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2023年9月23日土曜日

心房細動に対する抗凝固療法についての2つの論文 2023/9月

 2023年9月(ごろ)にでました心房細動における抗凝固療法の重要な論文2つ.


1つめ: Frailの高齢者でWarfarin→DOACとすると, 出血のみ増える

(Circulation. 2023 Aug 27. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.123.066485.)

FRAIL-AF: Warfarinを使用中の75歳以上のAf患者で, 且つFrailを認める(Groningen Frailty Indicator score ≥3)患者群1330例を対象とし, 

・Warfarinを継続する群と, DOACへ変更する群に割り付け比較したOpen-label RCT

・GFR<30mL/min/1.73m2とValvular Af群は除外

・12ヶ月間継続し, 塞栓症リスク, 出血リスクを比較した.

・DOAC切替群は当初INR <2.0で切り替えていたが, その場合切替直後の出血が増加したため, その後(DOAC群102例導入後)はINR<1.3で切替とした.


母集団


アウトカム

・DOAC切替群で有意に出血リスクが増加したため, Studyは終了

・Major bleedingは有意差なし. CRNMの上昇が主.

・塞栓症イベントは有意差なし.


増加する出血は

・皮膚, 消化管, 泌尿生殖器系

・特に消化管はMajor bleedingも目立つ.


感想

・やっぱり腎機能も不安定なフレイル高齢者でDOACは正直怖いですよね.

 DOACはワルファリンと比べて出血リスクは低いという話ですが, 結局消化管については差はないし, こういうところで悪く出ちゃうのは想像に難くないよね.


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2つめ: 無症候性のAfでの抗凝固ってどうするのか?

(N Engl J Med. 2023 Aug 25. doi: 10.1056/NEJMoa2303062.)

・埋め込み型デバイスや, 経皮型デバイスにより検出されたAf症例をAHREs(atrial high-rate episodes)またはSubclinical Afと呼ぶ.

・この場合の抗凝固療法の適応は定まったものはないが, 24h以上持続するような症例や, Strokeのリスクがある症例では抗凝固療法を推奨する意見がある.


NOAH-AFNET 6: 高齢者におけるAHREsに対するNOAC(Edoxaban)を評価したDB-RCT.

・患者は65歳以上で, 埋め込み型デバイスによりAHREsが検出され, 今までECGでAfと診断されたことがない患者群. 

・AHREsは≥170/minの心房拍動が6分以上持続する症例で定義

・さらに1つ以上のStrokeリスクを有する患者(CHA2DS2+V)(参考はこちら)

・除外項目: ECGでAfが記録されている患者, 30日以内のACS, PCI, CABGの病歴, 余命が12ヶ月未満, 抗凝固薬が禁忌, DAPTが適応となる症例, 他に抗凝固療法が必要とされる疾患.

これらを満たす患者群をEdoxaban vs Placebo群に割り付け, 心血管死亡, Stroke, 塞栓症の頻度と発症までの期間を比較

・Edoxabanは60mg/d, 体重≤60kg, CCr 15-50mL/min, P-glycoprotein阻害作用がある薬剤との併用時は30mg/d

・Placebo群では偽薬またはアスピリンが含有されたものが用意され, 血管疾患や冠動脈疾患, 脳卒中の既往などによりアスピリンが適応と判断された場合はアスピリン含有Placeboが使用された.

患者群

・75歳以上が2/3

・AHREsの持続時間は2.8時間(0.8-9.4)

・CHA2DS2-VAScスコアは4[3-5]


アウトカム

・Studyは安全性の懸念より途中で中断

・心血管イベントリスクは両者で有意差は認めないがEdoxaban群では有意に出血リスクが上昇する結果


感想

・今回は埋め込み型デバイス = つまり何かしらの心疾患がある高齢者.
 その患者群で一過性の心房頻拍があっても抗凝固は害となる可能性が示唆された.
 とはいえ, さらに長期間の予防効果は不明.

・今後、スマートウォッチで検出された, とか色々ありそうで,
 そういう症例でも何かしらの介入が必要かどうか評価することはとても重要.