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2022年5月2日月曜日

成人の中耳炎

中耳炎は小児で多い疾患であり, 成人発症は少ない. 

成人例の中耳炎は, 全体の<20%程度と言われている. 


・成人で発症する場合, 二次性に耳管狭窄を生じる病態や
悪性腫瘍の関連, 自己免疫性疾患の関連を考慮する.

・成人(特に高齢者)の難治性中耳炎ではANCA関連血管炎に伴う中耳炎(OMAAV)が有名だったりする (参考: http://hospitalist-gim.blogspot.com/2017/01/anca.html)


18歳以上で滲出性中耳炎を発症した167例を前向きにフォロー.

(Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 1994;120:517-527)

・年齢は18-81歳, 平均年齢は41.5±15歳.


 男性例が99例, 女性例が68例

・Habitual sniffing(習慣性鼻すすり)は除外


滲出性中耳炎のタイプ


N(F/M)

年齢(範囲)


急性滲出性中耳炎

79(36/44)

34(18-67)

片側49, 両側30

慢性滲出性中耳炎

33(15/18)

47(35-81)

3ヶ月以上で定義片側19, 両側14

喫煙誘発性鼻咽頭リンパ過形成

8(0/8)

41(25-47)


成人発症アデノイド過形成

7(2/5)

52(40-65)


外傷後鼓室内血腫

7(1/6)

29(20-44)



・他, 気圧外傷や外科治療後, 放射線療法後,
 NGチューブ留置, 経鼻Airway/挿管, 
アレルギー性アスペルギルス, 流行性耳下腺炎, 伝染性単核球症,
 喉頭周囲膿瘍, 悪性リンパ種, Schwannoma, ANCA関連血管炎などが
其々1-3例で報告.

・成人発症でも半数異常は急性, 慢性滲出性中耳炎であり, 二次性の要素はそこまで多くはない.
 ただし, 発症年齢は3-50歳程度であり, 高齢者での中耳炎は注意が必要と考えられる.


3224例の急性中耳炎患者のうち, 15歳以上の症例500例を前向きにフォローし, 小児発症例と比較した報告
(J Am Board Fam Pract 1993;6:333-339)
・年齢別では1-14歳発症が84.4%.
 
 15-24歳発症が6.1%,
 25-44歳発症が6.9%, 
 45歳以上が2.6%

・症状の比較:
 成人発症では, 扁桃切除歴(+)が3割.
 
 難聴や咽頭痛といった症状頻度も高い
 
 発熱は1/3程度しか認めない
・改善率は, 小児例では84%.
 
15-24歳では80.6%,

 25-44歳では75.9%

 45歳以上では61.8%と
治療反応性は加齢に応じて増悪する

また, 近年 好酸球性中耳炎の報告も増加.
報告例のMetaより, 特徴をまとめると以下の通り;
・50歳前後の中年で, 喘息や鼻ポリープを伴うことが多い.
・診断は滲出性中耳炎や慢性中耳炎で, 好酸球有意の液体貯留を認め, さらに以下の2項目を満たす;
 気管支喘息, 鼻ポリープ, 粘性の中耳液体貯留, 通常の治療への反応が不良
・治療は鼓室内ステロイド投与, チューブの挿入, 全身性ステロイド, 喘息に準じた生物製剤の使用など
・慢性化, 再発性の経過もある.
(Acta Otolaryngol. 2021 Jun;141(6):579-587. doi: 10.1080/00016489.2021.1901985.)