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2022年5月18日水曜日

ブドウ球菌菌血症における感染性心内膜炎を予測(除外)するスコア

(Clinical Infectious Diseases® 2022;74(8):1442–9)

黄色ブドウ球菌菌血症(SAB)の10-20%で心内膜炎を合併するため, SAB症例では心エコー(特に経食道)による評価は重要である.

・
IEの合併を予測する, 除外するスコアとして, 
POSITIVE, PREDICT, VIRSTAスコアがある.


・どのスコアも血液培養の陽性が含まれているが,


 POSITIVEでは陽性までの時間


 他2つは治療開始後フォローの陽性が含まれる.

・また, 心疾患の既往やデバイス, 塞栓症状, 感染の状況が重要

 感染の状況: IV drug use, 院内や施設内感染.


オランダの7施設において, 成人例のSAB症例を前向きにフォローし, 上記3つのスコアとIEリスクを評価.

・複数回のSABを繰り返している患者は, 初回の1回のみを導入


 48h以内に死亡した症例は除外された

・SAB患者は90日間フォローされ, IE合併を判断


2017年〜2019年に対象SAB 637例を診断.
このうち77%(491例)で同意をとり導入.

・さらに14例は48時間以内に死亡し, 477例で評価された.

・IEの合併は87例で診断(18.2%)
 

 63例は2 major, 24例は1 major + ≥3 minorを満たす


 外科的, 病理で確定された症例は17例


 Native valve 53例, 人口弁 20例, 埋め込み型デバイス 14例


各スコアの感度, 特異度

・カットオフはPOSITVE >4, PREDICT ≥2, VIRSTA ≥3

・特異度はどの指標も不十分.


 感度はVIRSTAが最も良好で, この患者群におけるNPVは99.3%


 他の指標ではNPV 92.5%, 94.5%と5%以上でIEを逃す

・PREDICT Day 1は早期にTEEを行う患者群を抽出する指標として使用可能. PPV 66.7%.


まとめるとSABにおいて,

・心臓内デバイスがある場合


 塞栓症状/所見, 

 感染播種(髄膜炎)がある場合


 心疾患やIE既往がある場合 は早期にTEEを行うべき

・院内や施設発症のSAB, IV drug useでのSABでは,
 血液培養の陽性のタイミングや治療開始後の持続的血液培養陽性(48-72h)での結果を見てTEEを考慮.

・そういったリスクがない場合(特にVIRSTA <3)では, 
IEリスクは低く, TTEで代用, また菌血症としての治療が考慮される.
(TEEが可能な施設や患者の状態がゆるせばTEEが優先されるでしょうが)