十二指腸潰瘍, 胃潰瘍の主な原因 (BMJ 2008;337:a1454)
 十二指腸潰瘍の95%, 非NSAID性胃潰瘍の80%, 胃潰瘍の60%で認める
 日本, 南アメリカでは80%の保菌率! 英国では40%, スカンジナビアでは20%の保菌率.
 保菌者のうち, 1-10%で十二指腸潰瘍, 0.1-3%で胃潰瘍, <0.01%でMALT lymphoma
 消化管潰瘍発症, 胃癌発症に関与しており, 除菌により上記疾患のRiskは軽減することが分かっている ⇒ 近親者に胃ガン患者がいれば, それだけで除菌の価値あり.
 除菌後も再発Riskはあり, 先進国では3.4%/yr, 発展途上国では8.7%/yrの再発率
時間が経つにつれ, 再発Riskも低下する.
時間が経つにつれ, 再発Riskも低下する.
H. pyloriの感染部位がNon-acid-secreting entral regionの場合, Gastrin分泌を亢進させ十二指腸潰瘍の原因となる
 胃潰瘍はH. pyloriの粘膜直接浸潤により生じるとされる
胃癌のRiskになることが明らかになっているが, 除菌療法が胃癌のRisk低下に繋がるかどうかは未だ結論がでていない.
 Meta-analysisでは有意差あるものの, 各RCTでは有意差無しとの結論.
 MALT lymphomaのRisk低下になることは証明されている
GERDのRiskを減らす?
 ウレアーゼ産生により, GERD, AdenocarcinomaのRiskを低下させるとの意見があるが, 実際のMetaでは除菌とGERD発症率に関連性は無し.
どのような患者群でScreeningが必要か?
 胃, 十二指腸潰瘍, MALT lymphoma, 胃癌患者, 第一親等に胃癌を持つ患者, 萎縮性胃炎, 説明困難なIDA, 慢性TTP患者が推奨されているが, Evidenceは少ない.
NEJM 2010;362:1597-604
ピロリ菌の検査
大体が90%以上の感度, 特異度を持つ
内視鏡生検; Sn 90%, Sp 95%, 2箇所以上の生検, PPI内服で感度低下.
培養検査; 感度は最低, 特異度は100%
治療失敗例に行なう(薬剤感受性をCheckする目的)
治療失敗例に行なう(薬剤感受性をCheckする目的)
迅速ウレアーゼテスト; SN90%, SP>90%
PCR; 最も感度が良い
血清学的検査; Sn 85%, Sp 79%, 未治療ならば感染を示唆
Past, Activeはこれでは分からない.
6-12M後に再度測定し, 治療の判定としては有用とされる
Past, Activeはこれでは分からない.
6-12M後に再度測定し, 治療の判定としては有用とされる
尿素呼気試験; Sn, Sp 95%, 4-6W以内の治療反応性のCheckに有用
便中抗原; Sn, Sp 95%, 1W後の治療反応性のCheckに有用
  Rapid EIA testならばActive infectionのCheckとなる
上部消化管出血時の各検査の感度、特異度は
|  | 
感度 | 
特異度 | 
LR+ | 
LR− | 
| 
ウレアーゼ試験 | 
67%[64-70] | 
93%[90-96] | 
9.6[5.1-18.1] | 
0.31[0.22-0.44] | 
| 
組織検査 | 
70%[66-74] | 
90%[85-94] | 
6.7[2.5-18.4] | 
0.23[0.12-0.46] | 
| 
培養 | 
45%{39-51] | 
98%[92-100] | 
19.6[4-96] | 
0.31[0.05-1.9] | 
| 
尿素呼気試験 | 
93%[90-95] | 
92%[87-96] | 
9.5[3.9-23.3] | 
0.11[0.07-0.16] | 
| 
便中抗原 | 
87%[82-91] | 
70%[62-78] | 
2.3[1.4-4] | 
0.2[0.13-0.3] | 
| 
血清検査 | 
88%[85-90] | 
69%[62-75] | 
2.5[1.6-4.1] | 
0.25[0.19-0.33] | 
Meta-analysis: Am J Gastroenterol. 2006 Apr;101(4):848-63.
感度が低下するため、上部消化管出血時の検査で陰性でも否定はできない.
便中抗原検査, 尿素呼気試験時は, PPI内服中ならば検査前1-2wk中止, H2-blocker内服中ならば検査前24hr中止,  抗生剤は検査前4wk中止が必要となる.
 PPIはH pyloriの活動を抑制する効果を示す. 
除菌効果はないが, しばしば呼気試験, 便検査の感度を低下させる.
除菌効果はないが, しばしば呼気試験, 便検査の感度を低下させる.
 尿素呼気試験で陽性だった93名に, Lansoprazole 30mg 28日間内服.
その後 呼気試験再検査を0, 3, 7, 14d後に施行. Ann Intern Med 1998;129:547-50
その後 呼気試験再検査を0, 3, 7, 14d後に施行. Ann Intern Med 1998;129:547-50
 検査の時期と陽性率
| 検査時期 | 陽性率 | 
| PPI後0d | 67%[56-76] | 
| 3d | 91%[83-96] | 
| 7d | 97%[90-99] | 
| 14d | 100%[96-100] | 
 確実に除菌を確認したいならば, PPIは2wkは中止する必要がある.
H2-blockerは胃内pHを上昇させることで, 呼気試験の感度を低下させる可能性があるが, H pyloriは抑制しないため, 偽陰性も軽度. Helicobacter, 2004;9:17– 27
ピロリ菌の除菌療法
日本ヘリコバクター学会のガイドライン 2009より, 除菌療法の適応
日本ヘリコバクター学会誌 2009;10:104−28
|  | 
エビデンスレベル | 
保険適応の有無 | 
| 
胃潰瘍, 十二指腸潰瘍 | 
I | 
あり | 
| 
胃MALTリンパ腫 | 
III | 
あり | 
| 
特発性自己免疫性血小板減少症 | 
I | 
あり | 
| 
早期胃癌に対する内視鏡治療後 | 
II | 
あり | 
| 
萎縮性胃炎 | 
I |  | 
| 
胃過形成ポリープ | 
II |  | 
| 
機能性ディスペプシア | 
I |  | 
| 
逆流性食道炎 | 
II |  | 
| 
鉄欠乏性貧血 | 
III |  | 
| 
慢性蕁麻疹 | 
III |  | 
除菌療法のレジメ
一次除菌 (保険適応あり): 7日間
| 
薬剤 |  | 
| 
PPI | 
OPZ 20mg or LPZ 30mg or RPZ 10mg or EPZ 20mgを2回/日 | 
| 
AMPC | 
750mg 2回/日 | 
| 
CAM | 
200mg もしくは 400mgを2回/日 | 
二次除菌 (保険適応あり): 7日間
| 
薬剤 |  | 
| 
PPI | 
OPZ 20mg or LPZ 30mg or RPZ 10mg or EPZ 20mgを2回/日 | 
| 
AMPC | 
750mg 2回/日 | 
| 
MNZ | 
500mg 2回/日 | 
三次以降の除菌レジメ (保険適応なし)
STFX(グレースビット®)を使用したレジメ: 7日間(LAS)
| 
薬剤 |  | 
| 
PPI | 
LPZ 30mg 2回/日 | 
| 
AMPC | 
750mg 2回/日 | 
| 
STFX | 
100mg 2回/日 | 
高用量2剤療法: 14日間(LA)
| 
薬剤 |  | 
| 
PPI | 
LPZ 30mg 4回/日 | 
| 
AMPC | 
500mg 4回/日 | 
LVFXを使用したレジメ: 7日間(LAL)
| 
薬剤 |  | 
| 
PPI | 
LPZ 30mg 2回/日 | 
| 
AMPC | 
750mg 2回/日 | 
| 
LVFX | 
300mg 2回/日 | 
OPZ: オメプラゾール, LPZ: ランソプラゾール, RPZ: ラベプラゾール, EPZ: エソメプラゾール, CAM: クラリスロマイシン, MNZ: メトロニダゾール, AMPC: アモキシシリン, STFX: シタフロキサシン, LVFX: レボフロキサシン
Japan GAST study: 国内の一次, 二次除菌で失敗した204例を対象としたopen-label RCT.
上記のLAS, LAL, LA群に割り付け, 除菌成功率を比較
 LASの除菌成功率は70.0%
LALでは43.1%, LAでは54.3%と有意にLASで除菌成功率が高い結果. J Gastroenterol. 2013 Oct;48(10):1128-35.
LALでは43.1%, LAでは54.3%と有意にLASで除菌成功率が高い結果. J Gastroenterol. 2013 Oct;48(10):1128-35.
キノロンを使用する場合はLVFXよりSTFXの方が除菌率が良好
日本ヘリコバクター学会誌 2013;14:95-100
ピロリ菌の薬剤耐性率
2002-2006年, 2010-2011年にピロリ菌の耐性率を評価 Helicobacter Research 2014;18:118-125
|  | 
CAM耐性 | 
AMPC耐性 | 
MNZ耐性 | 
| 
2002-2006年 | 
24.7% | 
17.5% | 
2.6% | 
| 
2010-2011年 | 
31.0% | 
16.9% | 
3.4% | 
| 
全体 | 
26.3% | 
17.3% | 
2.8% | 
| 
一次除菌不成功 | 
86.2% | 
29.7% | 
5.5% | 
| 
二次除菌不成功 | 
80.2% | 
51.1% | 
68.7% | 
