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2012年8月27日月曜日

2012年8月24日金曜日

認知症と自律神経障害, 起立性低血圧

Diffuse Lewy Bodies(DLB) 20例と, 年齢をMatchさせたMultiple system atrophy(MSA) 20例, Parkinson病 20例において, 自律神経機能を評価. (Neurology 2004;62:1804-1809)
 糖尿病合併例は除外されており, 自律神経機能に影響を及ぼす薬剤は24時間前に中止を指示.
 自律神経の評価はTILT試験, 深呼吸時HR変化, Valsalva法, 発汗試験, CASS scoreなどで評価.

自律神経症状が最も高度な認知症は当然MSAだが, DLBも高頻度. PDは比較的自律神経障害は少ない傾向にある.
起立性低血圧はDLBの約半数に認められるが, PDでは少数のみ.

AD 39例, Vascular dementia(VAD) 30例, DLB 30例, PD 40例, 高齢者Control 38名で自律神経障害を評価. (J Neurol Neurosurg Psychiatry 2007;78:671-677)
 全認知症でHRの変動は低下し, 起立性低血圧を認め得るが, ADとVADは比較的軽症か低頻度. DLB, PDが多い傾向にある.
起立性低血圧の頻度はDLBで52%, PDで49%と高頻度.
ADやVADでは34%程度と少ないが, それでも1/3で認めると思えば多い方.
Control群では13%のみ.

最初のStudyではParkinson病における起立性低血圧頻度は低いとの結論だったが, 2つ目のStudyでは結構多い.
全体的な印象としてはMSA, DLBが最多で, 次いでPD ≥ VAD = ADくらいの頻度か?

血管性認知症において, 白質病変と起立性低血圧頻度には関連性があるとの報告もあり, 其々の認知症の重症度も関連性があるのであろう. (Acta Neurol Scand 1993;87:286-9)

補足; 自律神経障害を来す中枢病変
島回, 前帯状回, 視床下部, 脳幹の障害は自律神経障害を来す
 特に前帯状回は重要.
 内側前脳束, 背側縦束, 反屈束, 乳頭被蓋路が嘔吐中枢に関与.
 同部位のてんかん発作にて嘔吐を来すことが知られている.
 実際900例のてんかん発作のうち, 24例で嘔吐(+) ; Ictus emeticus. (Pediatr neurol 2004;31:283-86)
 側頭葉てんかんで, 前島回をフォーカスとするてんかん発作ではIctus emeticusを来すことがある. (Epilepsy and Behavior 2008;13:560-63)

 島回や前頭葉の脳梗塞で急性の尿閉がくる例もままありますよね。

2012年8月20日月曜日

骨粗鬆症に対するTeriparatide (フォルテオ®)

Teriparatide(フォルテオ®); ヒトN-terminal fragment of PTH(rhPTH). 骨粗鬆症に対する薬剤で, 20µgを1日1回皮下注する. 600µg(1ヶ月分)で51000円也.

閉経後女性で, 椎体骨折の既往がある1637名のDB-RCT.
患者群は1箇所の中等度 or 軽度椎体骨折 + BMD <-1SD, 2箇所以上の中等度椎体骨折(+)を満たす患者群. 腎不全, 肝障害は除外.
Teriparatide 20µg vs 40µg 皮下注 1回/日 vs Placeboに割り付け.
Ca 1000mg/d, Vit D 400-1200Uは全例で併用. 18ヶ月治療継続した.
アウトカム; 新規骨折の出現

 BMDの変化値
Teriparatideは有意に骨折頻度を低下させる. NNT 10前後.
また, 骨密度を上昇させる効果も期待できる.

N Engl J Med 2001;344: 1434-41.

EFOS trial; 閉経後女性で骨粗鬆症と診断され, Teriparatideが開始された1648名のObservational cohort study. (Calcif Tissue Int 2009;85:484-493)
 平均年齢は71.5歳, BMIは25.1, 未治療の骨粗鬆症は7.7%のみで, Teriparatide開始前にBisphosphonateを使用していた患者群は70%程度であった.
 Teriparatideは18ヶ月継続し, 終了. その後さらに18ヶ月フォローし, 骨折リスクや腰痛, QOLをフォロー.

0-18ヶ月(Teriparatide投与中)の解析では, 骨折リスクは有意に低下.
また, 長期使用するほどリスクは低下傾向にあった.
 腰痛の程度, QOLも改善する経過をたどる.


0-36ヶ月の解析(0-18ヶ月はTeriparatide投与中, 18-36moは中止後のフォロー)
期間別, 年齢別の骨折リスクを評価(Calcif Tissue Int 2012;90:373-383)
 75歳以上の高齢者群ではTeripratide投与後早期の骨折リスク軽減効果は認めないものの, 長期的にはリスク軽減効果が見込める. <75歳群では早期よりリスク軽減効果あり.
  腰痛, QOLは両者ともに改善傾向を示し, Teripratide終了後もその改善効果は維持される.

ステロイド投与中の患者群での評価(J Rheumatol 2012;39:600-9)
 EFOS trialにてステロイド投与中の患者群は294例. その患者群で評価しても長期的な骨折リスク軽減効果が認められる.

ステロイドによる骨粗鬆症患者に対するTeripratide vs AlendronateのRCT.
(NEJM 2007;357:2028-39)
22-89歳で, PSL≥5mg/dを3ヶ月以上使用しており, 骨粗鬆症(+)の428名のDB-RCT.
 Teripratide 20µg/d vs Alendronate 10mg/d poに割り付け, BMDをフォロー. 投薬は18ヶ月継続.
 Ca製剤1000mg/d, Vit D 800IUは併用

アウトカム; BMDはTeripratide群でより有意に上昇.

骨折リスクもTeriparatideで有意に少ない.

TeriparatideとBisphosphonateの併用は効果が低下するかもしれない.
 閉経後女性で腰椎BMD<-2SDの93名を対象とした単一施設のRCT (J Clin Endocrinol Metab 2010;95:1838)
 Alendronate 10mg/d vs Teriparatide 40µg/d vs 両者併用群の3群に割り付け, 30ヶ月継続.
 Teriparatideは6ヶ月目から開始し, 24ヶ月投与. Ca, VitD製剤は併用.
 BMDの変化, 骨代謝マーカーを評価.


 Teriparatide単独の方がBMD上昇効果, 骨代謝マーカーの上昇は良好.
 AlendronateがTeriparatideの作用を阻害する可能性が示唆される結果.

閉経後の骨粗鬆症に対してAlendronateもしくはRaloxifene(エビスタ®)を18ヶ月以上投与している患者群のOpen-label RCT.(J Clin Endocrinol Metab 2009;94:3772)
 もともとの薬剤にTeriparatideを追加したAdd群と, 変更したSwitch群でBMD, 骨代謝マーカーを比較. 18ヶ月治療. Teriparatideは20µg/d.


このstudyでは骨代謝マーカーは併用群の方が低くなるが, BMDは併用群の方が上昇するという結果. 最初のStudyとは異なるが, 併用は避けた方が無難と言える.

月5万円, 1年で60万円, 2年間まで投与可能となかなか効果な薬剤だが, BMDの改善を認める点, 薬剤終了後もQOLや腰痛改善効果が保たれる点から, ADLの改善が見込め, 自宅退院するような患者群では良い適応となるかもしれない.

ずっと病院に入院しているような群では先ず使わないだろうな. DPCだし.

2012年8月19日日曜日

鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血 Iron deficiency anemia

 鉄という栄養素は出血以外で対外へ排泄される事は先ず無い.
 従って, 鉄欠乏が生じるにはIntake不足, 吸収障害, 体外への排泄(出血, 組織細胞の脱落)の3つの機序しかない.
 例えば,
 男性, 非月経時の女性では1mg/dの鉄喪失
 月経時女性では0.6-2.5%増加し, 10-42mg/月経期の喪失
 妊娠自体では700mgの喪失
 400ccの献血は200mgの鉄を喪失する.

 <1-2mg/dの摂取を1000日間続けた場合, >2Lの急性出血があった場合に体内の貯蔵鉄はカラッポとなる. (Am J Med 2008;121:943-8)

鉄欠乏性貧血の診断; 身体所見
 有名なのは匙状爪だが, 実は感度は4%と非常に低い. むしろ "爪が脆くなる" という所見の方が感度は高い. 匙状爪の特異度は80%程度で, ヘモクロマトーシス, レイノー病, 強皮症, SLE, ポルフィリン症, 手根管症候群, 外傷, Nail-patella症候群, 爪真菌症, 遺伝, Tuner症候群でも認められる.

 青色強膜の感度は87-89.4%, 特異度 64-92.9%, LR+ 2.48-12.17, LR- 0.14-0.17と良好(Clin med 1999;69:85-6). これは鉄欠乏に伴うコラーゲンの合成障害が生じ, 強膜が菲薄化するためと言われている. 実際外来や検診で若い女性で多く認める所見.
 他に青色強膜を認める疾患は, 偽性偽性甲状腺機能低下症(15%), マルファン症候群(3%), ホモシスチン尿症(5%), 骨形成不全症, Ehlers-Danlos症候群, Russel Silver症候群など.

 他の所見として, 舌乳頭萎縮や口角炎はよく認められる. それに加えて嚥下困難や逆流性食道炎症状を伴うものをPlummer vinson症候群といい, IDAの7-19%で認められる.

鉄欠乏性貧血の診断; 血液検査
 最も有用な検査はフェリチン値. MCVのみでも疑う事は可能だが, 確定にはフェリチン値が欲しいところ.


Test
成人 Cutoff
LR
>=65yr Cutoff
LR
MCV
<70fl
70-74
75-79
80-84
85-89
>90
12.5
3.3
1
0.91
0.79
0.29
<75fl
75-85
86-91
92-95
>95
8.82
1.35
0.64
0.34
0.11
Ferritin
<15ng/mL
15-24
25-34
35-44
45-100
>100
51.8
8.8
2.5
1.8
0.54
0.08
<19ng/mL
19-45
46-100
>100
41
3.1
0.46
0.13
Transferrin Sat
<5%
5-9
10-19
20-29
30-49
>50%
10.5
2.5
0.81
0.52
0.43
0.15
<5%
5-8
8-21
>21%
16.51
1.43
0.57
0.28


鉄欠乏性貧血の治療; 鉄剤の投与量は?
 骨髄の鉄に対する反応は20mg/dが最大.
 鉄剤の投与は空腹時, タンニンとの併用は避けて, 1日150mg 云々と言われるが, 実際は25-50mg/d(フェロミア0.5-1錠)で十分であり, タンニンやPPI, H2阻害薬との併用も気にする必要は低い. 副作用の観点より考えると, 眠前投与がBetterか.

80歳以上の鉄欠乏性貧血患者90名のRCT(Am J Med 2005;118:1142-47)
 鉄剤 15mg vs 50mg vs 150mg投与群に割り付け, 60日間継続. 血中フェリチン値, ヘモグロビン値の変化を比較.
 結果は, 鉄剤のDoseとフェリチン値, ヘモグロビン値の上昇に有意差は無し.
 また, 副作用は量が多いほど高頻度となる.
以上より, 鉄剤はフェロミア50mgを用いるならば0.5錠で十分.
それでも副作用が出現するならばインクレミンシロップあたりを3ml/dのみでOKと言える.
要はより長く内服してもらえることを意識すべき.

また, 当然 鉄欠乏性貧血の原因を調べる事も忘れてはならない.
 基本的には上部, 下部内視鏡検査は必要となる事が多い.


2012年8月13日月曜日

痙攣後と脳炎によるSPECT所見

痙攣後にMRIにてT2, DWIでHigh-intensity, ADCでLowとなる例は多い.
しかしながら, この所見が痙攣後の脳浮腫なのか, 脳炎による所見であり, 脳炎から痙攣を来したものかを判別するのは困難である場合が多く, しばしば臨床上困る.

DWIでHigh, ADCでLowということは水の信号が増強していることを意味する
つまり脳浮腫の状態。
痙攣後ではこの浮腫は血管原性であり, 脳炎では細胞傷害性の脳浮腫であることが多く, これを鑑別するにはSPECTが有用な可能性がある。

痙攣後の患者10名において, 脳MRI所見を評価したStudy (Brain 2005;128:1369-76)
 複雑性部分発作の10例では, 全例でDWIでHigh, ADCでLowが認められた.
 画像所見の分布は,
海馬体と視床の視床枕
6/10
視床枕と皮質
2/10
海馬体のみ
1/10
海馬体と視床枕と皮質
1/10



 と, 海馬体や視床, 皮質での所見が多い.
 また, この10名中, 2名でSPECTを試行したところ, 双方とも取り込みの増強が認められた.

 他にも痙攣後の脳浮腫にて, SPECTで取り込み増強する報告例は多い.
 ただし, 局所的な血流増加 → 毛細血管拡張を来たし, AVシャントの増加を来すことでSPECTで取り込み増強を認めないこともあり, 注意は必要.

脳炎とSPECTについて
 88例の急性脳炎例でSPECTを試行(Neurology 1997;48:1347-51)
 37例で原因が判明. HSV 15例, VZV 7例, マイコプラズマ 3例, アデノウイルス 2例, インフルエンザ 3例, ロタ 1例, Rubella 1例, EBV 1例, Arbovirus 1例, 梅毒 1例, 結核 2例

 HMPAO-SPECTにて片側の取り込み増加が認められたのは20例. 片側の取り込み低下が認められたのは20例, 両側の取り込み低下は7例. 残る41例では正常であった.

 興味深いのは, HSV脳炎では14/15(93%)で取り込み増加する一方, HSV以外の脳炎で取り込みが増加するのは6/73例のみ(8.2%)
 取り込み増強する群では予後不良例が多かった.

この結果から, HSV以外の急性脳炎ではHMPAO-SPECTで取り込み低下する例が27/73(37%)
取り込み増強する例は6/73(8.2%)と取り込み低下する例が多いということ,
HSV脳炎では14/15(93%)で取り込み増強するということが分かる.

また, 脳炎が疑われたが, 初期評価でMRI, CSF所見正常の2例において, SPECTを試行したところ, 2例とも取り込みの増強が認められ, その2例とも最終的にHSV脳炎であった症例報告もあり(臨床神経学 1996;36:475-80), SPECT所見はHSV脳炎の早期診断に有用な可能性がある.

別の報告では, HSV脳炎4例において, HMPAO SPECTとECD SPECTを試行したところ, 全例HMPAO SPECTでは取り込み増強し, ECD SPECTでは取り込み低下したとの報告もある.
(J Nucl Med 1998;39:1508-1510)

* HMPAO; Hexamethyl propyleneamine oxime, ECD; Ethyl cysteinate dimer.
 双方とも脳血流を評価するが, ECDは脳組織の取り込みにエラスターゼが必要であり, 急性期の脳梗塞など, 組織障害が強く, エラスターゼが欠如している場合は取り込みされない.

 つまり, HMPAOで集積(+), ECDで集積(-)では血流増加しているが, 組織障害が強いことを示唆している可能性がある.

これらをまとめると,
 痙攣後のMRIにて脳浮腫様所見が認められた場合, SPECTにて感染性の細胞障害か, 血管原性の脳浮腫かを鑑別可能な可能性がある.
 取り込み増加 → 血管原性. つまり痙攣後の脳浮腫
 取り込み低下 → 細胞傷害性. 脳炎の可能性がある

 例外はHSV脳炎であり, SPECTにて取り込み増加することが多い. ただし, ECD SPECTでは取り込み低下する可能性がある.
 また, 痙攣後でも, AVシャントの関連で取り込み増加しないこともある.

 まぁ〜、クリアカットに分かれる訳ではなさそうですね。

補足; Neuropsychiatric SLE(NPSLE)による脳障害もSPECTで取り込み低下し, MRIよりも感度良好となる.
 43例のSLE患者(22例のNPSLE, 21例のNon-NPSLE)において, MRIと99mTc-ECD SPECTを試行. (Arthritis and Rheumatism 2005;53:845-49)
 SPECTで異常を認めたのは20/22例(感度90.9%), その19/20が取り込み低下.
 MRIでは10/22例(45.5%)のみ.
 結果的に SPECTは感度90.9%, 特異度89.5%, MRIは感度45.5%, 特異度100%でNPSLEを示唆した.

 また, NPSLEでは特に前頭葉の分水嶺領域でのSPECT取り込み低下が認められることが多い.(Arthritis and Rheumatism 2008;59:332-337)

NPSLEではHSV脳炎と同様, ECD SPECTとHMPAO SPECTで違いがあるかどうか?
 答えは特に両者で変わりは無く, ECDでもHMPAOでも取り込みは低下する.
 (J Neuroimaging 1999;9:160-64)(J Nucl Med 1997;38:1112-1115)

 NPSLEでは血管炎や抗リン脂質抗体症候群に伴うVasculopathyが主な病態となるため, 血流低下が認められることが多いと予測できる. 病変も多巣性であったり, 分水嶺領域に多かったりと, Vasculopathyが関与している可能性を示唆する.
 感度がMRIよりも良好なのは面白い. 今度疑ったらやってみよう!

2012年8月12日日曜日

胸痛患者に対するERでの心臓CT (ROMICAT I, II trial)

急性胸痛で来院したが, 心電図正常, 心原性酵素上昇が無い患者群では, Non-STEMIの可能性を考慮して経過観察, 心電図, 心原性酵素フォローを行う流れが普通.

そこでERにおける心臓CTがどの様に診断に寄与するかを評価したのがROMICAT I, II trial.

ROMICAT I; 心電図正常, 心原性酵素上昇のない急性胸痛患者103名において, 心臓CT検査を施行. 冠動脈硬化プラーク, 冠動脈狭窄の有無を評価.
 全例入院管理とし, 最終的に心電図や血液検査, 負荷試験にてACSと判断されたのが14%.
 アウトカムをACSとしたとき, 初診時の心臓CTの感度, 特異度は,


CT所見
Sn(%)
Sp(%)
LR(+)
LR(-)
Plaque(+)
100[81-100]
46[35-57]
1.85
∞
Stenosis(>50%)
100[81-100]
82[72-89]
5.56
∞


 確実にプラークや狭窄が無いと判断できる場合は当然ACS由来の胸痛は否定可能.
 石灰化などで評価困難な場合もある事に注意 (Circulation 2006;114:2251-60)

ROMICAT II; 40-74歳の急性胸痛でACS疑いだが, 初期のECG, トロポニン検査は正常の1000名のRCT.
 すぐに心臓CT検査を施行群 vs 通常の経過観察群に割り付け, 入院期間, 28日以内の冠動脈イベントを比較. (NEJM 2012;367:299-308)
 母集団は, 5分以上の胸痛でERを受診. ACSを除外困難な患者群. ECGは洞調律.
 除外項目はACSの既往(+), ECG, Tropで虚血所見あり, Cre>1.5mg/dL, 血行動態不安定, 造影剤アレルギー, BMI>40.

 マネージメントは, 心臓CT, 経過観察にてACSが否定的ならば帰宅(CTではプラーク, 狭窄>50%が無い場合).

アウトカム;
 最終的にACSと判断されたのは75名(8%). 両群ともACSの見逃しは無し.

心臓CTの方が退院までの時間や, ERから直接退院する割合(47% vs 12%), 入院期間が有意に短縮可能.

また, 低〜中等度のACS疑いの患者1370名のRCT (NEJM 2012;366:1393-403)
 心臓CT vs 通常の経過観察群に割り付け, 30日以内のACS発症, 死亡リスクを評価.
 患者群は, 30歳以上で胸痛を主訴にERを受診, ECGは正常, もしくはTIMI score 0-2だが, 心臓精査を必要と判断された患者群.
 908名が心臓CT, 462名が通常の経過観察群に割り付けられた(2:1)

アウトカム; 心臓CT群の908名中, 実際にCTを施行できたのは767名(84%) 施行できなかった理由は主にHRが下がらない為.
 心臓CTにて狭窄<50%の640名中, 30日以内のACS, 死亡したのは0例[0-0.57]
 両群でACS発症, 死亡リスクは同等. ROMICAT IIと同じく心臓CT群のほうがより早期にACSが除外可能であり, 帰宅率が高く, 入院期間も短くて済む.



 Non-STEMI疑いの際に6時間もの間数回のECG, 血液検査を繰り返すくらいならば早期に心臓CTで否定しておくというマネージメントはありと思う.
 当院心臓内科でも結構やっているマネージメント.
 対費用効果は知りません。経過観察でも除外はできることから考えると, CT群の方が高いのか, それとも入院期間が減らせるので安上がりなのか?

2012年8月11日土曜日

スタチンは糖尿病のリスクとなり得る

JUPITER study;
 LDL<130mg/dL, 高感度CRP≥2mg/L, 心血管イベントの既往(-)の17802名のDB-RCT
 患者群は男性≥50歳, 女性≥60歳.

 Rosuvastatin(クレストール) 20mg/d vs Placeboに割り付け, 心血管イベントリスクを評価.
1.9年間フォローでのアウトカムは, (NEJM 2008;359:2195-207)
Outcome
Rosuvastatin
Placebo
HR
NNT
Primary End point
0.77
1.36
0.56[0.46-0.69]
167
全MI
0.17
0.37
0.46[0.30-0.70]
500
全Stroke
0.18
0.34
0.52[0.34-0.79]
625
Arterial Revascularization
0.38
0.71
0.54[0.41-0.72]
303
UAPによる入院
0.09
0.14
0.59[0.32-1.10]

全死亡
1.00
1.25
0.80[0.67-0.97]
400

 心血管イベント, Stroke, 再灌流療法, 心血管死亡は有意にRosuvastatin群で低下.
 また, 副作用としては血糖コントロールが悪化することが多くなる.

このJUPITER studyを, 以下の群別に解析したStudy(5年後フォロー) (Lancet 2012;380:565-71)
 メタボリック症候群, 耐糖能障害, BMI≥30, HbA1c>6%のいずれかを満たす群が11508名.
 リスクファクターを認めない群が6095例. それぞれの群でアウトカムを評価.

 上記リスクがある患者群では, 134例の心血管イベントを減少させる一方で54例の新規糖尿病の発症が増加するという計算. リスク(-)群では糖尿病のリスクとはならない.
 Risk-benefitを考慮するとそれでもスタチンと投与したときの利点が大きいが, 知っておいた方がよいであろう事項。