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2016年11月9日水曜日

インフルワクチンは皮下注より筋注で

ワクチンは基本的に皮下注射を行うが, 筋注することで局所の発赤や疼痛のリスクが軽減する. また, ワクチンの効果自体は皮下注と筋注では変わらない.

Advisory Committee on Immunization Practice(ACIP)はインフルエンザワクチン(TIV)は筋注で使用するように推奨している.
(MMWR Recomm Rep. 2010 Aug 6;59(RR-8):1-62.)

20-40歳の日本人健常者へWhole-virion influenza A(H5N1, NIBGR-14)ワクチンをIM, SCで投与した報告では,
(Microbiol Immunol 2010; 54: 81–88)
・IMの方が血清学的反応率は良好であり, さらに副反応の頻度は少ない結果であった.

ワクチン投与後のSeroconversion, Seropositivityの割合

副反応頻度

IM
SC
疼痛
35%
37%
発赤
25%
67%
腫脹
7%
23%
硬結
2%
3%
そう痒感
2%
18%
発熱
8%
5%
頭痛
18%
17%
不快感
20%
30%
悪寒
7%
10%
下痢
7%
7%
・筋注の方が局所症状が少ない

65歳以上の高齢者, 55歳以上の慢性呼吸器疾患, 心疾患, 腎疾患, DM, 担癌患者, 免疫不全患者でインフルエンザワクチンを投与する720例を対象としたRCT
(Vaccine 24 (2006) 2395–2402)
・ワクチン投与経路をIM群 vs SC群に割り付け, 効果と副反応を比較
・IMでは男性全例と女性でBMI<35の群では23G 25mm針を使用, 女性でBMI≥35では23G 32mmの針を使用し, 三角筋に90度の角度で穿刺
・SCでは全例23G 25mm針を使用
・ワクチンの効果は接種前, 接種28-31日後の血清を評価し, ワクチン株に対する抗体を評価(haemagglutination inhibition)

副反応の頻度
・圧痛や発赤, 腫脹は有意にIM群で少ない結果
・全身性副反応は有意差はない(筋肉痛を除く)

ワクチンによる抗体産生はIM群で高い結果

インフルエンザワクチンは皮下注射よりも筋注の方が局所の障害頻度は少なく済む
効果は同等か, 筋注の方がむしろ良い可能性がある.

他のワクチンではどうなのだろうか?

VZVのワクチン(Zostavax®)での評価.
50歳以上の354例において, IM投与群 vs SC投与群に割り付け, 比較したRCT.
(Vaccine 33 (2015) 789–795)
・投与前後(投与後4wk)の抗体価(geometric mean titers), 副反応頻度を比較.

GMTは両者で同じ程度上昇を認めている.

局所反応はIMで有意に少ない.
発赤, 疼痛, 腫脹の頻度が低下する

12-18ヶ月の小児でのMMRワクチンとVaricellaワクチン(VARIVAS®)の投与において, IM群 vs SC群に割り付け比較
(BMC Medicine 2009, 7:16)
・ワクチンによる抗体誘発効果は両群で有意差は認められず.
・局所の副反応はIM群で少ない傾向が認められた.

高齢者における23価肺炎球菌ワクチンでの比較
(Vaccine 25 (2007) 4767–4774)
・患者は60歳以上か, 55歳以上で慢性呼吸器疾患, 心疾患, 腎疾患, DM, 担癌患者, 免疫不全を有する患者群 254例を対象
・肺炎球菌ワクチンをIM投与群 vs SC投与群に割り付け, 比較した.

ワクチンの効果の比較: PPS 3,4,6のIgGが2倍以上上昇もしくは1µg/mL以上上昇した割合で評価
双方とも効果に変わりはない

局所症状はIM群で優位に少ない結果
・特に女性で少ない.
・男性ではSCでもそもそも局所反応が少ない.
・SCは局所反応リスク上昇因子となる: OR 3.2[1.1-9.1]

全身性反応は有意差なし

ということで, ワクチンは筋注の方が局所反応が少ない.

ところでワクチンを筋注するには三角筋を穿刺することが多いが, どの程度の長さの針を使用すべきか?

65歳以上の患者群において, 三角筋部の皮下組織厚をエコーで評価
(Vaccine 24 (2006) 937–940)
・男性ならば25mm長の針で筋層に到達可能.
・女性でもそれで可能だが, BMI≥35ではさらに長いものを使用する方が良い


抗凝固中の患者では筋注は可能?
スペインにおける多施設研究. 抗凝固療法中でインフルエンザワクチンを予定している229例を対象としたRCT.
(BMC Blood Disorders 2008, 8:1)
・筋注群(129) vs 皮下注群(100)に割り付け, 合併症リスクを比較した.

・腕周囲長の変化は両群で有意差なし.
・局所反応はむしろIM群で有意に低い結果.
・抗凝固療法中患者へのIMは血腫形成リスクにもならない

IM群における, INR値別の合併症頻度

INR <2.5と≥2.5で腫脹や疼痛リスクに差はない
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ワクチンの多くは添付文章において皮下注射が推奨されているが, 筋注の方が局所反応は少なく, 効果は同等以上が期待できる.
筋注は抗凝固療法中の患者でお安全に施行可能である. ただし注意は必要.

私は毎年自分にインフルワクチンを打つ時は筋注にしています

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