おそらくはもっと隠れているかも, ということで紹介します.
①80台男性, 亜急性経過の下痢. 下痢による低K血症で入院.
10年以上前に胃全摘の既往がある男性.
元々食事摂取量も少ない. ビタミンB12の補充はある.
数週間前より下痢が出現. 1日2-3回の軟便〜泥状便. 腹痛など無し.
今回は脱力, 倦怠感あり, 受診. Labでは炎症反応も正常. 血清K 2.6と低値であり、下痢による低K血症と診断し入院となった.
入院後, 腹部のUS, CTも施行するが明らかな原因となる異常は認められず. 1日に2-3回の下痢は持続し, 1日Kを50-80mEq補充するがあまり上昇が認められず. Mgも評価し, 低下していたため補正済み.
食事摂取量が少ないことから栄養の評価をしたところ, ビタミンB1の低値と葉酸の低値が認められた. B12は補充しており, 正常範囲. ビタミンB1と葉酸は入院時から末梢輸液にて補充済みである. 認知症の進行や意識障害は認めていない.
さて, この患者の下痢の原因は?
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②70台男性. アルコール依存, アルコール性肝硬変がある患者. 意識障害にて入院.
アルコール依存, 肝硬変が背景にあり, 今回は自宅で動けなくなり入院. 見当識障害が強く, 認知機能低下も目立つ.
入院の2-3ヶ月前より顔面, 体幹, 四肢に皮疹が出現し, 皮膚科にて皮脂欠乏性湿疹と指摘され, 保湿剤を使用しているが改善が乏しいとのこと.
肝性脳症は所見やアモンニア濃度から否定的と判断. 背景疾患からビタミンB1欠乏を疑い評価したところ, ビタミンB1は低値であった.
当然入院時よりビタミンB1は補充を行っているが意識障害, 認知機能低下の改善は乏しい.
皮疹は写真の通り:
四肢末端に色素沈着, 皮膚硬化, 落屑が目立つ.
体幹は頸部に目立ち, 胸部や腹部はそこまで強くない.
>> 日光暴露部に多い印象
さて、①と②の診断は??
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水溶性のビタミンB1欠乏を合併している点, 胃全摘歴や, 食事摂取不良やアルコール依存がある点から, 水溶性ビタミンの欠乏があると考えた.
特に下痢や認知症, 皮膚炎と関連づけると, ペラグラ(ビタミンB3欠乏)を想起
自費検査にて評価したところ, 双方ともビタミンB3は低値.
補充を開始したところ, ①の症例は補充後2日程度で下痢が消失. 血清Kもぐんぐん上昇. 補充の必要もなくなった.
症例②も補充をしているが, 皮疹は数週間改善にかかるためにフォロー中である.
ペラグラに関しては
を参照
ポイントは,
・下痢は先行症状としてありえる点と,
・Wernicke脳症とペラグラはしばしば合併し, 一つを治療しても効果不十分な場合はペラグラも考慮する.
・普段しようされることが多いビタメジンはB1,6,12であり, B3は含有されていない. B3はナイクリン注射液や、ビタミンB1との合剤であるシーパラ®がある.意識して補充せねばならない.
シーパラ®いいなぁ.