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2019年8月21日水曜日

感染症と無汗症

正直結論はわかりませんが。。。

30歳台男性, 真夏の熱疲労, 倦怠感あり.
本人曰く, 最近汗が全然でないと. 水分摂取はできている.
さらに, 四肢のピリピリした痛み, 発赤も生じる. 暑い時や風呂上がりなどに.
節々の痛みもある.

自分は無汗症なんだとおもう. 検査してほしいとの希望.

無汗症, 低汗症については
 こちら①
 こちら② を参照

・・・たしかに, 話を聞くとコリン性蕁麻疹+無汗症で矛盾しない.
ただし, 急性経過?

診察では四肢に淡い紅斑も認めている.
微熱もしばらく持続していたとの病歴.


希望も強く, 全身発汗試験を予定したが, 都合により2週間後となった.



そして, 検査を行う前に なんと, 発汗するようになったので大丈夫です. とのオチ.

ついでに, 初診時にチェックした検査で, パルボウイルスB19 IgMが陽性であった.

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正直結局なんだったのかはわかりませんが,
ウイルス感染症やマイコプラズマ感染症で自律神経障害を合併する例はある.
これもその一つなのだろうか?

論文を調べてみると, ほとんどと言って良いほど報告はない.

EBVによる伝染性単核症患者におけるIPSFを合併した報告
(Clin Exp Dermatol. 2013 Mar;38(2):156-9.)
・IPSF: Idiopathic pure sudomotor failure. AIGAのサブグループで, 若年発症, 急性経過のコリン性蕁麻疹や刺すような痛みを伴う無汗症. 他の自律神経障害は伴わない. IgE上昇を認め, ステロイドへの反応は良好.
・22歳の台湾人男性, 熱不耐, チクチクした疼痛や手掌の膨疹, 四肢体幹の皮疹を伴う低汗症で受診.
3wk前に, 2wk持続する発熱, リンパ節腫大を認めEBV Capsid antigen IgM, IgG陽性, EBNA陽性からIMと診断
・発汗試験では顔面, 頸部, 腋窩, 前胸部の一部, 手掌で発汗は保たれていたが, 他の部位では消失.
・組織検査では無汗部ではエクリン腺周囲, 血管周囲にリンパ球, 好酸球浸潤が認められていた
・他の神経学的所見は問題なし.
・IPSFと診断され2wkの抗ヒスタミン治療を行なったが反応なし
 その後mPSL 500mg3日間仕様したところ熱不耐やコリン性蕁麻疹は改善.
・1ヶ月後に発汗試験を再検すると, 発汗機能も改善あり
 その後も症状は安定した.


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報告例で見つけられたのはこれのみ
今症例では発汗試験ができていないので, 正直定かではないが, ウイルス感染症に伴う発汗機能の障害というのは実はあるのだろうと思う.

個人的印象ではあるが, 
・あまりそれを主訴に受診する人がいない可能性.
・倦怠感を感染後の慢性疲労症候群としていている可能性.
・冬とかだとそもそも気づいていない可能性
・ギランバレー様の症候群の1つとしてもあるのかもしれない.
 (以前感染後の起立性低血圧から発症, その後下肢脱力を呈したGBSがおりました)

補足までに, 感染症による自律神経障害のレビューより:
(Clin Auton Res. 2018 Feb;28(1):67-81.)

また, ジカウイルスでも自律神経障害の報告がある
(Clin Auton Res. 2018 Apr;28(2):211-214.)