慢性+急性腎障害でCr 6台, UA 20mg/dLで入院した患者.
背景が不明で, 当初腫瘍崩壊症候群も視野にいれ, 緊急性もあるため, 大量補液+フェブキノスタット60mgを開始した.
結果的に高血圧緊急症であり, 降圧管理にて速やかに改善
(症例自体は以下参照:
http://hospitalist-gim.blogspot.com/2019/05/40.html
http://hospitalist-gim.blogspot.com/2019/05/40_11.html)
ところが, ほとんどのLabが改善する一方, 入院3-4日目からCKのみ単独上昇を認めた.
入院時400程度 → Day 3には6000, Day 5には3万台へ.
高血圧緊急症やTMAとCK上昇は直接的な関係は考えにくく,
その全てが電解質異常や原疾患が原因となる.
全身状態は改善しており, 上昇タイミングも遅い為, おそらくは他合併であろうと考えた.
そこで原因となり得るのは入院後開始したフェブキソスタット.
この薬剤を中止したところ, 2日後にはCKは9000台, その後速やかに正常化した.
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フェブキソスタットと筋症, 筋炎, 横紋筋融解症
あまり報告例はないが, 急性経過の報告では同様の症例があった.
CKD+高尿酸血症患者(73歳男性)において, アロプリノールからフェブキノスタットに変更後数日で筋力低下, CK 7000台の上昇, 精査にて下肢帯の筋炎所見を認めた症例報告
・薬剤の中止にて速やかにCK, 所見は改善
(Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics, 2014, 39, 328–330)
慢性経過の筋症, 筋炎, 横紋筋融解症については, 台湾より後ろ向き解析がある
(Clin J Am Soc Nephrol 12: 744–750, 2017.)
Xanthine oxidase阻害薬は主にアロプリノールとフェブキソスタットがあるが, 後者は肝代謝であり, 腎不全患者で使用しやすい.
・アロプリノールよりも副作用が少なく, 使用しやすい報告や意見もあるものの, 一部の患者で筋症状(筋痛~筋力低下, 筋けいれん, 横紋筋融解)の報告もある.
台湾において, Febuxostatを使用している1332例を後ろ向きに評価した報告.
・使用理由の大半は痛風でGFR<45mL/minのCKDがある患者や他の薬剤でUA<6.0mg/dLを達成できない患者
・薬剤を>1ヶ月使用した患者を対象とした
Febuxostat関連筋症の定義は, ACC/AHA/National Heart, Lung and Blood Institute Clinical AdvisoryのStatin関連筋症の定義を一部変更し, 以下のように定義.
・Febuxostat関連筋炎は筋症状+CK上昇(3-10ULN)で定義
・横紋筋融解症は筋症状 + CK>10ULNで定義
・筋症は上記2つを合わせたもの
アウトカム
・1332例で, Febuxostat使用期間は224日[86-441.5]
CKDは1222例(91.7%)で, eGFR 20.8mL/分[9.0-35.4]
・41例で使用後に筋症を認め, その全例でCKDを合併.
全体で3.1%, CKD患者の3.4%
・頻度はCKD患者のうち, 0.013[0.01-0.02]/100pt-日
(参考: スタチン関連筋症の頻度は, 0.097/100-年, Placebo群との比較では0.005/100-年の報告がある[Current Opinion in Lipidology 2007, 18:401–408])
筋症合併例と非合併例の比較
・筋症を認めるまでの期間は303日[166-515]と数カ月〜2年程度
筋炎と横紋筋融解症例
・筋炎が37例, 横紋筋融解症が4例
Febuxostat関連筋症のリスク因子
・eGFRが低いほど, 筋症のリスクになり得る.
eGFR<12.4mL/分は, ≥29mL/分と比較して, Adjusted ORは4.21
・また, Subグループ解析では,
<65歳の若年者の高度腎機能低下症例でリスクが高い.
StatinやFibrateの併用はあまりリスクにはなりにくい
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フェブキソスタットはスタチンと同様に筋症, 筋炎, 横紋筋融解リスクになりえる
特にCKD合併患者でのみ報告されており, eGFRが低いほどリスクも増加する可能性が高い
急性経過で生じる横紋筋融解症もあり, 覚えておくと良いかも