β遮断薬の使用については病状を増悪させる懸念がある.
基本的に, 心臓選択性β遮断薬は, 喘息やCOPD増悪には関与しないと言われている
(Cochrane Database Syst Rev. 2005 Oct 19;(4):CD003566.)
非選択性β-blocker使用においては, (CHEST 2005; 127:818–824)
・Propranolol(インデラル®) ⇒ FEV1, PC20低下, 気管過敏性UP
β吸入薬への反応性の低下を認めた
・Metoprolol(ロプレソール®)⇒ 気管過敏性UP
・Celiprolol(セレクトール®) ⇒ Placeboと同様(心臓選択性) が指摘されている.
Observational Cohortでは, 心疾患の既往がある場合は, β遮断薬による予後改善効果が認められているが, 心疾患がない場合は特に利点も欠点もない, と言う報告が多い.
平均年齢64.8yr(11.2)のCOPD患者2230名のObservational cohort
(Arch Intern Med 2010;170:880-7)
・7.2yr(2.8)フォローにて, 686名(30.8%)が死亡,
1055名(47.3%)が1回以上の急性増悪を来した.
・β-blockerを使用していたのは665名(29.8%)
β-blockerはCOPDの予後を増悪させるよりはむしろ改善させる.(Adjusted with propensity score)
Outcome | Any β blocker | Cardioselective | Nonselective |
死亡Risk HR | 0.64[0.52-0.77] | 0.63[0.51-0.77] | 0.80[0.60-1.05] |
急性増悪 HR | 0.64[0.55-0.75] | 0.68[0.58-0.80] | 0.70[0.56-0.89] |
β-blockerによる死亡, 急性増悪Risk軽減効果は認めない.
→ 心疾患が合併していれば, 躊躇無くβ-blockerは使用すべきと言える.
英国のCohort study. COPD患者でAMIを発症した1063名.
(BMJ 2013;347:f6650)
・β阻害薬を投与しなかったのが55.1%, AMI後に開始した群が21.9%, AMI以前より開始していたのが23.0%
・COPD+MIにおけるβ遮断薬投与による予後改善効果(死亡HR)
・β阻害薬の追加, 併用は有意に予後を改善させ得る
2017年時点でのReviewでは, 以下のように記載されている
「2017年時点でCOPDや喘息に合併した心不全, 心筋虚血患者へのβ阻害薬の使用については明確なRCTはない.
β阻害薬の使用により予後が改善したという報告もあれば, 入院リスクが増大した報告もある. これらはすべてCohortによるもの.
β1選択性阻害薬も厳密にβ1のみを阻害するわけでもない.
適応に注意すべきではあるが, 投与を控えるべきとも言い難い.
今後さらに選択性の高いβ1阻害薬や, Ivabridineのようなβと関係のない陰性変時作用がある薬剤が使用可能となればそれも選択肢となる.」
(Thorax 2017;72:271–276. )
ここで, 最近発表された, β遮断薬の適応となる心疾患がない, COPD患者を対象としたMetoprololのRCT.
(N Engl J Med. 2019 Oct 20. doi: 10.1056/NEJMoa1908142. [Epub ahead of print]
Metoprolol for the Prevention of Acute Exacerbations of COPD.)
BLOCK COPD: 40-85歳のCOPDと診断された患者群で, 急性増悪リスクが高い*と考えられる患者を対象としたDB-RCT.
・*以下の1つ以上を満たす:
呼吸器系の問題に対して, 1年以内の全身性ステロイド, 抗菌薬使用歴がある
1年以内にCOPD急性増悪でERを受診, または入院
在宅で酸素投与を必要とした症例
・さらに, 安静時HR 65-120bpm, sBP>100mmHgを満たす患者を対象とした
・除外項目は, β阻害薬を必要とする理由がある患者(MI, HF, PCI後)
・Metoprololは50mg/dで開始し, 25~100mg/dで調節
・COPD急性増悪リスクを比較した.
Studyは532例導入時点で途中で中断.
・Primary outcomeに有意差がでない点と
介入群で安全性の懸念が生じたため
アウトカム
・COPD急性増悪頻度は有意差なし
・ただし, 重症以上の増悪リスクは有意にMetprolol群で上昇.
心血管イベントは両群で有意差なし.
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COPD症例に対するβ遮断薬は, 急性増悪の重症度を上昇させてしまう可能性がある.
虚血性心疾患や心不全に対する作用と, 上記不利益を天秤にかけて考慮せねばならない.
当然その利益がないであろう, 心疾患(-)群では使用すべきではない.
心疾患(+)では, まだ明確な結論はない. 今後どの患者で投与すべきか, しないべきかという線引きを行う解析が増えるだろう.
COPDで毎回挿管ギリギリまでいってしまう患者では避けたい と個人的には思ふ