昔からバセドウ病と破壊性甲状腺中毒症の鑑別にTotal T3/T4比 >20ということが言われているが, 最近はFree T3, T4を用いることがほとんどであり, この知識はあまり使用されない.
FT3/FT4比でバセドウ病と甲状腺炎の鑑別は可能なのか?
隈病院より48例のバセドウ病と34例の無痛性甲状腺炎症例, 伊藤病院より126例のバセドウ病, 92例の無痛性甲状腺炎症例より, FT3/FT4比を評価した国内からの報告
・疾患群のFT3/FT4比の分布.
カットオフと感度, 特異度. 単位はpg/mL, ng/dL
・FT3/FT4比のカットオフはおよそ3前後.
それよりも高値の場合はバセドウ病の可能性が高い.
基礎のFT4値別に評価した解析では,
・FT4値が高いほど, FT3/FT4比の差は顕著となる
海外の報告もいくつあるが, 海外ではpmol/Lが単位として使用されているため, 解釈に注意が必要.
・補足: FT3 1 pmol/L = 0.651 pg/mL, FT4 1 pmol/L = 0.0777 ng/dL
FT3/FT4(pmol/L / pmol/L) = 8.34 (pg/mL / ng/dL)
バセドウ病 23例, 破壊性甲状腺中毒症 32例の解析では
FT3/FT4比はそれぞれ0.395, 0.287
(Journal of Clinical and Diagnostic Research. 2017 Jul, Vol-11(7): OC12-OC14)
・pg/mL, ng/dLで換算すると, バセドウ病では3.3, 破壊性甲状腺中毒症では2.4
カットオフ ≥2.54で, 感度87%, 特異度62.5%
バセドウ病126例, 無痛性甲状腺炎36例, 亜急性甲状腺炎18例, 健常人63例でFT3/FT4比を評価
カットオフと感度, 特異度
国内で使用されている単位は上部に記載
・FT3/FT4 >3.40で感度87.3%, 特異度91.4%
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これらの報告から, バセドウ病の可能性を上げるFT3/FT4のカットオフは3前後. 2.5~3.4位と把握しておくと良い.