) 267–273)
・GPAにおける陽性率が60-75%
UCでは31%, CDでは1.9%程度.
福岡大学病院からの報告. UC 173例(診断1ヶ月以内が77例), CD 110例, 他の腸疾患 48例, 健常人 71例においてPR3-ANCAを評価
(Gut Liver 2022;16:92-100)
・陽性率はUCで44.5%, CDで7.3%, 他腸疾患で2.1%, 健常人で1.4%
・Titerは2桁〜100前半が多い
・新規発症UC群では45/77で陽性(58%)であり, さらに頻度は高い
UCにおけるPR3-ANCA陽性, 陰性群の比較
・PR3-ANCA陽性例では重症例, 活動性が高い症例が多い.
新規発症例におけるPR3-ANCAの意義
・陰性例では軽症〜中等症のみ. 陽性例では重症例〜中等症例が大半を占める
・Titerと活動性には相関性が認められる.
・また, 治療によりTiterは低下する
潰瘍性大腸炎におけるPR3-ANCAと治療反応性
・PR3-ANCA陽性のUCではTNF-α阻害薬や緩解導入療法の不応リスクとなる報告もある.
国内の単一施設におおいて, 寛解導入にTNF-α阻害薬を使用する50例の解析
(Inflamm Intest Dis 2021;6:117–122)
・このうち15例でPR3-ANCA陽性,
PR3-ANCA陽性はPrimary nonresponseのOR 19.29[3.30-172.67]と リスクを上昇させる
活動性のUC患者159例後向き解析
(BMC Gastroenterol (2021) 21:325)
・このうち85例(53.5%)でPR3-ANCA陽性.
・ PR3-ANCA陽性例の方が有意に活動性が高い(MES)
MES中央値: 3[2-3] vs 2[1-3]
PR3-ANCAと寛解導入療法への反応性.
・5-ASAへの反応は同等であるが, ステロイドへの反応性不良例の7割がPR3-ANCAが陽性例
・PR3-ANCA陽性UCはステロイドに対する反応不良のリスクとなる (OR 5.19[1.54-17.50])
-----------------------まとめると
・UCにおいて3-4割でPR3-ANCAが陽性. 新規発症例ではさらに頻度は上昇する傾向.
CDでは頻度は低く, 両者の鑑別に利用できる可能性がある.
・PR3-ANCA陽性のUCは活動性が高い傾向がある.
治療によりTiterは低下する.
・PR3-ANCA陽性のUCでは, ステロイドやTNF-α阻害薬へ反応性が悪い可能性がある.