大型の傍食道裂孔ヘルニアが指摘されている高齢者の急性腹痛, 黒色嘔吐.
腹部CTで著明な胃拡張を認めた.
この情報から「胃捻転」を検討した.
胃捻転 Gastric volvulus
胃捻転は稀であるが, 致命的な病態となるため, 急性腹症では頭の片隅においておくべき疾患.
・大型犬での報告が多い. 犬の場合, 食後の運動や早食いでリスクとなる. 致命的疾患の1つ
・急性と慢性があり, 急性胃捻転は虚血を呈し致命的となる病態. 5-28%で壊死を伴う(AJR 2019; 212:1–6 )
・胃捻転は臓器の長軸を中心とした捻転(oranoaxial)と, 横軸を中心とした捻転(mesenteroaxial)がある.
・C: 長軸(oranoaxial)の捻転
D: 横軸(mesenteroaxial)の捻転
(Pediatrics. 2008 Sep;122(3):e752-62. doi: 10.1542/peds.2007-3111.)
胃捻転にはPrimaryとSecondaryがあり,
・Secondaryでは傍食道裂孔ヘルニアに関連するものが最多. または横隔膜欠損や腹腔内癒着も原因となる
・Primaryでは胃を支持する4つの靭帯の不全, 欠損がある
急性胃捻転で入院した36例の解析では, 平均年齢は71歳. 外科手術既往歴(+)は5例のみ
(Surg Endosc. 2016 May;30(5):1847-52. )
・全例が嘔吐, 胸部/心窩部痛で発症
・全てがSecondaryで, 傍食道裂孔ヘルニアが34/36
他は腹部外傷後, 左肺葉切除後, 先天性Morgagniヘルニア
・28例で外科手術が行われ, 4例で胃の壊死が認められた
・CT検査は最も診断に寄与する検査であり, 感度100%
上部内視鏡検査の感度は84%
胃捻転のCT所見
(AJR 2019; 212:1–6 )
・外科的に証明された胃捻転30例の画像所見と, Control群31例(巨大な傍食道裂孔ヘルニアがあり, 腹痛以外の理由で画像検査された患者群)の画像所見を2名の放射線科医が評価
・胃捻転のCT所見は以下:
Organoaxial: 胃は水平方向に位置し, 大湾が小湾の上にくる
Mesenteroaxial: 胃は垂直方向に位置し, 幽門が胃食道接合部よりも上部にくる
Mixed: 上記の組み合わせとなる
A: 胸腔内に水平方向に胃があり, 大湾が小湾の上部に位置
B: ヘルニア部で狭窄を生じている
幽門が胃食道接合部よりも上部に位置している
2人の読影医によるCT所見の評価
胃捻転に対する感度80%, 特異度100%
胃捻転のマネージメントアルゴリズム
(Surg Endosc. 2016 May;30(5):1847-52.)