皮疹は点状の丘疹が主だが, 色々. 非特異的な印象
伝染性単核症様症候群として対症療法を開始した.
初診時, フォローの診察にて舌の発赤(ややイチゴ舌), 軟口蓋の粘膜疹, 眼瞼結膜充血もあり.
Neuは80%でLy優位でもなかった. 異形Lyも無し
結果的にEBV, CMV陰性. マイコやパルボも陰性.
旅行例や山野への侵入といったダニリスクもない. 動物接触歴もなし
しばらくフォローすると, Day 5-6頃に手指, 足末端の落屑が生じ始めた.
ASO, ASK陰性.
・・・・・・・あれ? これってまさか川崎病じゃ?(小児科ローテ以来だよ...)
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(J Am Coll Cardiol 2016;67:1738–49)
川崎病は原因不明の急性, Self-limitedの血管炎で乳児, 小児で多い.
・80%は5歳未満の小児例.
日本における頻度は高く, この年代での有病率は10万人あたり265例
(米国では19例. アジア/Pacific Islanderが多いハワイでは210例, カルフォルニアでは50.4例と人種差が大きい)
高熱, 皮膚粘膜炎症, 頸部リンパ節腫脹, 冠動脈・他の動脈炎
・血管炎は発症後1週間程度より中型血管の内腔側, 外膜側より生じ, 10日頃には全層性の炎症へ波及する
・壊死性動脈炎, 亜急性/慢性血管炎, luminal myofibroblastic proliferation(LMP)の所見が認められる
(Heart. 2017 Nov;103(22):1760-1769. )
・IVIGで治療しない場合, 小児例の1/5は冠動脈瘤を生じる
川崎病の既往は若年発症のACSリスク因子となる
・米国において, 40歳未満で生じたMIの5%で川崎病の既往がある.
・日本にける若年例のMI, 突然死の9.1%で川崎病の既往がある
・また, 冠動脈造影検査にて川崎病による冠動脈異常が認められるが, 川崎病の既往がない患者もおり, 無症候性の川崎病の存在も示唆されている
(Heart. 2017 Nov;103(22):1760-1769. )
初期に冠動脈瘤を認めた川崎病患者の長期予後
(Heart. 2017 Nov;103(22):1760-1769. )
川崎病の診断・症状
(AFP 2006;74:1141-8)
有用な検査は無く, 臨床所見にて診断
Clinical Criteria ; 5日以上の発熱 + 4項目以上
・結膜充血
・頚部リンパ節腫脹
・口腔内粘膜変化
・多型性の皮疹
・四肢の腫脹, 発赤
・上記3項目 + 冠動脈病変でも診断可
・発熱は5日以内でも疑わしければ診断可能
・5日間の発熱 + Criteria 2項目を満たす患児はさらに川崎病の臨床所見を評価する ⇒ Atypical KDの可能性症状
・発熱は平均11日間持続. 一部で数週間持続する例もある
・結膜所見は両側性で非化膿性. 疼痛や光過敏は認めない
・四肢の浮腫は手首, 足首で境界明瞭となる.
爪周囲より始まる表皮剥離は発症後2-3週で生じる
・口腔所見は発赤, 唇のひび割れ, イチゴ舌. びまん性の所見となる
・皮疹は発症5日以内で多く, 体幹〜鼠径優位となる. 点状丘疹, 紅斑, 多形性紅斑様
鑑別疾患
・ウイルス感染症(麻疹, アデノ, エンテロ, EBVなど)
・Scarlet fever
・Staphylococcal scaleded skin syndrome
・TSS
・薬剤過敏症候群
・SJS
・若年性関節リウマチ
・リケッチア、レプトスピラ
成人発症の川崎病
(Autoimmunity Reviews 15 (2016) 242–249 )
成人例 43例の報告(平均年齢30±11, 18-68歳)
・男女比は1:2で女性に多い.
・発症~診断まで13日間, 範囲8-21日
・症状頻度
・粘膜皮膚障害は四肢の変化が91%と多い
またびまん性の皮疹を生じる
・眼所見は結膜炎が81%
・他に関節・筋症状や消化管症状, 神経症状も認められる.
IVIGは79%で施行. 発症~開始までは11日[9-18]
・ASAは86%で投与された
・早期治療群(<9日)と, 晩期治療or治療無しの群の比較ではLarge Vessel Vasculitisの頻度は両群で変わらない.
・画像検査における冠動脈瘤は, 初期では19%, 6ヶ月後には14%, 最終フォロー時には9%と減少. >>持続性の冠動脈瘤は9%程度
川崎病の治療
(J Am Coll Cardiol 2016;67:1738–49)
急性期治療
・急性期治療の目標は全身性, 組織における炎症をいち早く抑制すること.
・発症10日未満の患者で, 未だ炎症が高い場合, 発熱がある場合, 冠動脈拡張がある場合はIVIGを使用する
・IVIG後36h経過して再発した発熱で, 他に原因が考えにくい場合, 他の抗炎症治療を検討する(Influximabやステロイドなど). この場合A, B型血液ではIVIGによる溶血反応が生じやすい可能性がある
・冠動脈拡張(zスコア>2.0)を認める患者では週2回の心エコーで, 所見が安定するまでフォローする. この場合も積極的な抗炎症治療を行うべき.
・所見が安定後も巨大冠動脈瘤がある場合は, 最初の3ヶ月間は頻回にエコーをフォローする. 動脈瘤と血栓形成評価を目的とする
・巨大冠動脈瘤(zスコア≥10)は最も血栓形成リスクが高く, 動脈瘤が改善するまで抗凝固療法+抗血小板療法を検討すべき
IVIGは2g/kg, アスピリンは80-100mg/kg/d(小児例)で使用
・高用量ASAは解熱後48-72h, または発症後14日間まで継続
その後は低用量 3-5mg/kg/d(小児例)で継続する
IVIGとPSL併用で冠動脈病変リスクが低下する報告もある
RAISE study; 日本国内の多施設Open-label, RCT.
(Lancet 2012; 379: 1613–20)
・川崎病248名を, IVIG 2g/kg 24hr + ASA 30mg/kg/d 解熱まで, その後ASA 3-5mg/kg/dを最低28日間投与群
vs IVIG + PSL 2mg/kg/d, CRP陰性化すれば5日毎に減量. 15日で中止(Max 60mg/d, 2mg/kg/d → 1mg/kg/d → 0.5mg/kg/d → off)
・冠動脈評価はBaseline, 1wk, 2wk, 4wkで心エコーを施行.
アウトカム: 冠動脈異常頻度は有意にPSL群で低い
・RD 0.20[0.12-0.28], NNT 10(4wk), 5(Study終了時)
慢性期治療
・発症数週間における心エコーで, 冠動脈拡張を認めない場合(エコーでしっかりと観察できる場合に限る), その後の冠動脈病変リスクは低いと判断する
・冠動脈瘤がフォローにて改善を認めた場合, 正常径となっていても, 病理ではLMPが認められ, 動脈の反応異常が認められるため注意は必要
・持続性の冠動脈瘤では長期的な血栓リスクやACSリスクがある
長期的な心血管系のフォローが必要
日本と米国のガイドラインの比較(Heart. 2017 Nov;103(22):1760-1769.)
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