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2015年3月5日木曜日

過換気誘発による眼振の評価

過換気誘発による眼振の評価 (Hyperventilation-induced nystagmus: HIN)

過換気では血液pHの上昇とイオン化Caの低下を誘発
 これにより小脳, 内耳の血流の低下と,  Hb−酸素解離曲線が左方に移動し, 組織酸素濃度の低下が起こる
 また, 中耳と頭蓋内圧の低下も誘発する
 従って中枢性病変がある場合に眼振が誘発されやすい
 過換気誘発性眼振は注視により容易に抑制されるため, フレンツェルメガネやvideo-oculographyを使用して評価する.
(Acta Otorinolaryngologica Italica 2011;31:17-26)

HINの誘発方法: 過換気は70秒間、深く早い呼吸を促す
 眼振は過換気終了から1分以内に緩徐相が5度/秒以上の速さの眼球運動が5秒以上生じる場合に定義
急性前庭神経炎のHINの評価は
 誘発なし, 非誘発時の眼振と変わりなし >> 陰性
 非誘発時の眼振が増強 >> Paretic pattern(麻痺性パターン)
 非誘発時の眼振が抑制 >> Excitatory pattern(興奮性パターン)
 非誘発時の眼振が反対方向性へ >> Strongly excitatory pattern
 麻痺性パターンは中枢の代償機能を抑制することで生じる.
 麻痺性パターンは長期間認められ、数カ月〜数年持続すこともある
 興奮性パターンは過換気より末梢神経の興奮性が上昇することで生じる. 急性期で多く, 発症20日程度で消失し, 麻痺性パターンとなる.
聴神経腫のHINの評価は
 眼振の誘発なし >> 陰性
 急速相が患側 >> Excitatory pattern
 急速相が健側 >> Paretic pattern
 急速相が初期には健側、その後30−40秒後に患側 >> Biphasic pattern
(Curr Opin Otolaryngol Head Neck Surg 2013, 21:487 – 491 )


各疾患におけるHIN陽性率 (Acta Otorinolaryngologica Italica 2011;31:17-26)
疾患
陽性率
疾患
陽性率
術前聴神経腫
11/12(91.7%)
代償性前庭神経炎
33/89(37.1%)
術後聴神経腫
7/9(77.8%)
両側性前庭神経障害
1/5(20%)
多発性硬化症
9/12(75%)
片頭痛関連めまい
36/188(19.1%)
小脳疾患
9/11(72.7%)
血管性めまい症
27/152(17.8%)
急性前庭神経炎
39/54(72.2%)
BPPV
24/455(5.3%)
神経血管圧迫
3/5(60%)
Chronic subjective dizziness
0/23
迷路瘻, SCDS
11/20(55%)
未診断のめまい
19/74(25.7%)
メニエル病
35/93(37.6%)
全体
263/1202(21.9%)

橋小脳角腫瘍性病変 33例と片側末梢性前庭神経障害 145例(発症7d以内が47例)でHINを評価. (Neurology® 2007;69:1050–1059 )
 橋小脳角腫瘍は聴神経腫 23, 髄膜腫 7, epidermoid cyst 2,  Jugular foramen schwannoma 1例.
 HINは暗くした部屋で, 座位の状態で1秒に1回の深呼吸を30秒行い、その後 1分間評価する(video-oculographyを使用).
 橋小脳角の腫瘍ではHIN陽性が82%
 一方で片側性前庭神経障害では34%. 
 特に慢性の前庭神経障害ではHINは1%のみであり, 慢性のめまい, 難聴において末梢性か中枢性かの評価にHINは使用できる。
聴神経腫 49例と, 片側性感音性難聴 53例でHINを評価 (Eur Arch Otorhinolaryngol. 2013 Jul;270(7):2007-11.)
 HINは感度65.3%、特異度98.1%で両者の鑑別に有用であり, カロリックテスト, Auditory brainstem responseよりも診断能は良好
聴神経腫 45例, 慢性前庭神経炎 30例, 健常人20例で評価 (Otol Neurotol. 2015 Feb;36(2):303-6.)
 聴神経腫では88.9%で陽性, 慢性前庭神経炎では40%で陽性, 健常人では陽性者なし.
HIN陽性ならば聴神経腫を疑うが, なくても否定は困難であるし, 末梢性でも出現するためベッドサイドで明確に区別することは難しい。
HINがあれば迷わずMRIをチェックということはわかった。


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