一般人口の4-6%で認められるとされる
・夜更かしや, 夜間の仕事といった社会的な要因
・ナルコレプシー, 周期性過眠症
参考: ナルコレプシー, 反復性過眠症
・うつ病や精神疾患
・薬剤性: 抗てんかん薬, 抗精神病薬, 抗ヒスタミンなど
・中枢神経疾患: アルツハイマー, パーキンソン病など変性疾患や, 脳卒中, 脳腫瘍, 頭部外傷後の過眠症.
・感染症: Whipple病, HIV, African trypanosomiasis, 他ウイルス感染症
・内分泌: 甲状腺機能低下症, 副腎不全, GH欠乏症
・特発性
(Dialogues Clin Neurosci. 2005;7:347-356.)
といった原因がある.
代表的な過眠の疾患はナルコレプシーと特発性過眠症.
日常診療で多いのはOSASや薬剤. 生活習慣.
変わった疾患で知っておくと良いのが反復性過眠症.
今回は特発性過眠症について: Idiopathic hypersomnia(IH)
特発性過眠症は日中の強い眠気と合計睡眠時間の増加を認め, 明らかな原因を認めない慢性疾患.
・IH患者では, 過度な眠気やIHの家族歴が34-38%で陽性となり, 遺伝的な影響も認められる.
・診断基準は,
慢性経過の日中の耐えられない眠気
カタプレキシー(-),
入眠時の早期REM睡眠移行がない(3回以上)
入眠後15分以内のREM睡眠で定義
MSL <8分(睡眠潜時反復検査) or 24hで11h以上の睡眠(24h PSG)
他の原因が除外される.
(Sleep Med Clin. 2017 Sep;12(3):331-344.)
IH患者では半数程度で夜間や日中の睡眠後に眠気が持続し, 起床ができない, 酔ったような症状が出現し(Sleep drunkeness), 健常人や精神疾患患者で認められる寝起きが悪い(sleep inertia)のと区別される.
・治療薬(主にモダフィニル)の使用に際して, Sleep drunckenessは障害となるため, 予定起床時間の1時間前に薬剤を内服させる(家族やスタッフのサポートの元)ことで対応かのうなことがある
・寝前のメラトニンを試す医師もいる
効果は不明であるが, 副作用は少ないため, 試しても良い.
IH患者では認知機能低下も認められる
記憶力の低下が79%, 集中力の低下が55%
・心が空っぽになるような感覚が58%, 日常の活動で間違える, ミスるのが61%で報告されている
診断にはMSLT, PSGを行う.
(Rev Neurol (Paris). 2017 Jan - Feb;173(1-2):32-37.)
・MSL*<8分は診断基準に含まれるが, IHでは≥8分のこともあり, その場合24hPSGにおける睡眠時間≥11hでも有意と考える.
*MSLT: multiple sleep latency testは日中にPSGを複数回(1回あたり2時間, 4-5回)行う. 開始〜入眠までの時間(睡眠潜時: sleep latency)を測定し, 平均値を求める. 20分以上眠らない場合は終了. 10分未満が日中の傾眠, 8分未満は病的. 検査前1週間は夜間しっかり寝ているかどうか、睡眠日記をつけてもらう.
・他の過眠や日中の眠気を呈する疾患の除外も重要
ナルコレプシーで高頻度で認められる4大症状のIHにおける頻度
IHにおける重症度スコア
(Neurology. 2019 Apr 9;92(15):e1754-e1762.)
質問
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点数
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1) 自分の理想の睡眠時間(休日や週末)は何時間ですか?
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3: 11時間以上 2: 9-11時間
1: 7-9時間 0: 7時間未満 |
2) 仕事や学校で朝決まった時間に起きる際, 睡眠が不十分と感じる頻度はどのくらいですか?
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3: 常に 2: しばしば
1: たまに 0: ない |
3) アラームや誰かに起こされずに自分で朝起床することが難しい, 不可能だと思う頻度
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3: 常に 2: しばしば
1: たまに 0: ない |
4) 朝起床した後, 身体や頭がしっかりと機能するまでの時間はどの程度ですか?
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4: 2時間以上 3: 1-2時間 2: 30分-1時間
1: 30分未満 0: 起床後すぐ |
5) 起床後すぐ, 変なことを言う/行う, 不注意なことをすることがありますか(寝ぼける, 物を落とす, 壊す)
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3: 常に 2: しばしば
1: たまに 0: ない |
6) 日中, 状況がゆるせば, どの程度眠りに落ちますか
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4: 週6-7回 3: 週4-5回 2: 週2-3回
1: 週1回程度 0: なし |
7) あなたにとって, 理想の昼寝時間はどの程度ですか
(1日に複数回寝る場合は合計) |
3: 2時間以上 2: 1-2時間
1: 1時間未満 0: 居眠りしない |
8) 居眠り後はどのような感じですか
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3: とても眠い 2: 眠い
1: 起きられる 0: しっかりしている |
9) 日中, つまらない仕事, 業務をしている時, どの程度眠気とたたかっていますか
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4: 1日に2回以上 3: 週4-7回 2: 週2-3回
1: 週1回以下 0: なし |
10) あなたの過度な眠気が自分の健康に悪影響を及ぼしていると思いますか(モチベーションの低下, 倦怠感など)
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4: 著明に影響 3: とても影響 2: 中等度の影響
1: 軽度の影響 0: 影響なし |
11) あなたの過度な眠気が自分の知的機能に悪影響を及ぼしていると思いますか(集中力, 記憶力, 知能)
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4: 著明に影響 3: とても影響 2: 中等度の影響
1: 軽度の影響 0: 影響なし |
質問
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点数
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12) あなたの過度な眠気が自分の気分に悪影響を及ぼしていると思いますか(悲しさ, 不安, 過敏, イライラなど)
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4: 著明に影響 3: とても影響 2: 中等度の影響
1: 軽度の影響 0: 影響なし |
13) あなたの過度な眠気が日常業務を行えなくしていますか(学校や仕事, 家事)
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4: 著明に影響 3: とても影響 2: 中等度の影響
1: 軽度の影響 0: 影響なし |
14) あなたの過度な眠気が車の運転に影響を及ぼしていますか
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4: 著明に影響 3: とても影響 2: 中等度の影響
1: 軽度の影響 0: 影響なし |
また, 日中の眠気の評価にはEpworth sleepness scale(ESS)がよく用いられる
主にOSASで使用されるが, 過眠症全体の評価で用いられる.
IHの治療, 対応
・非薬物治療で最も試されるのはカフェイン摂取やニコチン摂取だが効果は限定的
・薬物治療で最も使用されるのがモダフィニル.
2つの小規模RCTがあり, それぞれ400mg, 200mgを1日2回投与により有意な日中の眠気の改善, 運転中の眠気の改善が得られる. 朝と昼に1日2回内服
・他の薬剤も試されているが, Cohort程度
IH患者33例を対象とし, モダフィニル100mg bid(朝昼)投与群 vs Placebo群に割り付け, 3wk継続し, 各指標を比較したRCT.
・小規模ではあるが, ESSの改善が認められる.
(J Sleep Res. 2015 Feb;24(1):74-81.)
薬物治療のCohortまとめ
(Sleep Med Clin. 2017 Sep;12(3):331-344.)
IHは自然寛解も見込める
報告では1年以上のフォローにより~3割程度の自然寛解が見込める
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過眠症,
臓器不定科としては知っておいた方が良い病態と思います.
ちょうど診療する機会があったので, 知識をUpDate