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2017年4月4日火曜日

高齢者における潜在性甲状腺機能低下症の治療

潜在性甲状腺機能低下症 Subclinical hypothyroid(SCH)についてはこちらを参照

甲状腺 Subclinical hypothyroidism


長いのでまとめると,
・Subclinical hypothyroidはCHDリスクを上昇させる可能性がある.
 ただし, 全体の死亡は両者で有意差無し.
 ただしそれは若年者(<65yr)でのSubclinical hypothyroidで顕著.
 高齢者では有意差が出ない可能性が高い.
・Subclinical hypothyroidismに対してチラーヂンを投与した群と経過観察の群での比較Studyは未だ無く, Subclinical hypothyroidを治療すべきか or NOTの判断はExpert opinion.
 (Subclinical hypo = 基礎疾患がある, 高齢者が多い ため,  CHDが増加しているだけの可能性は否定できていない.)
・65歳以上でTSH≥10の群では拡張障害、心不全リスクが上昇する. 特にThyroxin投与がない群でよりリスクが上昇している
・コホートでは>70歳のSCHではチラーヂン投与による予後改善効果は認められず, <65-70歳では考慮しても良いかもしれない.

ということが書いてあります.

今回NEJMより65歳以上のSCHに対するチラーヂンの効果を評価した初めてのDB-RCTが発表
(Thyroid Hormone Therapy for Older Adults with Subclinical Hypothyroidism. NEJM 2017)
TRUST trial: 65歳以上のSubclinical hypothyroidism(TSH 4.60-19.99mIU/L, FT4正常)を対象としたDB-RCT.
・上記数値が3ヶ月3年あけて評価し, 持続している患者が対象
Levothyroxine 50µg/d(体重50kg未満やACS既往がある場合は25µg/d)で開始し, TSH正常範囲となるように調節群 vs. Placebo群に割付け, 1年間継続.
甲状腺機能低下に関連する症状をスコア化して評価.
 Thyroid-Related Quality-of-Life Patient-Reported Outocme measure Hypothyroid Symptoms score, Tiredness score.

母集団

アウトカム(症状のスコア)
12ヶ月, 24ヶ月[18-30]のフォローにおいて甲状腺機能低下に関連する症状は両者で有意差を認めない.

アウトカム(合併症, 副作用)
・心血管系イベントリスクは両者で有意差を認めない結果.
・心不全や不整脈リスクも有意差なし

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潜在性甲状腺機能低下症については, 明確なRCTがなく, コホートで「心疾患イベントリスク上昇がある」という結果が強調され、「じゃあ治療した方が良いだろう」という結論になっている点について、個人的に違和感をずっと感じている.

自分はこのような患者でチラーヂンを安易に追加するのは懐疑的に考えており, 少なくとも数カ月以上はフォローしつつ考えるようにはしています.

今回のRCTは価値があると思いますが、フォローが1年間なので、長期的な心血管リスクがどうなるかというのは興味があるところです. 今後のフォロー結果に注目したい.