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2021年4月30日金曜日

抗CCP抗体が陽性となる疾患

抗CCP抗体(ACPA)は関節リウマチで陽性となる抗体として有名.

Assayには第三世代まであり, 

 第一世代のACPA 1 assayは感度が低く, すでに用いられていない.

 第二世代のACPA 2 assayは感度/特異度ともに改良されている

 第三世代のACPA 3も感度/特異度は良好. さらに, ≥40, 今後のRA発症を予測する因子にもなり得る.

 ACPA 2,3 assayIgGのみを評価するが, ACPA 3.1IgG, IgA双方を評価する.

参考(Arthritis Rheum. 2009 Nov 15;61(11):1472-83.)


このACPAは他の疾患でも陽性となるため, 注意が必要.

(Arthritis Rheum. 2009 Nov 15;61(11):1472-83.)のReviewでは,

・PsAやSLE, pSSといった他の自己免疫性疾患

・結核やHBVといった感染症 でも陽性となる.

 特に結核は要注意


Cedars-Sinai Medical Center(CSMC)において,


2016年-2017年に診療したACPA陽性例(抗CCP抗体3.1 assay) 281例の診断を後ろ向きに評価.

(Medicine 2021;100:16(e25558).)

・診断は最低6ヶ月以上フォローした上での診断.

・ACPA陽性例は, ≥20, <40のLow positive, ≥40のHigh positiveで分けて評価


ACPA陽性例のうち, 
RAは48%.


・他の自己免疫性疾患が19.9%,
 非自己免疫性疾患が26.4%

・Low positiveでは, 
それぞれ 24.8%, 31.4%, 40.0%.

 
RAは1/4のみ

・High positiveでは,
それぞれ 61.9%, 13.1%, 6.8%


ACPA陽性例で診断した疾患

・自己免疫性疾患では, SLE, pSS, PMR, UCTD, PsAなどなど.

・非自己免疫性疾患では, OA, 肺疾患(ILD, COP, HP, 喘息, 肺結節など), 悪性腫瘍(大腸癌, 乳癌, 肺癌, 甲状腺乳頭癌, DLBCL, VIPomaなど)

・他には繊維筋痛症, Gout, などなど


他にはブルセラ症でも陽性となる報告がある(Mod Rheumatol, 2014; 24(1): 182–187)

・62例の末梢関節炎を呈したブルセラ症患者と,
33例のRA患者, 42例の健常Control群で, 抗CCP抗体を測定

・陽性率は, ブルセラ症で13/62(20%), RA患者で26(78.8%),
健常人では1例のみ陽性であった.

・ブルセラ症で抗CCP抗体陽性で
あった13例のフォローでは
全例で陰性化.


2021年4月29日木曜日

免疫不全患者の肺炎像と原因

 (European Radiology (2019) 29:6089–6099)

国内からの後ろ向き解析.


免疫不全患者の肺炎 345例のHR-CTを評価し, 
肺炎の原因とCT像の関連を評価した報告.

・患者は免疫不全があり, HR-CTを評価され, 肺実質に陰影を認める患者で, 単一病原体によるものと判断された群を対象.

・ILDや放射線肺臓炎, 肺癌, 重度の肺気腫, 気管支喘息, GVHDなど, 肺や気管支に元々異常がある症例は除外

・免疫不全は血液腫瘍, 免疫抑制療法, 化学療法, AIDSが含まれる


最終診断では, 肺炎は細菌性 123例, PCP 105例, 真菌感染 80例, TB 15例, CMV 11例, Septic embolism 11例であった

原因と患者背景

原因とHR-CT画像所見


各画像所見の病原体予測における感度/特異度


・細菌性肺炎は気管支壁の肥厚を伴うConsolidation

・PCPはGGOのモザイクパターンが主で, Consolidationや気管支壁肥厚や結節が認められない. 胸水は少ない

・真菌感染症は結節を認め, GGOやモザイクパターンは少ない

・CMV肺炎はCrazy-pavingパターンやHaloともなう結節が認められる

2021年4月26日月曜日

木村病: Eosinophilic Granuloma of the Soft Tissue

木村病: Eosinophilic Granuloma of the Soft Tissue

・原因不明の慢性炎症性疾患で, 


 無痛性の頭頸部領域に多い皮下腫瘤とリンパ節腫脹


 末梢血Eo, IgE上昇,


 組織にてリンパ濾胞の過形成, 著明な好酸球浸潤を反応性の胚中心を認める病態.

・アジアの若年男性で多く報告されている.


215文献から238例の木村病をReview

・発症年齢は3-81歳. 平均年齢は男性で31歳, 女性で41歳

 
≥60歳発症は17例のみ. 最高81歳.

・男性が多く, 全体では4:1


 <20歳では17:1, 


 20-39歳では4:1

 
≥40歳では2:1

・地域ではアジアが最も多く,
 東アジア 115例, 南アジア 38例, 東南アジア 22例, 
 西アジア 16例
 他の地域は12例のみ.

・症状は無症候が75%. 掻痒感が最も多い症状.
 

 腎症を伴う例が1-2割あり, 血管炎も数%で認められる.

(QJM. 2020 May 1;113(5):336-345.)

中国のPeking Union Medical College Hospitalにおいて, 1980-2018年に診断されたKD症例46例の解析
(Clinical Rheumatology (2019) 38:3661–3667)
・男性が87%
・発症年齢は中央値27歳. 2-56歳. <50歳が8割強.
・腫瘤径は4.1cm[範囲1.0-12.0cm]
・疼痛や発赤, 熱感を伴う症例はなく,
 45.7%で掻痒感が認められた.
・色素沈着が13.0%, 粗像な皮膚変化が1例
 び慢性の掻痒感を伴う皮疹が3例
 腎疾患は3例で認められ, 全てネフローゼ症候群
 また動脈閉塞が3例(下肢, 側頭動脈)

・血液データ


木村病と血管炎, 動脈閉塞
(Mod Rheumatol Case Rep. 2021 Jan;5(1):123-129.)
・48例のケースレビューにおいて, 6例で側頭動脈炎所見が認められた.
 側頭動脈の病理では内膜に好酸球浸潤を認め, 若年性側頭動脈炎と同様の病理となる.
 >> 若年性側頭動脈炎の一部は木村病と合併, Overlapし得る.

補足: 若年性側頭動脈炎. Juvenile TA
(Semin Arthritis Rheum 39:96-107)
・Non-giant cell granulomatous TA with Eosinophilia 
・小児, 若年成人に起こる非常にRareな疾患. 平均年齢23歳[7-39]
・15例の報告例のうち, 男性例が13例と多い.
・無痛性の側頭動脈腫瘤が9例. 有痛性が6例.
・ESRは正常範囲. 好酸球増多を伴うものが4例.
・生検では血管内, 周囲の好酸球, リンパ球浸潤, 血栓閉塞など.
 巨細胞は通常陰性となる.
・側頭動脈切除のみで改善する例が殆ど. ステロイドは必要としない.

診断クライテリア

1. 小児, 成人に起こる
2. 全身症状(-) (発熱, 筋痛, 視覚障害, 貧血)
3. 無痛性の側頭動脈腫瘤
4. ESR正常
5. 好酸球性血管炎, 血栓
6. 血管中膜の破壊
7. 好中球, 巨細胞浸潤(-)

木村病と腎症
木村病では腎症, ネフローゼ症候群の合併率が高い.

 好酸球増多, 皮下腫瘤, ネフローゼの鑑別では木村病は重要
・腎生検を行なった木村病23例のLiterature reviewでは,

 MPGNが13例, 
 膜性腎症が4例,
 MCDが3例,
 FSGNが3例,

 IgA腎症が2例, 
 ATNが1例. (BMC Nephrology (2018) 19:316)
・生検では, 上記糸球体腎炎の所見に加えて
間質への好酸球浸潤が認められる報告もある
(Ren Fail. 2019 Nov;41(1):126-130.)

木村病治療
・外科的切除やステロイドが多く選択される
・ネフローゼを伴う場合は免疫抑制療法の併用も行われる.
・再発率は2-3割

2021年4月22日木曜日

急性膵炎における高TG血症の意義は?

 今日のクリニカルクエスチョン.

急性膵炎で入院した患者さんのTGが数千と高値.

高TG血症は急性膵炎の原因となるが, 一部の膵炎でもTGが高値となる.

この辺りのデータってあるのだろうか?


ちなみに、高TG血症による膵炎はすでに森川先生がまとめてくれています.

https://jyoutoubyouinsougounaika.hatenablog.com/entry/2021/04/22/121206?fbclid=IwAR27YWtpChau5uFiYyfpv3IuCIF33Bq-y5MVBDBUlB6zpiUM8WETCrRSDzg


急性膵炎 716例を対象とした前向きCohort

(Pancreatology 20 (2020) 608-616)

・急性膵炎発症初日のTG値を評価し, 
高TG血症の頻度, 他の原因との兼ね合いを評価

・TGを5群に分類:

 
1: 正常 < 150mg/dL

 
2: 150-195mg/dL 


 3: 195-500mg/dL


 4: 500-1000mg/dL

 
5: 1000-2000mg/dL


 6: >2000mg/dL

・上の表: TG値別に見た時の急性膵炎の原因

 Group 5,6 (TG >1000mg/dL)となる場合, その原因は胆石性, アルコール性, 高TG性に分けられる.

 1000-2000mg/dLではアルコールと高TG性が半々程度.

 >2000mg/dLとなると高TG性が多くなる.

・下の表: 原因別のTGの分布

 高TG血症が原因の膵炎では,
TG>2000mg/dLが8割弱

 胆石, アルコール以外の原因ではTGはせいぜい <1000mg/dL程度の上昇まで.


高TG血症を伴う膵炎の特徴

・高TG血症を伴う膵炎では, 糖尿病有病率が高い

・高TG血症伴う膵炎と, 各血液データ

 TGが高いほど, 膵酵素上昇が低く
Na値も低値となる.

 測定系への影響が考えられる(検査酵素を阻害する可能性が示唆検体の希釈にてAMY上昇を認める場合がある)

TGが高いほどCRPは高く, 高血糖も多い. さらに, 合併症や膵壊死のリスクも高い





重症筋無力症のステロイド投与レジメの比較

 (JAMA Neurol. 2021;78(4):426-433. doi:10.1001/jamaneurol.2020.5407)

MYACOR: フランスにおけるSingle-blind RCT
中等度〜重度の全身性MG患者を対象とし,
緩徐ステロイド調節群 vs 早期調節群に割り付け, 比較

・対象患者: 18-80歳で, アセチルコリン受容体, または筋特異的Tyrosine kinase protein抗体を認める患者. 血清陰性例では, Edrophonium試験が陽性で, Repetitive nerve stimulation試験が異常の患者群.

・除外項目: ステロイド or AZAを使用中, 2ヶ月以内のステロイド使用歴(後に1ヶ月に変更), 1年以内のAZA使用歴, ステロイド/AZA禁忌, 他の理由でステロイド/AZAが必要, 体重≥100kg, 妊婦

治療内容

・両群ともAZA ~3mg/kg/dを併用

緩徐群; 10mg/隔日で開始し, 2日毎に10mgずつ,  PSLを1.5mg/kg隔日投与(最大100mg)を目標に増量し, 維持. 

 病状が安定した時点から2wk毎に10mgずつ, 40mg/隔日まで減量し, 以後は1ヶ月毎に5mgずつ減量.

早期群; 0.75mg/kg/dで開始, 

 
①1ヶ月の時点で病状安定(MMS達成)した場合, その後0.45mg/kgまで10日毎に0.1mg/kg減量, 0.25mg/kgまで10日毎に0.05mg/kg減量, 以後は1mgずつ患者に応じて減量(126-140日かけてOff)


 ②1ヶ月でMMS達成できなかったが, 改善がある場合(MGFA postintervention statusでImproved), 20日毎に上記の通り減量.


 ③MMS達成できず, ②も満たさない場合, 初期量を3ヶ月継続. その後, 20日毎に上記と同様に減量し, 0.25mg/kg以降は減量しない. 状態が改善すれば減量を検討.

MMS: 症状はあるが, 日常生活に支障無し.


MGFA postintervention statusのimproved: QMGスコアが3点異常改善したもの

QMGスコア(Neurology 2000;55;16-23)

両群の母集団

・両群のPSL投与量
総投与量は,
10562±3573(緩徐) vs 8724±3955mg(早期)

アウトカム


・Primary outcome; 12ヶ月時点でのPSL投与無しでのMMS達成と, 12-15ヶ月における再燃, PSL使用無しの達成
 

 達成率は緩徐群で9%, 早期群で39%で, 有意に早期群で良好. 
ステロイド総投与量も少ない.

・12ヶ月におけるPSL投与量は緩徐群で8[2-15]mg, 早期群で0[0-3]


 15ヶ月では, 2[0-10] vs 0[0-4]

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MGにおけるステロイドは0.75mg/kg/d程度で開始し, 1年くらいを目処に早期に減量を行うレジメがよさそうである.

2021年4月19日月曜日

特発性のしもやけ: Idiopathic pernio/Chilblains

四肢末端の色調の変化, 主に紫色〜赤色に変化する場合, もっとも致命的で緊急の病態である末端の虚血/阻血を疑い精査を進める.

個人的なやり方としては, (Am J Clin Dermatol 2010; 11 (2): 103-116)の論文に即したアプローチをとることが多い;

・最初に外傷, 循環不全をチェック. 蛇咬傷...経験はない

・次に寒冷により誘発/増悪するタイプかどうかを判断

・寒冷関連ならば

 増悪後, 正常にもどる: Raynaud現象の一部, Reflex sympathetic dystrophy

 増悪後, チアノーゼが残る: Acrocyanosis

 寒冷に関連した障害がある: Pernio/Chilblainの鑑別にはいる.

寒冷関連の鑑別疾患


・寒冷に関係しないものは, 以下の鑑別へ続く;



寒冷非関連性の鑑別疾患

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Pernio, Chilblain: しもやけ の背景

Mayo Clinicから提唱されたのPernio/Chilblainの基準は,
Major criteria: 四肢末端を含む局所の発赤や腫脹が24hを超えて生じる
Minor criteria(1つ以上を満たす)
・寒い季節に生じる/増悪する(11月〜3月頃)
・病理組織でPernioに矛盾せず(真皮の浮腫と表層, 深部の血管周囲のリンパ球浸潤), SLEの所見を認めない.
・保存的治療にて改善する(保温, 乾燥)
(Mayo Clin Proc. 2014;89(2):207-215)

この提唱の元になったデータ:
Mayo clinicにおける, 2000-2011年に診療された
Pernio/Chilblain患者 104例のReiview
(Mayo Clin Proc. 2014;89(2):207-215)
・女性が8割. 年齢は38.3歳
7割が足のPernio
11月〜3月の診断が81%

検査異常と背景疾患

・背景疾患は感染症, 血液疾患, 悪性腫瘍, M蛋白血症
RA, SS, CTD, 高IgGなどが認められた
・Lupus pernioは5例.

多くが治療への反応性を認める

このデータから, Pernio/Chilblainにおける評価/対応の推奨
・難治性ではLupus pernioや皮膚サルコイドーシスを疑うと, (Am J Clin Dermatol 2010; 11 (2): 103-116)のReviewに記載がある.

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Pernio/Chilblainの診療において, 背景疾患が判明すればそれに応じた対応が選択できるが, しばしばなにも判明しないものも遭遇する
最近はCOVID-19に関連したPernioも報告が増えている

明らかな原因がないものはIdiopathic Pernio/Chilblainと呼ばれる
どのような特徴があるのか?

Idiopathic Pernio/Chilblain
(Vasa (2020), 49 (2), 133–140)
・明らかな原因が認められないChilblains, Pernio.
・40代までの女性で多く, 小児例は稀
四肢, 顔面(耳, 鼻など)の発赤〜紫色の色調変化と疼痛.

 一部は潰瘍や水疱を形成するものもある. 寒冷で増悪.
11月〜4月の発症が多い.

・症状は多くは1-3wkで改善するが, 中には長期持続するもの, 冬季〜春季に再発を繰り返すものも報告されている
・低体重や喫煙はリスク因子となる

・家族歴(+)はRR 3.6との報告もある

病態生理は未だ不明確なところが多い
・寒冷に対して, 異常な反応を示している状態
・寒冷に対して血管を拡張させる反射は, 通常末梢の虚血を予防するために重要な反射であるが, Chilblainsの患者では寒冷に対して血管は収縮し続け, 末梢の炎症を惹起する.
・低体重患者や低栄養患者で生じることからは, 身体の体温調節機能の低下がこの病態に関わっている可能性も示唆される


組織所見
・Pernioに対する皮膚生検はルーチンには不要.
 
他原因が不明な場合, 保温で改善しないような非特異的な場合に検討すべき

・真皮の浮腫と乳頭層や網状層のリンパ球を主とした炎症細胞浸潤を認める
・エクリン腺周囲の浸潤が特徴的な所見(Lupus pernioでは認めない所見)
・上皮には壊死したケラチノサイトが含まれる海綿状変化を認める
・皮膚血管の微小血栓閉塞も認められることがあるが, 非特異的

参考: Lupus-pernioで認められる所見
・免疫複合体, 補体の沈着はLupus-pernioで認められる
・皮膚間質のフィブリン析出はLupus-pernioの方が多い所見
(Idiopathicでも認めうる)
・CD3+ T細胞, CD68+マクロファージの浸潤を認め, 
CD20+ B細胞が少ない所見は双方で認められる.
CD123+細胞の分布も双方で同様に認められる.

Idiopathic pernioのNail-fold capillaryは?
(Mod Rheumatol (2013) 23:897–903)
・53例のIdiopathic pernio(女性18, 年齢25±9歳)と,
38例の年齢, 性別を合わせた健常人で, Nail-fold capillaryを評価
・患者群ではCapillary径は広く, ねじれも60%と多い
・患者群内の評価では, 初回/再発, 喫煙の有無, 
活動性/非活動性で
所見に差はない

Idiopathic Chilblainの症例Review.
(The American Journal of Medicine (2009) 122, 1152-1155)
・113例の文献報告例のReviewでは, 女性例が77例, 男性例が36例

 全例が冬季〜春季の初め(11月〜4月)に受診. 気温 12-15度以下

・手が41/113, 足が90/113だが, 下肢のみを対象とした報告もあるため, 優位性は不明

 他の部位としては, 少ないが耳や鼻, 膝など
・症例報告のなかには, BMIの低値や痩せ(IBWの18-22%低い)が関係しているとする報告も多く, 体重増加と局所の保温により改善を認めた例も報告されている.

Chilblains/Pernioの対応
・対応の中心は寒冷暴露の回避と保温

・禁煙指導も大事

・痩せている患者では栄養摂取の指導も.
・薬剤治療ではCCB: Nifedipine 20-60mg/dが多く使用され
効果も報告されている

2021年4月16日金曜日

COVID-19 既感染者の再感染のリスクは?

 (Lancet 2021; 397: 1459–69)

SARS-CoV-2 Immunity and Reinfection Evaluation study
(SIREN)

・英国の公的病院に勤務する医療従事者を対象とした前向きCohort


 12ヶ月以上フォロー可能と判断された群を対象.


 この対象者では, 2-4wk毎にSARS-CoV-2 PCR検査と, 2wk毎に症状や暴露を調査された.

・2020年内にEnrollできなかった群, PCRや抗体検査結果が不十分な群, 参加後PCRを施行されなかった群は除外.

・対象群を導入時点で

 抗体保有群(抗体陽性, PCR陽性の既往あり)と


 非保有群(抗体陰性, PCRや抗体陽性の既往なし)に分類し,


 その後のフォローにおいて, SARS-CoV-2感染リスクを比較した.
(診断はPCR陽性で定義)


母集団

・30625例が対象. 

 51例が脱落
除外されたのが4913例


 導入時に抗体陽性は8278例
陰性例は17383例.


アウトカム

・抗体保有者における再感染は155例. 7.6/100000pt-y

・抗体非保有者における感染は1704例. 57.3/100000pt-y

 IRR 0.159[0.13-0.19]

・初感染〜再感染までの期間は3ヶ月〜. 中央値8-9ヶ月



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・既感染、抗体保有は再感染リスクを有意に減少させる

 IRR 0.159であり, およそ84%低下させる. 

 ワクチンのStudyにおける結果と類似しているように思える

CVやAラインの『点滴セット』の交換頻度は?

 CVPAカテーテルの管理の1つに定期的なInfusion setの交換が含まれる.

・Infusion setはカテーテルチューブ, 三方活栓, 点滴バッグ, トランスデューサーなどといった, 点滴の付属物すべて.

多くのガイドラインでは4日毎の交換

 CDCでは96h7日での交換を推奨している.

ただし, 交換には手間とその分費用もかかり交換行為自体に汚染のリスクがある.

適切な交換期間を評価した報告はまだ少なく2013年のCochraneによると, 適切な交換時期を評価した報告はまだなく, 2つの小規模RCTからは, 4日間を超えて使用しても問題はないという報告がある程度.(Cochrane Database Syst Rev 2013; 9: CD003588.)

RSVP: オーストラリアにおける他施設研究. 
 24h以上の末梢動脈(PA)カテーテル, または中心静脈(CV)カテーテル(PICCやポート留置など含む)を留置している患者で, 7日以上継続することが予測された群を対象としたOpen-label(accecer masked) RCT.

(Lancet 2021; 397: 1447–58)

・除外項目は48h以内の血流感染, 既に96h以上点滴している, ルーチンにオリジナルな患者のInfusion setを使用している例.

・補液内容はCrystalloids, 薬剤, 非脂肪性の栄養, 圧測定のための内腔を満たす液(NS, ヘパリン生食)とし,

 脂肪性栄養剤, 強心薬, 化学療法, Cyclosporin, 血液製剤の場合は, メーカーからの推奨された交換期間(主には24h以内)があるため, 除外.

・対象患者群を,
7日毎に点滴セットを交換する群 vs 4日毎に交換する群に割り付け
CRBSIリスクを比較

母集団

・CVが2221例
PAが643例

アウトカム 

CRBSI頻度


・CVADでは7日交換群で1.78%, 4日交換群で1.46%で有意差なし

・PACでは0.28%(1例) vs 0で有意差なし


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・CVやAラインの点滴セットの交換は7日毎でも感染症リスクにはならない結果.

2021年4月15日木曜日

GLP-1作動薬による体重減少効果

 糖尿病で使用されるGLP-1作動薬、特に週1回皮下注射投与のSemaglutideの非糖尿病の病的肥満患者に対するダイエット効果が示されている.


STEP1: 糖尿病(-)の肥満患者を対象としたDB-RCT
(N Engl J Med 2021; 384:989-1002)


・BMI≥30または1つ以上の肥満関連疾患(高血圧, 脂質代謝異常, OSAS, 心血管疾患)を有する場合はBMI≥27, 且つ糖尿病ではない患者群 1961例を対象
通常の生活指導に加えて週1回のSemaglutide 2.4mg皮下注群 vs Placebo群に割り付け, 68wk継続. 体重変化を比較した
Semaglutide0.25mgより開始し, 4wk毎にDose up. 16wk後に目標量の2.4mgまで増量する

アウトカム

68wkで15%近く体重が減少
Placeboでは2%程度



 STEP 3: BMI≥30または1つ以上の肥満関連疾患(高血圧脂質代謝異常, OSAS, 心血管疾患)を有する場合はBMI≥27, 且つ糖尿病ではない患者群 611例を対象
(JAMA. 2021;325(14):1403-1413. doi:10.1001/jama.2021.1831)


・8wkのカロリー制限とIntensive behavioral therapyに加えてSemaglutide 2.4mg SC/wk vs Placebo群に割り付け, 68wk継続
 終了後7wkoff-treatment期間を設けて副作用を評価
・Semaglutide0.25mgより開始し, 4wk毎にDose up. 16wkに目標2.4mg/wkまで増量する. 2.4mgが耐えられない場合は1.7mgで継続
・カロリー制限は最初の8wk1000-1200kcal, 以後は1200-1800kcal

・アウトカムは体重減少の程度達成率を比較.


アウトカム
・体重減少(%)Semaglutide-16% vs Control -5.7%
 5%以上の体重減を達成した率は86.6% vs 47.6%有意にSemaglutideで体重は低下する
・10%以上低下したのが75.3%, 15%55.8%
・Cholも有意に低下


STEP4:
肥満患者に対して, 20wkSemaglutide 2.4mg/wkの皮下注射を行った後に, 継続群 vs 終了群に割り付け, 比較.
(JAMA. 2021;325(14):1414-1425. doi:10.1001/jama.2021.3224)
・患者はBMI ≥30(1つ以上の肥満関連病態がある場合はBMI≥27)で糖尿病(-)群を対象.
両群とも生活指導は行なっている
20wk継続(16wkは増量期間, 4wkは維持期間), 89%(803)2.4mg/wkまで増量された.
・この患者群を, さらに48wkまで継続 vs Placebo切り替え群に割り付け, 体重変化をフォローした

体重の変化

・使用している間は体重は減少し, 中止群では徐々に体重は戻ってしまう.
 ただし速度は緩徐
・継続群では60wkくらいで体重減少はプラトーとなる

副作用頻度
STEP1
・重大な副作用は 9.8% vs 6.4%
 薬剤中止が必要なのは7.0% vs 3.1%
・消化管症状はSemaglutideで多い

STEP3


治療中断が必要となる副作用が5.9%
消化管副作用が多い. 他に多いのは頭痛, ふらつき
・重大な副作用は肝胆道系障害 2.5%
筋骨格系,CTD1.2%で報告

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・Semaglutideの皮下注射は病的肥満患者における体重コントロール有用.

・効果は50-60wkでプラトーとなるが, 15%前後の体重減少が見込める

 (生活指導, カロリー制限込みで)

・中止により再度体重は増えるが, その速度は緩徐.

・使うならば1年間使用し, その後休薬という形がよいか.

・副作用は消化管副作用が多い. 肝胆道系酵素上昇も重大な副作用に含まれる