線維筋痛症(Fibromyalgia:FM)についてはこちらも参照
http://hospitalist-gim.blogspot.com/2014/04/fibromyalgia.html
1年前に感染症を契機として, 全身の関節痛が出現した中年女性.
近医を受診し, 軽度のCRP上昇, ACPA弱陽性からRAと診断され, DMARDが開始.
しかしながらDMARD開始後も疼痛が改善せず薬剤はどんどん増量.... したが疼痛は持続.
転医を希望され, 紹介となった, という設定の症例.
診察すると腫脹関節は認めないが, 関節はかなり痛がる様子.
おかしいな? と思いエコーを行うが, 滑膜肥厚やPDの亢進所見は認めない.
これは,「 RAだけではない or RAじゃない」のではないかと考えて全身の疼痛を評価すると,
頸部、肩、肘〜 手指はDIP、はたまた関節外の筋把握痛など... さまざまな部位に圧痛を認める
これはFMぽい. 最初はRAだったのか? それは最初に見てないからわからない.
詳細は避けるが, 掘るとどんどん出る環境因子...
ところでRAでFMを合併するのはどの程度か, というのを調べてみた.
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RAとFM
RAとFMSは合併することがある
・報告では381例のRAのうち25.7%でFMの診断基準を満たすものや (Ann Saudi Med 41(4): 246-252. )
13.4%で合併するとした前向きCohort (Arthritis & Rheumatism (Arthritis Care & Research) Vol. 61, No. 6, June 15, 2009, pp 794–800)
20.8%で合併していた報告など (Clinical Rheumatology (2022) 41:1235–1240)
・2019年のSystematic ReviewではRAの18-24%, axSpAの14-16%, PsAの18%で合併すると記載 (Best Practice & Research Clinical Rheumatology 33 (2019) 101423)
・およそRAの5-10人に一人がFMを満たす.
FMを合併したRA患者では, 非合併例と比較して,
・圧痛関節数が多く, PGAも有意に悪い.
ESRやCRPといった炎症パラメータ, 腫脹関節数は有意差なし (Ann Saudi Med 41(4): 246-252. )
・ステロイドや他のDMARDの使用量も多くなる傾向がある. (rev bras reumatol. 2017;57(5):403–411)
FM合併例と非合併例の比較 (Clinical Rheumatology (2022) 41:1235–1240)
・特に圧痛関節数に大きな差があり, その影響でVASやQOLの低下がある
・また, よくうつ症状や不安症状 倦怠感を訴える例も多い.
同様に合併例と非合併例の比較 (Arthritis & Rheumatism (Arthritis Care & Research) Vol. 61, No. 6, June 15, 2009, pp 794–800)
・FMに関連する症状として,
頭痛や倦怠感, 異常感覚, 口渇感やドライアイ 睡眠障害, 気分障害がある
・また, 全身の疼痛が目立つ 圧痛点の数も多い.
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・RAとFMはそれなりに合併があり得る.
・FM合併例ではPGAやTJCが増加し, RAの活動性が高く見積もられるものの, それに対してDMARDを増量しても, 解決にはならない可能性がある.
・しっかり関節所見の評価, エコーなども用いてFMを意識し, それに対するアプローチを行った方がよりよい疼痛管理, 適切なDMARDの使用ができるのでは.