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2018年5月18日金曜日

複数弁の心内膜炎 と S. bovis心内膜炎

大腸癌がある患者で大動脈弁と僧帽弁に疣贅が認められた.
複数弁の心内膜炎を疑ったが, 複数弁の心内膜炎ってあまり経験がない.
いろいろ調べてみよう.

複数弁の心内膜炎 = Multivalvular Endocarditisについて
複数の弁(主に2箇所)で生じるIEMultivalvular Endocarditisと呼び, 心内膜炎の15%で認められる.
・Left-sided(M弁とA)ではA弁の心内膜炎がM弁に波及するパターンがほとんど.
 他にはRight-sided, Left-sidedの合併するケースもある.
単一弁の心内膜炎よりも重度で, 心不全合併率も高いとされる
 また手術治療を必要とするケースが多く, 手技も複雑となる
(Curr Infect Dis Rep (2010) 12:237–243)

フランスのNancy大学病院において, 10年間で治療したIE症例300(Duke基準で診断)のうち, 42(14%)Multivalvular
また, 他の511例のIE症例の解析では, 88(17%)Multivalvularであった.
(Curr Infect Dis Rep (2010) 12:237–243)


単一弁と複数弁のIE症例の比較
・年齢や性別には差はない.
部位はM弁+A弁が7-8割を占める
・背景心疾患も大きな差はない.


診療症状, エコー所見
・心不全合併率や心外症状は複数弁IEで若干多め
・エコー所見も若干複数弁IEで疣贅は目立ち, 逆流も多い


Multivalvularでレンサ球菌, 特にD群レンサ球菌が多い
・Staphylococciや口腔内レンサ球菌は少ない
D群レンサ球菌: Enterococcus faecalis, faeciium, durans, Streptococcus bovis

S. bovisとEnterococcusによるIEを比較
1988-2014年に診断されたS. bovisによるIE 109例とEnterococcusによるIE 36例を評価比較した報告.
・S. bovis菌血症の48.8%IEを合併特にS. gallolyticus
 Enterococcus菌血症では3.4%IEを合併
MultivalvularS. bovis IE28.4%で認められる.
 Enterococcusでは5.6%のみ
症状の期間は30-50日以上

大腸腫瘍はS. bovis64.2%, Enterococcus25%で認められる


ということでMultivalvularはD群レンサ球菌でも, さらにS. bovisで特に多いと言える

S. bovisによるIEといえば, 大腸癌に起因する原因菌として有名
ここでS. bovisと悪性腫瘍について調べてみる

45例のS bovis 菌血症例の解析
(Arch Surg. 2004;139:760-765)
・内12(27%)で心内膜炎を合併.
腫瘍は26/45(58%).
 大腸腺腫性ポリープ14, 浸潤性大腸癌3, 十二指腸腺癌1膵癌3, 胆嚢癌1, 肺癌1, 卵巣癌1, CML 1, CLL 1.
消化管外の悪性腫瘍も多く認められる.
現在までの症例報告をまとめるとS bovis菌血症患者における大腸腫瘍の合併率は6-71%.
 >> 原則全例で下部内視鏡評価が推奨される.
 また, 下部内視鏡陰性でも, 他部位の悪性腫瘍合併の可能性も残る.

S. bovis菌血症, IE患者の症例レポート, シリーズのMetaでは,
(Clinical Infectious Diseases 2011;53(9):870–878)
・S. bovis菌血症患者のうち, 大腸腺腫, 腫瘍を認める割合は39%[IQR24%]
 S. bovis菌血症 + 大腸精査施行群で限定すると, 60%[IQR22%]と高率.
 大腸癌合併率は18%[IQR13%], 腺腫合併率は43%[IQR22%].

また, S. bovisには3種類あり, S. gallolyticusはより大腸病変, IEとの関連が強い.
・S. bovisには3種類のbiotypeがある; I, II/1, II/2.
S. bovis type I(S. gallolyticus)type IIよりも大腸病変との関連性が高い
type IIと比較して, 大腸癌, 腺腫のリスク OR 7.26[3.94-13.36]
 感染性心内膜炎合併リスク OR 16.61[8.85-31.16].

S bovis菌血症 or IE, CF試行した98名と無症候性で大腸癌家族歴(+) or 症状, リスク(+)Control群を比較.

(Clinical Infectious Diseases 2012;55(4):491–96)
・S bovisS gallolyticus (type I)のみ.
・S bovis感染症98名中, 大腸病変を認めたのは69.(Adenoma 57(進行性39), 進行癌 12)

ということで, S. bovisと大腸腫瘍には関連はありそうである.

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まとめると
・複数弁のIEではD群レンサ球菌が多い.
 特にS. bovisは原因菌として多いので覚えておきたい. S. gallolyticusが関連している
・さらにS. bovisは大腸腫瘍や悪性腫瘍との関連がある.

ということで冒頭の症例は結構典型的なS. bovisによるIEなのかもしれない.
稀な病態の典型例といえようか

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