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2018年2月13日火曜日

慢性肺アスペルギルス症

慢性肺アスペルギルス症: Chronic Pulmonary Aspergillosis(CPA)

まず, 肺アスペルギルス症のスペクトラムから.
 研修医時分, 全体像がつかめず, 挫折した経験があります.

(Clin Chest Med 30 (2009) 315–335)
・基本的に免疫が正常な患者では, アスペルギルスが呼吸器にいても無症候
・肺に空洞がある患者では, その空洞部にAspergillomaを形成する. これは特に増悪せず, 基本経過観察, 対症療法となる.
・慢性肺疾患や軽度の免疫不全がある場合, 新規空洞病変が出現したり, 線維化病変, 結節, 浸潤影が生じ, 慢性経過で進行する. CCPA, CFPA, CNPAなど(後述).
 肺アスペルギローマと上記病態を合わせて慢性肺アスペルギルス症(CPA)とする. 一部では肺アスペルギローマはCPAに含まないとする意見もあり.

・免疫不全患者ではアスペルギルスの肺実質への浸潤や他臓器への浸潤を比較的急性経過(1ヶ月以内)で生じる. これを侵襲性アスペルギルス症と呼ぶ.
 侵襲性アスペルギルス症は主に気管支侵襲タイプと血管侵襲タイプに分類.

慢性肺アスペルギルス症: CPA
・CPAは主に以下の病態を含む
 肺アスペルギローマ: Fungus ballのみで, 3ヶ月以上進行せず安定している病態.
 CCPA(Chronic Cavitary Pulmonary Aspergillosis): 複数の空洞性病変を生じ, 進行する
 CFPA(Chronic Fibrosing Pulmonary Aspergillosis): CCPAが進行し, 肺線維化をきたす
 CNPA(Chronic Necrotizing Pulmonary Aspergillosis): 空洞病変と肺実質に進展し, 実質病変を形成する. 侵襲性アスペルギルス症との違いは1-3ヶ月の経過で進行する点と, 血管浸潤や他臓器への播種を認めない点.
 CNPAは侵襲性アスペルギルスに準じて対応, 治療を考慮する.
(Emerging Microbes and Infections (2016) 5, e37)(CHEST1997;12:541-48)

CPAの診断基準
 
(SAIAはCNPAと同じと考えて良い)
(Eur Respir J 2016; 47: 45–68)

CPAの全体像シェーマ

中国におけるCPA患者69例の解析
(Medicine (2017) 96:42(e8315))
・このうち10例がCCPA, 15例がSami-invasive aspergillosis(SAIA)
 41例が単純アスペルギローマ, 3例がアスペルギルス結節と診断.
・各疾患の背景, 免疫状態
・症状, 検査所見
・画像所見

CNPACCPAの臨床所見を比較した報告
・CNPA確定例 7, CNPA疑い例 5, CCPA 8肺アスペルギローマ 7例を比較.
・Group Aは元々空洞性病変が無い患者において,  新規空洞病変が出現した病態
 肺実質への糸状菌の浸潤は認めないがCNPA様と考える(CNPA疑い).

CNPAでは呼吸器症状に加えて発熱や体重減少が多い
BMIも最も低い.
 >> 全身症状が顕著と言える


CNPAについてのCohortを調べてみると,

CNPAの背景疾患
59例の解析
肺病変 78% 全身疾患 64%
COPD 39 ステロイド使用 25
間質性肺疾患 15 アルコール 10
Mycobacterium 12 関節リウマチ 7
喘息(ABPA含む) 5 強直性脊椎炎 7
胸部手術 3 化学療法/放射線療法 4
毒素暴露 1 糖尿病 4
インフルエンザ 1 レイノー症候群 4
Carcinoid 1 Debilitation 2
肺炎 1 慢性肉芽腫性疾患 1


リスクファクター無し 9%
%がない数字は実数.
(CHEST1997;12:541-48)

43例の解析(CNPA)
特徴

年齢 60[45-65]
男性 79%
BMI 17.5[15.1-19.6]
肺基礎疾患 95%
 Mycobacterial disの既往 93%
 胸部外科手術の既往 21%
 COPD 14%
 気胸の既往 7%
 Pneumoconiosis 2%
 IPF 2%
全身性疾患 40%
 ステロイド使用歴 19%
 糖尿病 12%
 慢性肝疾患 9%
 膠原病 7%
 悪性腫瘍 5%
(International Journal of Infectious Diseases 14 (2010) e479–e482)

CNPAの臨床症状
症状

呼吸苦 7%
血痰 7%
胸痛 25%
喀痰 44%
咳嗽 56%
体重減少 64%
発熱 68%
3つ以上の症状 76%
>1の症状 93%
・血痰は7%のみ. 咳嗽などの呼吸器症状は半数程度.
 それよりも体重減少や発熱など全身症状の割合が多い.
(CHEST1997;12:541-48)

CT所見(43例の解析)
胸部CT

空洞病変 100%
肺実質のConsolidation 84%
胸膜肥厚 81%
Fungus ball(mycetoma) 49%
気管支拡張 37%
肺気管支瘻 19%
肺気腫 14%
(International Journal of Infectious Diseases 14 (2010) e479–e482)

他には
・喀痰のアスペルギルス培養陽性率は81%
・CRPは7.4mg/dL[3.0-13.0]
・ESRは82mm/h[52-112]
(International Journal of Infectious Diseases 14 (2010) e479–e482)

・ガラクトマンナン抗原の値(Index)と感度, 特異度:
 >0.5: 感度 63.4%, 特異度 68.6%
 >1.0: 感度 37.3%, 特異度 91.0%
 >1.5: 感度 28.6%, 特異度 95.5%
(日呼吸会誌 47(1):7-11,2009.)
 診断には有用なものの, カットオフに注意

・β-D-グルカンのカットオフ(pg/mL)と感度, 特異度
 >5.0: 感度 36.9%, 特異度 52.7%
 >10.0: 感度 11.3%, 特異度 75.7%
 >15.0: 感度 4.3%, 特異度 85.3%
 >20.0: 感度 4.3%, 特異度 90.9%
(日呼吸会誌 47(1):7-11,2009.)
 あまり診断には有用ではない印象.

慢性肺アスペルギルス症を疑った際の検査
(ERS, ESCMIDガイドラインより Eur Respir J 2016; 47: 45–68 )
空洞性病変, 結節を認めた免疫正常患者群における検査の推奨
・気管分泌物の評価
有用な検査は直接的な菌体の証明(鏡検や培養).

・BALや血清の抗原検査
抗原検査は行うならばBALで行うべき

・抗体検査
抗体検査ではアスペルギルスIgGや沈降抗体を

慢性肺アスペルギルス症の内科的治療
・肺アスペルギローマは無症候性ならば経過観察も可.

CNPAは侵襲性アスペルギルス症に準じて治療を考慮する
 >>1st choice ボリコナゾール 6mg/kg q12hで24時間投与し, その後は4mg/kg q12hで継続.
  経口に切替時は200mg q12h. 投与期間は決まっていない. 改善するまで.
・3ヶ月以上継続しても改善率は58%のみであり, 長期的な継続投与が必要となる可能性が高い(International Journal of Infectious Diseases 14 (2010) e479–e482)
(Clinical Infectious Diseases 2008;46:327–60 )

CNPA以外のCPAでは抗真菌薬の経口投与を考慮する.
使用する抗真菌薬はトリアゾール系で, イトラコナゾール, ボリコナゾールが選択される.
・CCPAでは症状の緩和や致命的な喀血リスクの軽減効果が期待できる
CFPACCPAが進行した病態であり, トリアゾール系の使用で患者の全身状態の改善は見込めるが, 呼吸機能に対しては余り効果は見込めない.
・投与期間は基本的に4-6ヶ月程度は継続. 治療中に増悪する場合は他の治療を考慮.
 また, 効果が不十分な場合は9ヶ月程度まで伸ばすことも考慮する
 再発も多いため, フォローも重要
(Eur Respir J 2016; 47: 45–68 )

経口トリアゾール系薬剤に不応, 継続できない場合は経静脈投与を考慮する.
 ミカファンギン, アムホテリシンBなど
 ミカファンギンIVとボリコナゾールIV 2-4wkで同等の効果が期待できる(Journal of Infection (2010) 61, 410-418)
内科的治療のフォローアップは治療開始後3-6ヶ月毎に胸部CTのフォローを行う
 画像所見の変化は緩徐で, 3ヶ月未満ではほぼ変わらない可能性が高い.
 また, 臨床症状が変化した際は適宜評価を行う
 フォローのポイントは胸膜や空洞壁肥厚の評価が重要(後述)

局所治療
 抗真菌薬の全身投与でも効果が不十分な場合空洞への直接的な抗真菌薬投与が効果的である可能性がある. 短期的反応率は70-100%
 使用する場合は系気管支鏡的, もしくは経皮的穿刺にてドレーンを患部に留置し, AmpB 50mg5%TZ20mLに溶解して注入する.
 また, 重度の喀血において, 外科的治療の適応とはならない場合には気管支鏡は良い選択

外科的治療の適応
 単一の肺アスペルギローマでは再発や再出血リスクは低く切除の良い適応となる.
 一方でCCPAでは再発も多く, 治療に不応性の症例で考慮する.
 重度の喀血患者では全例手術治療を考慮すべき
 塞栓術で止血するのもよい方法だが, それのみで止血するのは難しい

慢性肺アスペルギルス症の画像フォローのポイント
・36例の慢性肺アスペルギルス症患者において治療経過と画像所見の相関性をフォロー.
評価者は2名のRadiologist, 臨床経過はBlindした状態で評価.
画像は治療開始後6ヶ月の時点で評価している.
C: 臨床経過, R: 画像所見
+:
改善傾向, 安定, -: 増悪傾向

・胸膜肥厚所見と空洞壁肥厚所見は臨床所見との相関性が高い
・Fungus ballのサイズや空洞性病変のサイズ変化はあまり有用ではない.
 (小さくなれば効果は良好といえるが, あまり大きな変化がない患者が多い)

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