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2018年9月12日水曜日

症例: ①高齢者の下痢, ②アル中患者の皮疹と意識障害

症例シリーズ. ここ1ヶ月で2例, 同じ原因であろうと考えられる疾患を診断しました.
おそらくはもっと隠れているかも, ということで紹介します.

80台男性亜急性経過の下痢下痢による低K血症で入院.

 10年以上前に胃全摘の既往がある男性
 元々食事摂取量も少ないビタミンB12の補充はある.
 数週間前より下痢が出現. 12-3回の軟便〜泥状便腹痛など無し.
 今回は脱力倦怠感あり受診. Labでは炎症反応も正常血清K 2.6と低値であり、下痢による低K血症と診断し入院となった.

 入院後腹部のUS, CTも施行するが明らかな原因となる異常は認められず. 1日に2-3回の下痢は持続し, 1K50-80mEq補充するがあまり上昇が認められず. Mgも評価し低下していたため補正済み.

 食事摂取量が少ないことから栄養の評価をしたところ, ビタミンB1の低値と葉酸の低値が認められた. B12は補充しており正常範囲 ビタミンB1と葉酸は入院時から末梢輸液にて補充済みである認知症の進行や意識障害は認めていない.

 さてこの患者の下痢の原因は?
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70台男性アルコール依存アルコール性肝硬変がある患者意識障害にて入院.

 アルコール依存肝硬変が背景にあり今回は自宅で動けなくなり入院見当識障害が強く認知機能低下も目立つ.
 入院の2-3ヶ月前より顔面体幹四肢に皮疹が出現し皮膚科にて皮脂欠乏性湿疹と指摘され保湿剤を使用しているが改善が乏しいとのこと.
 肝性脳症は所見やアモンニア濃度から否定的と判断背景疾患からビタミンB1欠乏を疑い評価したところビタミンB1は低値であった.

 当然入院時よりビタミンB1は補充を行っているが意識障害認知機能低下の改善は乏しい.

皮疹は写真の通り:



 四肢末端に色素沈着, 皮膚硬化, 落屑が目立つ.
 体幹は頸部に目立ち, 胸部や腹部はそこまで強くない.

>> 日光暴露部に多い印象

さて、①と②の診断は??
































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水溶性のビタミンB1欠乏を合併している点胃全摘歴や食事摂取不良やアルコール依存がある点から水溶性ビタミンの欠乏があると考えた.

特に下痢や認知症皮膚炎と関連づけるとペラグラ(ビタミンB3欠乏)を想起

自費検査にて評価したところ双方ともビタミンB3は低値.

補充を開始したところ①の症例は補充後2日程度で下痢が消失血清Kもぐんぐん上昇補充の必要もなくなった.

症例②も補充をしているが皮疹は数週間改善にかかるためにフォロー中である.


ペラグラに関しては
を参照

ポイントは, 
・下痢は先行症状としてありえる点と, 
・Wernicke脳症とペラグラはしばしば合併し, 一つを治療しても効果不十分な場合はペラグラも考慮する.
・普段しようされることが多いビタメジンはB1,6,12であり, B3は含有されていない. B3ナイクリン注射液や、ビタミンB1との合剤であるシーパラ®がある.意識して補充せねばならない.
 シーパラ®いいなぁ.