AVNRT, AVRT
上室性頻拍の種類は以下の通り
Sinus tachycardia: 洞性頻脈
AF, Af: 心房細動, 心房粗動
Multifocal atrial tachycardia: 多源性心房性頻拍
Focal atrial tachycardia: 局所性心房性頻拍(FAT)
Focal atrial tachycardia: 局所性心房性頻拍(FAT)
Atrioventricular node reentrant tachycardia(AVNRT)
Atrioventricular reciprocating tachycardia(AVRT)
PSVTと呼ばれるものはAVNRT, AVRT, FATの3種類.
AVNRTが60%, AVRTが30%, FATが10%を占める. N Engl J Med 2006;354:1039-51.
AVNRTが60%, AVRTが30%, FATが10%を占める. N Engl J Med 2006;354:1039-51.
FATはAVNRTやAVRTと異なり, リエントリー回路の関連が少なく, 従って治療方法も異なる。AVNRTやAVRTに使用される薬剤には不応性であることが多いため, アブレーションが最も効果的な治療と言える。従ってFATについてはまた別項目で記載する
PSVTは年間発症率 35/100000, 有病率2.25/1000 N Engl J Med 2006;354:1039-51.
心臓の構造異常は通常原因とはならないが, Hypertrophic cardiomyopathy, Ebstein奇形などではリエントリー回路が形成され, 原因と成り得る.
先天性心奇形でもAtrial tachycardiaを来すことがある.
先天性心奇形でもAtrial tachycardiaを来すことがある.
リエントリー性のSVTはPACやPVCが切っ掛けとなり不整脈を生じることがあり, カフェインの摂取やアルコール, 違法薬剤, 甲状腺機能亢進症, ストレスが不整脈を誘発する.
どの年齢でも生じるが,AVNRTは48[30-66]歳, AVRTは36[18-64]歳, Afは50[30-69]歳で多い. またAVNRTは女性で多く, AVRTは男性で多い. Afの男女差はない BMJ 2012;345:e7769
AVRTとAVNRTとは
AVRTは心室→心房へ逆行性に伝導する経路により, 心室の興奮が心房へ伝わり, 循環することで頻脈を来す病態
AVNRTはAV node内にReentry回路を有し, node内で伝導が循環するため, 心房, 心室を興奮させ続け, 頻脈を来す病態
AVRT, AVNRTを見分ける
406例のSVT患者の心電図のReview (JACC 1997;29:394-402)
AVNRT 166名, AVRT 240名 (P波が不明瞭なものは除かれる AVNRT 20.2%, AVRT 11.1%)
406名中, 226名をDeveloping cohort, 180名をValidation cohortに使用
ECG所見としては, 下記の3つを評価
Pseudo S wave; II, III, aVFで頻脈時S wave(+)でSinus時S wave(-)
Pseudo r’ wave; V1で頻脈時r’(+), Sinus時は消失
Presumed P wave; 頻脈時に認める (どの誘導でも良い)
STよりも高ければ”陽性”, 低ければ”陰性”と判断. 双方ならば“二相性”
STが斜めの部位にP waveがある場合は, QRSの終末とT waveの頂点を線で結び, そこを基線として陽性, 陰性, 二相性を判断する
STよりも高ければ”陽性”, 低ければ”陰性”と判断. 双方ならば“二相性”
STが斜めの部位にP waveがある場合は, QRSの終末とT waveの頂点を線で結び, そこを基線として陽性, 陰性, 二相性を判断する
結果:
V1のPseudo r’もしくはII, III, aVFのPseudo Sがあれば100%でanterior-type AVNRTを示唆する.
V1とIIIのRP’間隔の差が>20msあれば, 感度 71%[55-89] 特異度87%[67-97]でPosterior-type AVNRTを示唆.
上記が陰性の場合, Presumed P waveの部位, 陽性, 陰性, 二相性でリエントリー回路部位を予測する(AVRT)
判別アルゴリズム
LA: Lt anterior, LL: Lt lateral, LP: Lt posterior, LPS: Lt posteroseptal, RA: Rt anterior, RAS: Rt anteroseptal, RMS: Rt midseptal, RP: Rt Posterior, RPS: Rt posteroseptal
Presumed P wave
+: 陽性, -: 陰性, ±: 二相性
INF: 下壁誘導, 2+, 2-: 2つ以上の誘導で+ or -
AVNRTは頸静脈拍動が顕著になる N Engl J Med 1992;327:772-4
AVNRTは心室と心房がほぼ同時に収縮するため, 右房圧がより高く, 上大静脈への逆流も多くなる.
3度AVブロックにおいて, 心室と心房が同時収縮する際に頚静脈キャノンと呼ばれる拍動が生じることがあるが, それと同じ機序.
不整脈時の血行動態
RA圧はAVNRTで最も高くなる.
AVRTとの差はPeak値で5, 平均値で3mmHg
→ cmH2O換算ならば, Peak値で6.8, 平均値で4.1cmH2O
CMT; circus-movement tacky (AVRTと同義)→ cmH2O換算ならば, Peak値で6.8, 平均値で4.1cmH2O
同一患者における, AVNRT, AVRT時の右房圧の変化
A; 患者XのAVNRT B; 患者XのAVRT
C; 患者YのAVNRT D; 患者YのAVRT
C; 患者YのAVNRT D; 患者YのAVRT
AVRT時には頚静脈圧は比較的低く, 二峰性となるが, AVNRT時には一峰性で圧が高くなっている.
AVNRT, AVRTの判別には頚静脈圧, 拍動が有効かもしれない.
身体所見でこの2つが鑑別できればカッコいいですね. このサインをフロッグサインと言います。カエルのように喉が膨らむような所見
非薬物治療としては, Valsalva法
息ごらえ, 冷水を顔につける, 頸動脈マッサージ, 眼球圧迫など.
肥満患者で頸動脈マッサージを行うと, 血栓が飛ぶ可能性があるため注意
Valsalva法については古いStudyのみであるが, NNTは2.5-16.5と比較的良好な結果.
試す価値はある治療と言える (Ann Emerg Med 2015;65:27-29)
Valsalva法については古いStudyのみであるが, NNTは2.5-16.5と比較的良好な結果.
試す価値はある治療と言える (Ann Emerg Med 2015;65:27-29)
薬物治療;
ATP(アデホス®)による一時的AV blockの誘発.
Ca-ch阻害薬(Verapamil, Diltiazem). β阻害薬, ジゴキシン.
106名のPSVT患者において,
Verapamil 5mg 5-10minでiv, 1-5µg/kg/hr
Adenosine 6mg iv, 2-3min後に12mg iv
頸動脈マッサージ の3群で比較. Eur Heart J 2004;25:1310-17
Adenosine 6mg iv, 2-3min後に12mg iv
頸動脈マッサージ の3群で比較. Eur Heart J 2004;25:1310-17
それぞれ, 74.4% vs 81.8% vs 32.4%でSinus Rhythmに改善.
(Verapamil = Adenosine > 頸動脈マッサージ)
(Verapamil = Adenosine > 頸動脈マッサージ)
ベラパミルとアデノシンによるPSVT治療のMeta-analysis European Journal of Emergency Medicine 2011, 18:148–152
8 trialsのMeta-analysis
アデノシンによる除細動成功率は90.8%[87.3-93.4]
ベラパミルでは89.9%[86.0-92.9], と両者で同等の治療効果を示す.
アデノシンによる除細動成功率は90.8%[87.3-93.4]
ベラパミルでは89.9%[86.0-92.9], と両者で同等の治療効果を示す.
副作用は
アデノシンで16.7-76%, ベラパミルで0-9.9%と有意にアデノシンで副作用が多い(OR 11.49[2.01-62.66])
ただし, 低血圧は0.6%[0.1-2.4] vs 3.7%[1.9-6.9]とベラパミルで多い.
アデノシンで16.7-76%, ベラパミルで0-9.9%と有意にアデノシンで副作用が多い(OR 11.49[2.01-62.66])
ただし, 低血圧は0.6%[0.1-2.4] vs 3.7%[1.9-6.9]とベラパミルで多い.
除細動までの時間はアデノシンでより迅速であり,ベラパミルは数分〜数時間
アデノシンについて Am J of Emerg Med 2008;26:879-82
SVTに対するAdenosine投与, 454名の解析
SVTに対する頸動脈マッサージに不応であった454名
6mg ⇒ 12mg ⇒ 12mg Rapid IVを施行
初回(6mg)投与にて73%が反応(+)
2回目(12mg)投与にて15%が反応(+)
3回目(12mg)投与にて反応したのは1%のみで, 11%が反応せず
2回目(12mg)投与にて15%が反応(+)
3回目(12mg)投与にて反応したのは1%のみで, 11%が反応せず
副作用
副作用
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頻度
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副作用
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頻度
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胸部不快感
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83%
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頭痛
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27.1%
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紅潮
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39.4%
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悪心
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15.1%
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呼吸苦
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32.2%
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死の恐怖
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7%
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1例のみ, 2:1 AFが1:1となるケース報告アリ
胸部不快感が80%以上で認められる
胸部不快感が80%以上で認められる
HRが高ければアデノシン、そこまで頻脈が強くなければベラパミルが良く効くEur Heart J 2004;25:1310-17
Adenosineでは,
HR>166bpmで成功率>75%
HR 152bpmで成功率50%
HR<138bpmで成功率25%
HR>166bpmで成功率>75%
HR 152bpmで成功率50%
HR<138bpmで成功率25%
Verapamilでは,
HR<186bpmで成功率>75%
HR 214bpmで成功率50%
HR>241bpmで成功率<25%
両者より173bpmで効果は同等.HR 214bpmで成功率50%
HR>241bpmで成功率<25%
それ以下ならばVerapamil, それ以上はAdenosineが好ましい
急性期で使用する薬剤のまとめ
1st line
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投与量
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副作用
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ATP
(アデホス®) |
10mg rapid bolus
生食10−20ccで投与直後にフラッシュ必要 |
顔面紅潮, 胸部不快感,
低血圧, 気管攣縮 |
ベラパミル
(ワソラン®) |
5mgを3−5分毎に投与
最大15mg |
低血圧, 徐脈
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代替薬
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投与量
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副作用
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ジルチアゼム
(ヘルベッサー®) |
0.25mg/kgを2分
効果なければ0.35mg/kgを2分で投与 維持量は5-15mg/h |
低血圧, 徐脈
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β阻害薬
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低血圧, 徐脈
気管攣縮 |
メトプロロール
(セロケン®) |
5mgを2分毎に投与, 3回まで
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エスモロール
(ブレビブロック®) |
250−500µg/kgを1分で投与
50-200µg/kg/minで4分間維持 |
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プロプラノロール
(インデラル®) |
0.15mg/kgを2分で投与
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国内にはIV薬なし
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Preexcitation合併例(WPW)や薬剤難治性のSVTの場合
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投与量
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副作用
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プロカインアミド
(アミサリン®) |
30mg/minで投与. 最大17mg/kgまで
維持量は2-4mg/min |
低血圧, wide QRS,
Torsades de pointes 不整脈が改善, 低血圧時, QRSが≥50%開大した場合は投与中止 |
フレカイニド
(タンボコール®) |
2mg/kgを10分で投与
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陰性変力作用, wide QRS
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プロパフェノン
(プロノン®) |
2mg/kgを10分で投与
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イブチリド
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≥60kgでは1mgを10分で
<60kgでは0.01mg/kgを10分で投与 投与後10分で効果なければ再投与 |
QT延長
低K血症では投与不可 投与後4hは経過観察必要 |
単発のSVTにおける再発率, リスク評価は未だ不明
従って初発のSVTでは通常予防治療の適応とはならない.
繰り返す患者では抗不整脈薬や, アブレーションを考慮する
患者自身の症状や希望に応じて選択する
患者自身の症状や希望に応じて選択する
失神や職業上、急な発作が仕事の妨げになる場合はアブレーション治療を優先すべきである
Pill-in-the-Pocketは発作回数が年数回と少なく, 発作が1−2h以上と長い場合に用いられる方法.
ベラパミル40-160mg, β阻害薬, プロパフェノン150-450mg, フレカイニド100-300mgのどれか1つ, もしくは併用を用いる.
Preexcitation合併がないSVTでの予防薬剤
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投与量
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β阻害薬
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メトプロロール
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セロケン®
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50-200mg/d
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ビソプロロール
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メインテート®
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2.5-10mg/d
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アテノロール
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テノーミン®
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50-100mg/d
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プロプラノロール
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インデラル®
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80-240mg/d
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Ca−ch阻害薬
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ジルチアゼム
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ヘルベッサー®
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180-360mg/d
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ベラパミル
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ワソラン®
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120-480mg/d
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ジゴキシン
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ジゴシン®
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0.125-0.375mg/d
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Preexcitation合併(WPW)があるSVT, 薬剤難治性のSVTの予防薬
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投与量
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Class IC drugs
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フレカイニド
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タンボコール®
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100-300mg/d
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プロパフェノン
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プロノン®
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450-900mg/d
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代替薬
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アミオダロン
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アンカロン®
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200mg/d
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ソタロール
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ソタコール®
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160-320mg/d
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