難治性の口腔内潰瘍, CRP高値, 発熱, 体重減少・・・
半年ほど〜頬粘膜, 咽頭にアフタ, 潰瘍性病変が出現.
またCRPも徐々に上昇し, 体重減少も認められた. 他の症状はない.
口腔内病変の生検では好中球・リンパ球の浸潤のみで特異的な所見なし.
自己抗体も有意なものは認めず.
一時的なPSL使用により病変は改善, CPRも低下するが, 終了後に再増悪する経過.
腹部CTで回腸末端に壁肥厚, 周囲脂肪組織の軽度混濁あり, 回腸末端炎もあり.
血液検査では, 極軽度の正球性貧血.
またこの半年の経過でWBC 10000万越え〜今回2-3万まで上昇.
分画には初期は特記すべき所見はなかったが, 最近 単球が10-20%まで上昇あり. 数値でいうと1000~2000/µLまで増加している. 末梢血のBlastや幼若骨髄球の出現はない.
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これは, MDS・CMMLに伴うBDの可能性が高そうだ, ということでお勉強です.
MDSでは自己免疫疾患が合併することがある.
MDSには自己免疫性疾患が合併することがある
特にTrisomy 8とベーチェット病(BD)の関連は一部界隈にとってはよく知られている.
MDS+BD症例22例のLiterature review
(J Clin Rheumatol 2008;14: 169–174)
・18例は日本からの報告
・BDは不全型が大半を占める
MDS+BD症例とMDSのみの症例の比較
・BD合併例では+8が多い.
・MDSのタイプは様々. CMMLも報告あり
BD+MDS症例とBD症例の比較
・BD+MDSでは眼病変, 皮膚病変の頻度が少ない
日本国内よりMDS-associated BD 54例を解析した報告
(Clin Exp Rheumatol 2005; 24 (Suppl. 42): S115-S119.)
・発症年齢とMDS-BD発症の期間
・BDが先行する例が多い
BD発症年齢と症状
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ここで一つ疑問. MDS以外の悪性腫瘍とBDの関係はどうだろうか?
悪性腫瘍関連BDと診断された112例のLiterature reviewより
(Clin Exp Rheumatol 2005; 23 (Suppl. 38): S35-S41.)
・固形腫瘍が54例. 51例がBDが先行し, BD~腫瘍診断まで9.5年間[2M-43年].
固形腫瘍の原発は,
膀胱癌(7), 乳癌(5), 甲状腺(4), 胃(4),
子宮(3), 肝臓(3), 肺(3), 大腸(3),
膵臓(2), 卵巣(2), 基底細胞癌(2), カポジ肉腫(2), 腎(2), 悪性組織球腫(2), 褐色細胞腫(2)など
・血液腫瘍が60例. 39例がBDが先行し, BD~腫瘍診断まで6.1年[3M-41年]
白血病(24), MDS(18), リンパ腫(13),
多発性骨髄腫(2), ホジキン病(2), Lymphosarcoma(1)
悪性腫瘍に関連したBD 中国人症例41例の解析
(Int J Rheum Dis. 2014 May;17(4):459-65. )
・651例のBD症例のうち, 41例で悪性腫瘍を診断.
・41例の原発とLiterature reviewによる167例の原発巣
・この報告でも血液腫瘍が多く, MDS, 白血病, リンパ腫が三大原因
BD+悪性腫瘍例とBD症例の比較(左)
固形腫瘍例と血液腫瘍例の比較(右)
・BD+悪性腫瘍例では消化管病変が多く, 女性が多い
・血液腫瘍関連では腫瘍診断時にActiveなBDであることが多い
BD診断〜悪性腫瘍診断までも血液腫瘍で短い.
2019年11月に発表されたMedicineより, BDと悪性腫瘍の関連性を評価したSystematic review
(Medicine 2019;98:44(e17735))
・特に関連性が強いのは血液腫瘍: RR 2.58[1.61-3.55]. リンパ腫や白血病はさらに高リスク
甲状腺腫瘍: RR 1.25[1.04-1.47]
・ただしStudy間でのHeterogeneityが認められる
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Trisomy 8陽性のMDSで腸管病変が合併した報告は京都GIMカンファでも2回ほど出ています.
今症例でも半年前に病変が出現してから, 徐々にWBC上昇なども増悪経口にあり, 血液腫瘍とActiveなBD(不全型BD)に関連性があるとする最後の論文にも合致.
BDや謎な口腔内病変の鑑別に血液疾患を加えるのは大事かもしれません.