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2016年12月6日火曜日

心不全患者のカフェイン摂取は不整脈リスクにはならない

Short-term Effects of High-Dose Caffeine on Cardiac Arrhythmias in Patients With Heart Failure. A Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med より

EF<45%, NYHA I-IIIの心不全患者を対象としたDB-RCT.
上記を満たす51例において,
 100mlのデカフェ コーヒー + カフェイン混入(100mg)群
 100mlのデカフェ コーヒー + 乳糖混入群に割付け, 上記を1時間毎に5回摂取し, 不整脈リスクを比較.
・また, 1週間のWash-out期間を経て上記をCross-overして施行.
・Study前1wkはカフェイン含有食品の摂取は禁止.

・アウトカムはStudy中のVPC, 上室性不整脈頻度.
 ICD治療の頻度, トレッドミル中の不整脈頻度など

ベースラインのデータ
・ICDは61%で挿入されている. その大半が一次予防目的

アウトカム
・VPB, NSVTなど不整脈やHRに有意差は認められず.

カフェイン血中濃度別の評価.
・中央値以下, 以上での比較でも不整脈リスクに差はない結果であった.

トレッドミル中の評価
・運動中の血圧上昇はカフェイン群で上昇する.
・不整脈には関連なし.

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カフェインの摂取は運動中の血圧上昇に関連するが, 不整脈リスクには関係しない.
コーヒー好きに朗報?

2016年12月4日日曜日

輸血に伴う合併症

(Lancet 2016; 388: 2825–36)より

輸血は病院で高頻度で行われる処置であり, またそれによる合併症頻度も高い.
・100例に1例は何かしらの合併症が認められる報告もある.
・軽症〜致死的な合併症まで様々あり, 注意が必要
・多いのは発熱, アレルギー反応.
 まれだが重要なのはARDS, うっ血性心不全が挙げられる.

輸血に伴う合併症の頻度

合併症への対応: 発熱や皮疹, 呼吸苦など, 輸血に伴い状態が変化した場合はまず輸血を中止し, アセスメントを行う

発熱に対する対応

急性の溶血反応
・輸血による溶血には免疫性と非免疫性がある
・免疫性では輸血RBCが患者側の抗A, 抗Bや他のRBCに対する抗体が反応して生じる.
 突如発症の発熱や悪寒が80%で認められ, 腎被膜の進展による腰痛や呼吸苦も認められる. 肉眼的血尿も特徴の1つ
 重症例ではAKI, DIC, Shockを認め致死的となる可能性がある
・初発症状が悪寒発熱であるため, そのような場合は一旦輸血を中止し, アセスメントすることが重要.
・対応は対症療法と全身管理となる
・非免疫性は古いRBCや, 機械的溶血, 同時に投与した補液や薬剤による溶血などが原因となる.

遅発性の溶血反応, 血清反応
・遅発性の溶血や結節反応は1/2500例で認められる.
 鎌状赤血球症では11%の頻度と高い.
・妊娠時や輸血暴露時にRBC抗体が出現した患者では高リスク(時間が経過すると抗体は検出感度以下となるため検出できない. 10ヶ月経過すると25%は検出できなくなる)
・臨床症状として多いのは黒褐色尿や黄疸(45-50%), 次いで発熱や胸部/腹部/背部痛, 呼吸苦, 悪寒, 高血圧.
・対応は全身管理と, 溶血性貧血合併している場合はさらに輸血が必要となる.

非溶血性の輸血後の発熱
・非溶血性の発熱は多く, 輸血の1%(1単位あたり1-3%)で認められる
・Pro-inflammatory cytokineの関連や, レシピエントの抗体がドナーの血液中に含まれる抗原に反応して生じる.
・体温は1度以上上昇し, 悪寒戦慄や倦怠感を伴うことも多い
・輸血中の患者で発熱を認めた場合は輸血を中止し, 菌血症や溶血の有無を確認する.
 >> これらが否定的ならば非溶血性の発熱と判断する
・輸血中止後も改善せず, 2度以上体温が上昇し, 感染症状があれば細菌感染症を評価する必要がある.

Hyperhemolytic trasfusion reactions: 希
・希であるが, 致死的な合併症.
・鎌状赤血球症などの異常ヘモグロビン症でリスクが高い
 鎌状赤血球症では1-19%
・輸血後のHbが輸血前よりも低値となることで疑う.
・さらにBil上昇, LDH上昇, ハプトグロビンの低値が伴う
 溶血期には網状赤血球も低下する
・急性溶血, 晩期溶血反応双方で合併し得る.
・この病態では輸血は避ける必要があるが, 重症で貧血が高度の場合は輸血に頼らざるを得ない場合もある
 この場合はIVIGやステロイドを併用する
 リツキシマブや血漿交換も選択肢となる

アレルギー反応
・アレルギー反応は輸血後4時間以内に生じ, PLT輸血で最も高リスク(302/100000単位)
・ヒスタミンなどのメディエーターにより生じる

アレルギー反応の大半が軽症で, 皮疹やそう痒感, じんま疹, 局所的な血管浮腫程度だが, 重症例ではアナフィラキシーとなることもある.
・皮膚症状のみならば抗ヒスタミン薬の使用のみで対応.
・症状が改善すれば投与速度を減らした上で, 輸血を再開することも可能(当然経過観察はしっかりと).
・症状が再燃, 増悪すれば輸血は中止する.
・アナフィラキシー(8/100000単位)ではエピネフリンの筋注を行い, 抗ヒスタミン薬や血管拡張薬, ステロイドの使用を考慮する.
・また, 輸血によりアナフィラキシーの既往がある患者では, その後輸血時にはモニタリングは必須. また, 輸血前の抗ヒスタミン薬やステロイドの投与についても検討する.
・輸血製剤は洗浄RBCなど, 極力異物を除いた製剤を用いる.

呼吸器症状, その他

低血圧性輸血反応(hypotensive transfusion reactions)
・輸血開始後15分以内にsBPが30mmHg低下し, 輸血中止後10分以内に改善する病態で定義.
・血圧低下以外に呼吸症状, 消化器症状, 軽度のアレルギー症状も合併し得る.
・内因性の凝固カスケードの活性化やブラジキニンの産生が関与
・元々高血圧がある患者やACE阻害薬を内服中の患者でリスク.
 またWBC除去フィルター未使用や, PLT輸血もリスクとなる
・輸血中止で改善するため, 対症療法, 全身管理が治療.
・輸血の再開はしない. 
 ACE阻害薬使用中の場合は変更を考慮する.

Massive trasfusion-associated reactions (citrate, potassium, cold toxicity)
・大量輸血の定義はないが, 患者の全血液量の50%を3時間で投与するか, 10単位以上を24時間以内に投与する場合は大量と判断(国内では20単位)
・外傷や手術における出血で行われることが多い
・輸血に含まれるcitrateの過剰投与による低Ca血症, Kの大量投与による高K血症, Volume増加による心不全, 急速投与による低体温などがある.
・大量輸血する場合の投与速度は≤0.5ml/kg/min程度が推奨される
 またRBCは新しいもの(≤7-10日)を用い, 輸血前12h以内に放射線照射を受けたものを用いるべき.

輸血後紫斑
・RBCやPLT輸血後5-12日で生じる血小板減少で定義される病態
・24時間以内に急速にPLTが正常範囲から1万以下に低下する
 PLTの低下に伴い紫斑や粘膜出血, 頭蓋内出血を合併することもある
・中高年の女性で生じることが多い
・診断は血小板特異性抗体の検出で行う.
・対応は対症療法が基本だが, 重症例ではステロイドやIVIG, 血漿交換も行われることがある(ITPに準じた治療)
・血小板減少は7-28日間持続し改善するが, さらに長期間持続する例もある.
・予防として, 洗浄RBCやHPA(ヒト血小板抗体)に影響されないドナーからの輸血, 自己輸血の使用などを考慮

敗血症性輸血反応(Septic transfusion reactions)
・輸血後4時間以内に生じる反応で, 血液に混入した細菌により生じる. 
・PLTで特にリスクが高い(3000-5000単位に1コンタミ)
 PLTは室温で保存されるためにリスクが高い
・悪寒戦慄を伴う発熱や低血圧, SIRSが多い
・診断は患者血液と, 輸血から同種の菌が検出されること.
 輸血から菌が培養されれば, それで考慮しても良い意見もある
・輸血した患者で菌血症を生じた場合, 輸血した血液ロット全てで細菌の混入を評価することが推奨される.
・RBC輸血後の場合は緑膿菌カバーも行う

Transfusion-associated circulatory overload(TACO)
・輸血患者の1-8%で認められるが, 気づかれないことも多い
・輸血後6h以内に呼吸症状, BNP上昇, CVP上昇, LV不全, 肺水腫のうち3項目以上を認める場合に診断される
・高齢者や腎不全, Fluid overload, 心不全, 大量輸血がリスク

Transfusion-associated GVHD
・非常に希であり, ドナーのリンパ球が混入し, レシピエントの細胞に反応した場合に生じる.
・全血, RBC, PLT, HLA-matched PLT, 顆粒球の輸血で報告例あり
・輸血後5-10日で発症し, 丘疹性紅斑, 発熱, 腹痛, 下痢, 悪心, 嘔吐など認められる. 
・血液検査では汎血球減少や肝障害, 電解質異常など.
・対応は全身管理となる

Transfusion-associated necrotising enterocolitis
・早熟時や低体重出生時で多い合併症
・発症する機序は不明.

Trasfusion-related acute lung injury(TRALI)

以下を参照

http://hospitalist-gim.blogspot.jp/2014/06/trali-transfusion-related-acute-lung.html

2016年12月2日金曜日

遠位DVTでは抗凝固療法が必要か?

遠位部のDVT(膝窩以遠のDVTでPE合併なし)は下肢DVTの50%を占め, 塞栓リスクも低いとされている
・近位部のDVTや肺塞栓症例では治療に関するStudyは多く, 治療の必要性や方法はある程度確立されているが, 遠位部のDVTについてはまだエビデンスも少なく, 治療については各施設で異なるのが現状.
・DVTを疑った患者において, 
 下肢全体の血管評価を行い, 遠位DVTでも近位DVTでも抗凝固を行う施設もあれば,
 近位部のみしか評価しない施設もある(この場合1週間後に再度エコーを行い, 近位部への進展の有無を評価する)
・悪性腫瘍やDVTの既往, 体動困難/入院患者など要素があれば治療を行うところもある.

CACTUS trial: 外来患者における, 初発の急性遠位DVT患者を対象としたDB-RCT.
(Lancet Haematol 2016; 3: e556–62)
・DVT疑い患者においてWhole-leg compression USを行い, 遠位DVT症例を抽出(後脛骨V, 腓骨V, 前脛骨V, 腓腹筋, ヒラメ筋の静脈の血栓症で定義. 表在静脈のみの場合は除外)
・18歳未満や妊婦, VTE既往, 近位部DVT合併例, 肺塞栓疑い, 6ヶ月未満の悪性腫瘍の病歴, 他の理由で抗凝固療法中, PLT<10万, CCr<30mL/min, ヘパリンアレルギー, 出血高リスク群などは除外

上記を満たす患者をNadroparin(LMWH) vs Placebo群に割付け, 42日間継続.
・また, 両群とも弾性ストッキングを処方した(30mmHg圧)
・アウトカム近位部DVT, PE合併率を比較した.

母集団データ
・サンプルサイズの予定は各群286例であったが, Study Entryの遅延や薬剤契約期間の問題で予定の50%しかNが集まらなかった.
・上記サンプルサイズはプラセボ群におけるPrimary outcomeが10%で認められ, 介入群でのRisk riductionが70%あると推測して設定


アウトカム
・42日以内の近位DVT, PEの合併率は両群で有意差なし.
・LMWH群では出血リスクは増大する

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遠位DVTの治療は確かに施設により異なる印象がある.
抗凝固を行なっているところが多いか.

たまに紹介患者でもDVT既往、とあって抗凝固がされているが, それが近位なのか、遠位なのか書いていないこともしばしば... その時には困ってしまう.

CACTUS trialはNは目標に満たなかったものの, すごく有益な情報.
可能ならばさらに多施設で追試が増えてくれると良いのですが.

2016年12月1日木曜日

急性薬物中毒におけるトライエージ 他

薬物中毒において, 尿検査で中毒物のスクリーニングを行う検査がある.
・有名なのはトライエージ. 
 また近年Medical statやINSTANT-VIEW M-Iという検査も発売されている.
・Medical stat testは1個4500円, 25個で89000円(3560円)
 トライエージは1個3520円. ほぼ同じ値段.

購入可能な検査キットと各中毒物質濃度のカットオフ
物質
トライエージ
インスタント・ビュー
メディカルスタット
アンフェタミン(AMP)
650
-
1000
メタンフェタミン(mAMP)
1000
500
1000
大麻(THC)
50
50
50
コカイン(COC)
300
300
300
ベンゾジアゼピン(BZO)
300
300
300
バルビツール(BAR)
300
200
300
三環系抗うつ薬(TCA)
1000
1000
1000
フェンシクリジン(PCP)
25
-
25
オピオイド(OPI)
300
-
300
メタドン(MTD)
-
-
300
(日臨救医誌(JJSEM)2015;18:56-9)(日救急医会誌 . 2012; 23: 842-50 )

急性薬物中毒疑いで尿検査を施行した45例で, トライエージ, インスタント・ビューを施行した結果
(日救急医会誌 . 2012; 23: 842-50)
・両者で診断能は良好.
・トライエージでは, TCAの感度が低い.

薬物中毒疑いで尿検査を施行した21例でトライエージとメディカルスタットを施行.
(日臨救医誌(JJSEM)2015;18:56-9)
・両者の一致率は91%と良好.
・両者はほぼ同等の診断能を有すると判断



検査の偽陽性, 偽陰性となるもの
・上記トライエージとインスタント・ビューを比較した試験において, 偽陽性, 偽陰性となった薬物は以下のとおり
・RSはガスクロマトグラフィーによる原因薬物の評価
(日救急医会誌 . 2012; 23: 842-50)
物質
トライエージ

インスタント・ビュー


偽陽性
偽陰性
偽陽性
偽陰性
アンフェタミン(AMP)
ゾニサミド
メタンフェタミン(mAMP)
大麻(THC)
コカイン(COC)
ベンゾジアゼピン(BZO)
ゾルピデム,
ビペリデン,
ベンゾフェノン
ノルジアゼパム,
ニトラゼパム,
クエチアピン
ゾルピデム
ビペリデン
ベンゾフェノン
バルビツール(BAR)
フェニトイン
フェノバルピタール
三環系抗うつ薬(TCA)
クロルプロマジン,
シプロヘプタジン
アモキサピン
シプロヘプタジン
ミルタザピン
フェンシクリジン(PCP)
ジフェンヒドラミン
オピオイド(OPI)
メタドン(MTD)
また, これら以外に
・アンフェタミンやメタンフェタミンは感冒薬(エフェドリンなど)や麻黄で偽陽性となる.
・オピオイドはリン酸コデイン(感冒薬含む)で偽陽性

トライエージにおける薬物別, 濃度別の感度, 特異度
急性薬物中毒の定量解析とトライエージを行なった822例の比較
(日救急医会誌 . 2014; 25: 865-73)
・定量解析にて, 陰性, 治療濃度域以下, 濃度域内, 濃度域以上に分類しトライエージの陽性率を評価した

薬剤の治療域

それぞれの血中濃度とトライエージの判定
・BZOやTCAでは治療域以上でも陰性例は多い.
・また, BZOは定量解析で陰性でも, トライエージで陽性となる(偽陽性)も多い.

薬剤別の感度, 特異度
ベンゾジアゼピン
・ベンゾジアゼピンでは全体的な特異度は低い.
・感度は良好だが, Clotilazepam, Etizolam, Nitrazepamではやや低め

バルビツレート, 三環系抗うつ薬, アンフェタミン
BARは比較的感度, 特異度は良好.
・TCAは特異度は良いが, 感度が低い. 
 特にAmoxapine, Desipramine, Imipramineでは感度は低く, これらの中毒症ではトライエージでは検出できない可能性が高い.