高コレステロール血症に対するスタチンの使用方法として,
強度を設定し使用する方法と, LDLコレステロール値を設定して調節する方法がある.
以前は強度で記載されていたが, 最近のガイドラインは併記されている.
国内のガイドラインは目標値設定.
ACC/AHA ガイドライン(2018)におけるスタチンの推奨と治療目標
予防 | 患者群 | スタチン強度, 治療目標 |
二次予防 | 以前にも動脈硬化性疾患既往がある. または高リスク因子*1を有する | 高強度スタチン. LDLコレステロール<70mg/dL |
高リスク因子(-). >75歳 | 中強度スタチン. 高強度がすでに使用されている場合は継続 | |
高リスク因子(-). ≤75歳 | 高強度スタチン. LDLコレステロール50%以上の低下 | |
一次予防 | LDLコレステロール≥190mg/dL | 高強度スタチン |
LDLコレステロール70 mg/dL -190mg/dL未満, 40-75歳. 糖尿病(-), 10年間動脈硬化性疾患リスク≥7.5% | リスク7.5-20%, またはリスク因子*2がある場合はLDLコレステロール 30-49%の低下(中強度スタチン),リスク≥20%では≥50%の低下を目標(高強度スタチン) | |
LDLコレステロール≥160mg/dL, 20-39歳. 若年発症の動脈硬化性疾患の家族歴がある | スタチンを考慮する | |
40-75歳の糖尿病 | 中強度スタチン. 動脈硬化リスクが他にあれば高強度 |
*112ヶ月以内の冠動脈疾患, 心筋梗塞既往, 脳梗塞既往, 症候性の末梢動脈疾患のうち1つ以上.
65歳以上, ヘテロの家族性高コレステロール血症, 冠動脈バイパス術/経皮的冠動脈インターベンション既往, 糖尿病, 慢性腎臓病, 喫煙者, スタチン最大投与量を使用してもLDL-C ≥100mg/dLが持続, うっ血性心不全の既往 のうち複数が認められる.
*2 動脈硬化性疾患家族歴(男性では<55 歳,女性では<65 歳), LDLコレステロール160-189 mg/dL, メタボリック症候群(腹囲の拡大,トリグリセリド>150mg/dL,高血圧,高血糖,HDLコレステロール低値[男性<40 mg/dL,女性<50 mg/dL]のうち,3項目以上を満たす), 慢性腎臓病, 慢性炎症性疾患(関節リウマチや乾癬,HIV感染症など), 早期閉経の既往(40歳以前での閉経),妊娠に関連した動脈硬化性疾患疾患リスクを上昇させる合併症(子癇など), 心血管疾患リスクが高い人種(南アジアなど), 持続的な高トリグリセリド血症(≧175 mg/dL), 足関節上腕血圧比(ABI)<0.9
Circulation. 2019 Jun 18;139(25):e1082-43
ESC/EASガイドライン(2019)における心血管疾患リスク分類と治療目標
リスク | 患者群 | 治療目標(LDL-C) |
最高リスク | ・動脈硬化性疾患を臨床的または画像的に指摘されている(冠動脈疾患既往, 狭心症,経皮的冠動脈インターベンション, 冠動脈バイパス術既往など, 脳卒中, 一過性脳虚血発作, 末梢動脈疾患, 画像上プラーク狭窄が指摘など) ・動脈硬化性疾患の既往や他のリスク因子を有する家族性高コレステロール血症 | LDLコレステロール50%以上の減少, <55mg/dLを目標 (高強度スタチン) |
高リスク | ・次のいずれかが認められる: 総コレステロール >310mg/dL, LDLコレステロール>190mg/dLまたは血圧≥180/110mmHg | LDLコレステロール50%以上の減少, <70mg/dLを目標 (高強度スタチン) |
中リスク | 若年者(2型糖尿病<50歳, 1型糖尿病<35歳)で, 糖尿病罹患歴が10年未満, 他のリスク因子は認められない | <100mg/dLを目標 |
低リスク | 10年間致命的心血管疾患リスクスコア <1% | <116mg/dLを目標 |
Atherosclerosis. 2019 Nov;290:140-205
動脈硬化疾患予防ガイドライン(2022)におけるリスク分類と治療目標
リスク | 患者群 | 治療目標(LDL-C) |
二次予防 | 動脈硬化性疾患既往がある | <100mg/dL |
高リスク | 糖尿病, 慢性腎臓病, 末梢動脈疾患あり | <120mg/dL |
中リスク | リスク評価(図2)にて2%-10%未満 | <140mg/dL |
低リスク | リスク評価(図2)にて<2% | <160mg/dL |
*1冠動脈疾患, 家族性高コレステロール血症, 糖尿病, アテローム血栓性脳梗塞
*2糖尿病で末梢動脈疾患, 微小血管障害を合併した症例や喫煙者.
日本動脈硬化学会.動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022
ちなみに, 強度とは
LDLコレステロールを>50%減少させる量を高強度
30-50%減少させる量を中強度
<30%減少させる量を低強度と定義し, 以下のような投与量となる.
国内保険適応ではほぼ中強度となり, 高強度はロスバスタチンのみという問題がある.
そんななか, 韓国より非劣性試験が発表された.
JAMA. 2023;329(13):1078-1087.
LODESTAR: 冠動脈既往患者を対象とし. High-intensity群と, Treat-to-target群に割り付け, 臨床アウトカムを比較した非劣性RCT @韓国
・Treat-to-target群はLDL-Cを50-70mg/dLを目標に投与
未使用例では中強度より開始, 使用例では目標達成まで増量. <50mg/dLでは減量する.
・ High-intensityはロスバスタチン20mg/日, アトルバスタチン 40mg/日を使用
・3年間における死亡, 冠動脈疾患, Strokeを比較. 非劣性マージンは3.0%
母集団
両群のスタチンの使用量
・Treat-to-target群では中強度例が4-5割を占め, Ezetimibe併用も 多い
LDL-Cの値とPrimary end point
・LDL-Cは両群で<70mg/dLを達成しており,
Primary end point(死亡, 冠動脈疾患, Stroke)も同等.
・個別に見たアウトカムも両者で差は認めず.
・臨床的有意な差かどうかは不明であるが, 末期腎不全リスクはHigh-intensity群でやや多い.
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スタチンの使用可能量の国別の差により, 日本では海外で行われるような高強度スタチンの使用が難しい問題があった.
それでもエゼチミブなど併用しつつやっていたものの, 今回の報告からはそれで目標LDLコレステロールを達成できれば少なくとも3年間のアウトカムには差は認めないという結果.
長期フォロー結果も待ちたいところではあるが, 結局は低強度〜中強度で開始/投与しつつ, 目標値を意識しつつ管理, という方法はアリ.