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2021年8月17日火曜日

好塩基球の増多を見た時のアセスメント

 症例: 特に既往のない中年女性

 2ヶ月前より手指の関節痛を自覚し, RAを疑われ紹介.

 軽度の手関節腫脹, 疼痛と一部PIP関節の腫脹、同部位のエコーでの滑膜肥厚を認め, RAでも矛盾しない所見であった.

 血液検査では, ACPAは弱陽性.

 それ以外にWBC 13000程度の上昇, Neu 80%, 好塩基球 7%(絶対数910)と好塩基球の上昇が目立った.

 その1ヶ月後のフォローでも同様に好塩基球 1040程度と上昇が持続していたため, ある疾患を疑った. 

 ある疾患 → 関節炎症状 or 合併か. それはちょっと判別が難しいが・・・

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好塩基球増多: Basophilia

・好塩基球は免疫に関連(初期の悪性腫瘍を破壊する作用)や創傷の修復,


 またヒスタミンといったメディエーターを放出し, アレルギー反応に関わる.

・末梢血白血球のうち, 0.5%程度と少なく, 多くても1000/µL以下, 1%を超えない程度.

・好塩基球の分化にはいくつかのCytokineが関連している.

 
最も関連性が高いのはIL-3であり, 分化や成熟, 活性化に関連.


 他はGM-CSF, IL-5, TFG-β, TSLPの関連がわかっている


好塩基球の増多は, 日常で出会う機会が少ない血液検査異常.


臨床医の経験も少なく, どの疾患が好塩基球の増多に関連するかも不明確である.

・一部の慢性経過の血液腫瘍ではBasophiliaを伴うことはよく知られている;

 
 CMLやPV, HTなどMPNが多い. 

・特に, >1000/µLが8wk以上持続するような慢性の高度上昇例ではCMLを強く疑う

(Int J Lab Hematol. 2020;42:237–245.)


好塩基増多を来す疾患

・CMLなど血液腫瘍との関連は比較的知られているものの,
 他の良性疾患との関連は不明確.

・症例報告のReviewより, 
Basophiliaの報告がある疾患を調査

(Int J Lab Hematol. 2020;42:237–245.)

・多いのは検査エラーや検査関連


・良性疾患ではアトピー, IDA, DKA

・関連不明がTB, 肝硬変など

悪性腫瘍関連では,

 CML, 骨髄線維症, AML, 慢性/急性好塩基球性白血病

 相対的に増加する疾患では,
PV, ET, PMFなどMPN. MDS, CML, リンパ腫.


Mayo clinicにおいて, 2014-2018年にBCR-ABLを評価した
白血球増多と好塩基球増多症例をReview

(Am J Hematol. 2020;95:E216–E254.)

・すでにCMLの診断がされている症例は除外.


 白血球増多は≥9700/µL, 好塩基球増多は≥90/µLで定義

・患者は382例. 白血球数 16100[範囲9700-746500], 好塩基球は200[範囲90-54500]

・骨髄悪性腫瘍は191例で, 最も多いものはCMLで104例. 
 

 他にET, PV, PMFが多くを占める.

・反応性が191例. 腫瘍に随伴するものが20例(ALL, CLL, 固形腫瘍など),
 

 他に喫煙, ステロイド, 感染症, 自己免疫など
 

 特発性が121例と, 原因不明が多くを占める.


・骨髄系腫瘍症例は, それ以外の症例と比較して有意に好塩基球数が高い; 
4100 vs 140/µL, p<0.01

・好塩基球数≥480/µLであった症例では全例骨髄系腫瘍であった.

 
≥400/µLは感度67.5%[60.4-74.1], 特異度99.0%[96.3-99.9]


好塩基球増多の診療フローチャート

(Int J Lab Hematol. 2020;42:237–245.)

・まずスメアやフローサイトで
検査関連の偽性Basophiliaを除外.

・次に反応性(アレルギー関連), 腫瘍性の可能性を評価.


 慢性的に増加, Basophil単独上昇,
>1000/µLとなる場合や, 腫瘍を疑う兆候があればCMLを評価(BCR-ABL)


 そして他のMPNを評価(JAK2や骨髄所見)

(Leukemia. 2017 April 01; 31(4): 788–797.)



反応性の上昇

(Leukemia. 2017 April 01; 31(4): 788–797.)

・アレルギー性疾患では軽度の好塩基球の上昇が認められることがある.

・通常 1000/µLを超えるような高度上昇は認めないが,
 一部の患者において, T細胞関連サイトカイン(IL-3など)が増加する場合,
 高度上昇が認められる. 


 この場合は好酸球増多を伴うことが多い

・反応性ではアレルギー反応が改善すれば血球も一過性で改善する


CMLとBasophilia

・BasophiliaはCMLで最も多い末梢血異常所見.

・CMLの初期にBasophiliaが単独で, 長期間認められた報告もある.


 症例報告では, 27ヶ月にわたってBasophilia単独で経過した80歳男性の報告がある(Intern Med 50: 501-502, 2011)

・慢性期では, Basophilia以外にPLT上昇, 白血球上昇, 好酸球増多など他の異常を伴うことも多いが, 貧血は稀.

・Basophiliaの程度は様々であるが, >1000/µLとなる場合は強くCMLを疑う

・また, CMLにおいて末梢血Basophilが多いほど,  病勢が強い/予後不良となることが指摘されており, >20%はCMLのaccelerated phaseの定義の一つとなっている


Basophilic leukemia

(Leukemia. 2017 April 01; 31(4): 788–797.)

・Basophilic leukemiaは非常に稀な病態であり,
 通常BCR-ABL1+ CMLなどのMPNを背景として発症する.

・末梢血好塩基球が≥40%に上昇し, 
且つ好塩基球の形態が未熟, クローン性に増殖されていることが診断に必要.


 また, 骨髄系の腫瘍を背景とする場合は続発性好塩基性白血病とされる.

 例えば, ALLに罹患しており, 末梢血好塩基球が50%でも,
 好塩基球がクローン性ではないならばALL-baso(好塩基球増多を伴うALL)となる

 CMLのリンパ芽球期で, 好塩基球が50%となった場合は続発性好塩基性白血病を伴うリンパ芽球期CMLとされる.


また, Basophilic leukemiaは急性/慢性, 原発性/続発性に分類.

・芽球≥20%が急性, <20%が慢性

・背景に骨髄系腫瘍が
あれば続発性, 
なければ原発性


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というわけで, ある疾患 = CMLかなぁ、と。