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2019年10月17日木曜日

胃捻転の画像所見

大型の傍食道裂孔ヘルニアが指摘されている高齢者の急性腹痛, 黒色嘔吐.
腹部CTで著明な胃拡張を認めた.

この情報から「胃捻転」を検討した.


胃捻転 Gastric volvulus

胃捻転は稀であるが, 致命的な病態となるため, 急性腹症では頭の片隅においておくべき疾患.
・大型犬での報告が多い. 犬の場合, 食後の運動や早食いでリスクとなる. 致命的疾患の1つ
・急性と慢性があり, 急性胃捻転は虚血を呈し致命的となる病態. 5-28%で壊死を伴う(AJR 2019; 212:1–6 )
・胃捻転は臓器の長軸を中心とした捻転(oranoaxial)と横軸を中心とした捻転(mesenteroaxial)がある.
C: 長軸(oranoaxial)の捻転
 D: 横軸(mesenteroaxial)の捻転
(Pediatrics. 2008 Sep;122(3):e752-62. doi: 10.1542/peds.2007-3111.)

胃捻転にはPrimarySecondaryがあり,
・Secondaryでは傍食道裂孔ヘルニアに関連するものが最多または横隔膜欠損や腹腔内癒着も原因となる
Primaryでは胃を支持する4つの靭帯の不全, 欠損がある

急性胃捻転で入院した36例の解析では平均年齢は71. 外科手術既往歴(+)5例のみ
(Surg Endosc. 2016 May;30(5):1847-52. )
・全例が嘔吐, 胸部/心窩部痛で発症
・全てがSecondary, 傍食道裂孔ヘルニアが34/36
 他は腹部外傷後, 左肺葉切除後, 先天性Morgagniヘルニア
28例で外科手術が行われ4例で胃の壊死が認められた
CT検査は最も診断に寄与する検査であり, 感度100%
 上部内視鏡検査の感度は84%

胃捻転のCT所見
(AJR 2019; 212:1–6 )
・外科的に証明された胃捻転30例の画像所見とControl31(巨大な傍食道裂孔ヘルニアがあり, 腹痛以外の理由で画像検査された患者群)の画像所見を2名の放射線科医が評価
・胃捻転のCT所見は以下:
 Organoaxial: 胃は水平方向に位置し, 大湾が小湾の上にくる
 Mesenteroaxial: 胃は垂直方向に位置し, 幽門が胃食道接合部よりも上部にくる
 Mixed: 上記の組み合わせとなる


A: 胸腔内に水平方向に胃があり, 大湾が小湾の上部に位置
B: ヘルニア部で狭窄を生じている 


幽門が胃食道接合部よりも上部に位置している

2人の読影医によるCT所見の評価
 胃捻転に対する感度80%, 特異度100%

胃捻転のマネージメントアルゴリズム
(Surg Endosc. 2016 May;30(5):1847-52.)