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2022年5月25日水曜日

ちょっと変わったLeukemoid Reaction(白血病反応)

 症例: 高齢男性. 亜急性経過での体動時痛, 倦怠感を主訴に受診.

 血液検査にてWBC 5万台, Neu 65%, Eo 30%と著明な好中球と好酸球増多を認めた.

 末梢血に芽球は認めず, 骨髄穿刺でもAMLや骨髄増殖性疾患を疑う所見は乏しい.

 XPにて肺に5cm程度のMassを認め, 肺悪性腫瘍に伴うLeukemoid reactionを疑った.

 でも, Neu上昇はわかるが, Eoも上昇するというのは。。。?


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Leukemoid Reaction(LR): 白血病反応

(Int J Lab Hematol. 2020 Apr;42(2):134-139.)(Cancer 2009;115:3919–23)

・白血病ではないが, 末梢血WBC 40000-50000/µL以上となる病態.

・成熟した好中球の増加で特徴づけられ, CMLやCNLなどの骨髄増殖性疾患が除外される.

・主に悪性腫瘍に伴うものが多く(G-CSF産生腫瘍など),
 他に感染症(粟粒結核, CDAD, 細菌感染), 薬剤(GC, MINO, G-CSF), 毒素(エチレングリコール), 急性出血や溶血による報告がある

・悪性腫瘍では肺癌と腎癌での報告が多いが, さまざまな部位の腫瘍で報告例がある. また腫瘍診断の数年前(報告では最大4年)から認められることがある.


ブラジルの3次施設において, WBC>50000/µLを満たす症例を評価

(Int J Lab Hematol. 2020 Apr;42(2):134-139.)

・2016-2018年に267例認められ, このうち6割が血液増殖性腫瘍疾患.


 残りの4割(105例)を白血病反応と判断し, 原因を評価した.

・感染症が59例, 悪性腫瘍が17例, その他が29例であった.


感染症は最も多い原因.


・細菌感染症が多く, 敗血症に対して
ステロイドが使用された例が30%.

・悪性腫瘍では肺, 膵臓, 胃癌が多い

・その他ではGrowth factor, HLH
出血などがある.

血液検査

・どの原因でもNeuの著名な上昇が主となり,
他の血球の増多は認めない


非血液性固形腫瘍でWBC>40000/µLを満たす758名のRetrospective trial
原因頻度を評価.

(Cancer 2009;115:3919–23)

・Hematopoietic growth factorが10d以内に使用されたものが522例(69%).


 感染症によるものが112例(15%).


 High-dose corticosteroid ± 血管収縮薬使用例が38例(5%).


 残り, 10%が傍腫瘍症候群に伴うLeukemoid reactionであった.

感染症の内訳;


傍腫瘍症候群としてのLeukemoid reaction. 77例の解析


・腫瘍自体が産生G-CSF, GM-CSF,
 IL-1α, IL-6などが関与しているとされる.

・96%がNeu上昇がメイン.
またLR合併例は基本的に予後不良.

・発熱は38度を超えないのが普通.

・腫瘍の原発巣は,
 NSCLC(13), 肉腫(11), 原発不明癌(6)
, 皮膚(6), 膵癌(4), 膀胱癌(4), 乳癌(3), 胆道(3),
口咽頭(3), 腎(2), 腹膜中皮腫(2), 子宮内膜(2),
胃食道(2), 甲状腺(2), 骨, 陰茎, 末梢神経鞘,
上顎洞, 舌, 胃, 肝, 頸部, 卵巣 各1例.



傍腫瘍性LRのLiterature review 179例の解析

(Pathology - Research and Practice 217 (2021) 153295)

・平均WBCは60703(範囲12200-300000)/µL


 96%は好中球のみの増多. 

 3%(5例)がNeu+Eoの上昇, 

 1%(2例)がNeu+Mo


 Neu+Mo+Eoが1例のみ.

 
Mo単独やEo単独, Baが上昇するタイプのLRの報告は認められない.

・G-CSFが測定された症例は99例. 平均値は257[33-1640]pg/mL
. 

 測定された症例の95%で上昇が認められた.
 

 73%が>100pg/mLを満たす.


 組織のG-CSF染色は80例で行い,
 94%で陽性.


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Leukemoid ReactionのほとんどがNeuの上昇を認める.

今症例のようなNeu+EoのLeukemoid Reactionはかなり稀であるが, 報告はあり.

傍腫瘍性では2021年のReviewからは5例のみとの報告である.

どのような症例報告か見てみよう.


Neutrophilic-Eosinophilic Leukemoid Reactionの症例報告

・65歳男性, 喫煙者, 肺扁平上皮癌.
 

 WBC 37200/µL(Neu 38%, Eo 37%, Ly 4%), PLT, Hb正常
 

 → その後 WBC 90500(Neu 28%, Eo 34%, Ly 2%, Mo 11%)

・68歳男性, 肺腺癌
 WBC 369000/µL(Neu 43%, Eo 31%, Ly 9%, Mo 6%), PLT, Hb正常

 この2例では, 胸水中のGM-CSFが測定され,
それぞれ 3.8ng/mL, 1.0ng/mLと検出されている(ELISA)

 
他の疾患12例で同様に胸水中GM-CSFを測定したところ, 
検出されたのは1例のみ(Leukemia, GM-CSF 0.2ng/mL). その症例はWBC<100と低値で, 好酸球増多も認めない.

(Cancer 1992;69:1342-1346)


・41歳女性, 左膝の腫瘤と疼痛. 高悪性度紡錘形細胞肉種
 

 WBC 126000/µL, Neu 45%, Eo 48%と上昇あり, 切除後正常化.
 

 その後肺に転移が認められ, その際再度Neu, Eoの上昇を認めた.
 

 血液中IL-5は正常. GM-CSFは208.8pg/mL(正常<4.8)と上昇

(Journal of Medical Case Reports 2010, 4:335)

・57歳女性. 肺の転移性腺癌, 胸膜, 肝臓, 骨転移. 骨盤癌腫症


 WBC 87300/µL, Neu 54%, Eo 31.0%. 


 GM-CSF分泌腺癌であることが判明

(Clin Case Rep. 2019 Nov 27;8(1):9-12.)

・61歳男性. 肺非小細胞癌


 WBC 77400/µL, Eo 30-40%. 血清GM-CSFは385pg/mLと上昇.


 一方でIL-3やIL-5の上昇は認められず.


 胸水より採取された腫瘍細胞と好酸球の亜集団よりGM-CSFの産生が証明された.

(Lung Cancer 76 (2012) 493–495)


日本からの報告

・71歳男性, 転移性の胸壁腫瘍. 組織は分類不能(Large cell type)


 WBC 18100/µL(経過中のMax 48300), Neu 53.5%, Eo 31.5%(Max 37.5%)


 血清G-CSFは正常範囲(3.6pg/mL), GM-CSFは112pg/mL(正常<2.0)

(Jpn J Clin OncoI 1998;28(9)559-562)

・72歳男性, 甲状腺癌


 WBC 36200/µL, Neu 65%, Eo 26%.


 G-CSF 150pg/mL, GM-CSF 459pg/mLと双方上昇


 IL-3, IL-5は正常範囲

(Internal Medicine 1996;35:815-820)


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実際探してみると, 5例ではなく7例. 日本国内から2例(医中誌調べたらもっとあるかも)

そのほぼ全例でGM-CSFの関連が示されている.

傍腫瘍性LRではG-CSFが産生され, Neuが上昇することが多いが, GM-CSF産生腫瘍の場合にはこのNeu-Eo LRとなる例があると考えられる.

2022年5月20日金曜日

残尿が多いとUTIのリスクになるのか?

高齢女性のUTI症例.

排尿後残尿量を測定すると200mLと多く, UTIのリスクになった可能性を考慮された.

特に排尿関連症状は認めないが, この残尿量を減らすために治療が必要なのだろうか?

残尿量はUTI再発リスクになりえるのか?


急性尿路感染症状(-)の前立腺の評価目的に受診した成人男性196例(平均年齢60台)において,

(J Urol. 2008 Jul;180(1):182-5. doi: 10.1016/j.juro.2008.03.044.)

・排尿後に無菌操作でカテーテルを挿入し, 残尿量を測定.
また採取した尿を培養し, 細菌尿を評価

・尿培養は27%で陽性.


 陽性例の残尿量は平均 257mL
 範囲 150-560mL

 
陰性例は平均 74mL
 範囲 10-340mL


・残尿量が多いほど細菌尿のリスクは上昇する.

 180mL以上の残尿がある場合,
 細菌尿を有するPPVは87%, NPVは94.7%


介護施設入所者を前向きに1年間フォローし,
残尿量とUTI発症リスクを評価したCohort.

(J Am Geriatr Soc. 2008 May;56(5):871-4. doi: 10.1111/j.1532-5415.2008.01646.x.)

・150例を対象とし, 排尿後残尿量をエコーにて評価.

 男性46例, 女性104例.

 平均年齢は男性で81.9歳, 女性で85.3歳.

・65.3%で残尿量<100mL, 34.7%は≥100mLであった.

・1年間のフォローにおいて, 
UTIを発症したのは34.0%

 
女性が40.4%, 男性が19.6%と
女性で有意に多い

・残尿量が多いからといって,
 UTIのリスクが上昇する結果は得られず


閉経後女性におけるUTIリスクを評価した前向きCohort.

(Am J Med. 2004 Dec 15;117(12):903-11. doi: 10.1016/j.amjmed.2004.07.045)

・55-75歳の閉経後女性 1017例を2年間フォローし,
 膀胱炎の発症に関連する因子を調査.

・1773 pt-yのフォローにおいて, UTIは138例で発症.(7/100pt-y)

・リスク因子は糖尿病, インスリン使用,
 エストロゲンクリーム,
 腎結石既往, 繰り返すUTIが挙げられる

・排尿後残尿量(US)はリスクにはならず;

 
<50mLと比較して,
 

 50-100mL: HR 1.1[0.5-2.2]


 >100mL: HR 1.6[0.8-3.2]


55-75歳の閉経後女性を対象とした前向きCohort.

(J Am Geriatr Soc. 2011 Aug;59(8):1452-8. doi: 10.1111/j.1532-5415.2011.03511.x.)

・エコーにて排尿後残尿量をBaseline, 1y, 2yにフォローし,
症候性UTIの頻度を比較した.

・残尿量<50mLが79%, 50-99mLが10%, 
100-199mLが6%, ≥200mLが5%であった

・残尿量と症状


残尿量と症状, UTIリスク

・残尿量が増えると,
 頻尿症状や排尿障害症状は軽度上昇する.

・しかしながらUTIリスクは上昇せず.


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まとめ;

・男性例において, 残尿量>180mLは細菌尿リスクになり得る.

 ただし症候性となるかどうか不明確.

・女性例, 特に閉経後や高齢女性において, 残尿量が多いと排尿障害や頻尿症状の軽度のリスク因子とはなり得るが, UTIのリスクを上げるという証拠はない.

 女性例における無症候性細菌尿については不明.


・自分のスタンスとしては, 腎後性腎不全や膀胱拡張による他臓器への影響, 尿路症状がない限りはある程度(200mL程度)の残尿は特に介入していません

2022年5月19日木曜日

M蛋白血症に伴う皮膚所見

全身性の疼痛でPMRと診断, 治療されていたが, 徐々に炎症反応コントロールがつかなくなり, 皮膚病変を生じはじめた高齢女性.

皮膚は体幹は皮膚硬化や色素沈着を伴い, 四肢末梢は隆起性の掻痒感を伴う丘疹, また固い白色〜透明感を伴う小結節であり, 広範囲に拡大.

PMRではないだろう, ということで精査すると, IgGλ型のM蛋白血症が認められた


さて, POEMSやMM, ALアミロイドーシスなど, M蛋白を認める疾患ではどのような皮疹となるのか?

というようなClinical Question.


参考にしたReview

(JEADV 2017, 31, 45–52)

(Blood Cancer Journal (2022)12:58 ; https://doi.org/10.1038/s41408-022-00661-1)


M蛋白血症に伴う皮膚病変は主に腫瘍性形質細胞の浸潤と,
 M蛋白自体の皮膚沈着, またそれによる免疫や炎症反応により生じる.

・疾患としてはPOEMS症候群, AL amyloidosis, Schnitzler syndrome, Scleromyxedema, TEMPI症候群で認められることが多い.

・皮膚病変の性質や原疾患から4つのグループに分類される

 

G I: 腫瘍性形質細胞疾患によるもの; 細胞浸潤, 腫瘍性M蛋白の沈着

 
G II: 非腫瘍性疾患によるもの; M蛋白の沈着, 自己抗体やサイトカインによる炎症, 機序が不明確なものも含まれる.


 G III: 症例報告レベルのM蛋白疾患に合併した皮膚病変

 
G IV: M蛋白に関連するが, 特異的なものではない; 薬剤や過粘稠による出血, 感染症なども含まれる.


主に問題となるのがG I, G II


Group Iにおける疾患と皮疹の特徴をまとめた.

疾患/病態(Group I)

皮膚所見

POEMS

色素沈着先端チアノーゼ多毛毛細血管拡張皮膚肥厚体幹や四肢近位部の赤紫色の皮疹も認められる.
レイノー現象も認められ強皮症との鑑別で重要

WM

四肢伸側面の小さな真珠光沢を有する丘疹
 >> 真皮のIgM沈着が認められる真皮上層中部にヒアルロン酸や顆粒状の好酸球性沈着物を認める
手背の水疱びらん丘疹

AL amyloidosis

早期では刺激部位の紫斑

眼窩周囲, 顔面の紫斑 
  紫斑は血管へのアミロイド沈着, 後天性第X因子欠損, 線維素溶解の増加によるもの
点状出血, 散在する非外傷性斑状出血, 結節, 脱毛, 皮膚の強皮症様変化

ドーム状, 蝋状, 半透明の外観を持つ丘疹
口腔内では巨舌, 舌の硬結, 歯肉出血
爪甲剥離, 爪裂孔

Cryoglobulinemia(M蛋白関連ではType 1)

炎症性皮疹, 丘疹, 出血性痂皮, 先端チアノーゼ, 網様皮斑
潰瘍, 塞栓症

Plasmacytoma(皮膚形質細胞種)

赤色, 紫色, 非圧痛性結節で, しばしばびまん性の紅斑を伴う

・POEMSでは強皮症様の皮膚変化となるのがポイント. レイノー現象も認められ, 初期に強皮症と間違えられることもある. CIDP様の末梢神経障害やTP/Alb解離に注意する.

・WMでは真珠光沢を有する丘疹. 水疱, びらん.


・AL amyloidosisでは色々な皮膚病変がある. 血管への沈着による紫斑は早期に認めらる. 第X因子の欠乏による眼窩周囲の紫斑はアミロイドーシスに有名な所見の1つ.

 他には強皮症様の皮膚変化や丘疹, 蝋状の皮膚など様々. 爪の変化もある.

 巨舌の確認も忘れずに.


Group IIにおける疾患と皮疹

疾患/病態(Group II)

皮膚所見

Schnitzler症候群

慢性蕁麻疹様皮疹(薔薇色赤色の紅斑軽度隆起した丘疹)
 皮膚生検では間質や血管周囲への好中球浸潤を認める
 血管のフィブリノイド壊死は通常認めない
好中球性蕁麻疹性皮膚症と呼ばれる
IgMκ
M蛋白との関連が強い

Necrobiotic Xanthogranuloma
(壊死性黄色肉芽腫)

固い黄色オレンジ色の丘疹結節を特徴とする非ランゲルハンス組織細胞症. IgG-κM蛋白との関連が強い
眼窩周囲の皮膚病変が多い体幹や四肢のみもある

Plane Xanthoma
(平面黄色腫)

眼窩周囲, 頭部, 頸部, 体幹, 肩, 四肢などのびまん性の平面黄色腫
MGUS, MM, AML, リンパ腫, キャッスルマン病に関連することがある.
皮膚病変は斑状のオレンジ色の皮疹として生じる

Scleromyxedema

強皮症に類似した皮膚病変で, 皮膚のムチン沈着が認められる
2-3mm大の密で固い, 蝋質の, 赤色/肌色の, ドーム型/平坦頂点の丘疹を示す. 手, 頭, 体幹, 大腿に生じる

M蛋白は90%で認められ, 主にIgGλ型

Scleredema

溶連菌感染やM蛋白性疾患に伴う稀な硬化性皮膚疾患.
M蛋白はIgGで, κ>λ
真皮ムチン, コラーゲンの過剰な蓄積で, 皮膚の対象的な広範囲の肥厚や非点状硬結を生じる. 一部ではオレンジの皮のような変化.

・Group IIは結構稀な病気が多い

・高脂血症以外に黄色腫が生じる疾患としてM蛋白関連は覚えておくと良いかもしれない

 黄色腫はどのタイプも眼窩周囲で多い(60%). 次いで体幹(48%)や手足(46%)で認められる.(Blood. 2011;118(14):3777-3784)

・また皮膚が硬化することも多く, 強皮症やモルフィア, 好酸球性筋膜炎との鑑別の際にも重要




2022年5月18日水曜日

TESTING: IgA腎症に対するmPSL投与を評価したRCT

 IgA腎症の治療については2014年のガイドラインを参照に以前書いたものを参照

(古いかもしれません) http://hospitalist-gim.blogspot.com/2015/12/iga-stop-igan.html

基本的にACE阻害薬やARBを使用し, それでも尿蛋白≥1g/dとなるような症例においてステロイドを考慮するが, ステロイド投与群では感染症や合併症のリスクが上昇する一方で, 長期的な腎機能維持効果は疑問であったため, 適応については十分注意する必要がある, という理解.

2017年にJAMAよりTESTING trialの報告があり, これは以下のような結果で中断された(と聞いた)

(JAMA. 2017;318(5):432-442.)

TESTING trial: IgA腎症で3ヶ月間のACE阻害薬, ARBで治療を行っても蛋白尿1g/d以上でeGFR 20-120ml/分を満たす患者群を対象とし, mPSL群 VS PLACEBO群に割付け, 比較

・除外項目はステロイドが強く推奨される病態, 禁忌の病態がある場合,
過去1年以内の免疫抑制療法の施行歴

・mPSLは0.6-0.8mg/kg/d(最大48mg/d)を2ヶ月間, その後4-6ヶ月かけて減量するレジメ(1ヶ月に8mg/dずつ減量).

・N=262の時点で, 重大な副作用, 合併症がmPSL群で有意に増加したため, Studyは中断(14.7% vs 3.2%, AD 11.5%[4.8-18.2]).

 一方でeGFR低下リスクはmPSL群で有意に低い結果であった.


が, その後mPSLのDoseを減らした方法で継続され, それが2022年に再度JAMAより発表された.

(JAMA. 2022;327(19):1888-1898. doi:10.1001/jama.2022.5368)


TESTING: 蛋白尿≥1g/d, eGFR 20-120mL/min/1.73m2を満たすIgA腎症患者503例を対象としたDB-RCT.

・除外項目は, 他にGCの適応がある, 禁忌がある症例, 1年以内の免疫抑制療法歴がある患者

・mPLS投与群(初回0.6-0.8mg/kg/d, 最大48mgで開始し, 8mg/d/Moで減量, 合計投与期間6-8Mo群) vs Placebo群に割り付け, 腎予後を比較.

N=262の時点でmPSL群に重大な感染症リスクの増大が認められたため, 投与量を0.4mg/kg/d, 最大32mg/d, 4mg/d/Moで減量, 合計投与期間6-9Moに変更し, PCP予防の併用を最初の12wkを行ったレジメに変更し, 継続

・Primary outcome: eGFRの40%以上の低下, 腎不全, 腎疾患死亡.

母集団


アウトカム: Primary outcomeは有意にmPSL群で減少

・eGFRの低下, 腎不全それぞれで見てもmPLS群で予後改善あり

・Full doseでは
HR 0.58[0.41-0.81]



 減量レジメでは
HR 0.27[0.11-0.65]

と双方で予後の改善が認められる.

 (但し減量レジメの場合はフォロー期間は3年程度)


合併症

・重大な合併症はmPSL群で28例(10.9%)
Placebo群では7例(2.8%)

 Full dose群では16% vs 3%

 
減量群では5% vs 3% と減量群では重大な合併症リスクは大きく低下している

・特に感染症ではFull doseで多く, PCPは4例(3%), 他にCryptococcusやTBの併発もあり.


 減量群ではPCPは無し. 


この減量レジメならば比較的安全にIgA腎症における治療が可能と考えられる.


ブドウ球菌菌血症における感染性心内膜炎を予測(除外)するスコア

(Clinical Infectious Diseases® 2022;74(8):1442–9)

黄色ブドウ球菌菌血症(SAB)の10-20%で心内膜炎を合併するため, SAB症例では心エコー(特に経食道)による評価は重要である.

・
IEの合併を予測する, 除外するスコアとして, 
POSITIVE, PREDICT, VIRSTAスコアがある.


・どのスコアも血液培養の陽性が含まれているが,


 POSITIVEでは陽性までの時間


 他2つは治療開始後フォローの陽性が含まれる.

・また, 心疾患の既往やデバイス, 塞栓症状, 感染の状況が重要

 感染の状況: IV drug use, 院内や施設内感染.


オランダの7施設において, 成人例のSAB症例を前向きにフォローし, 上記3つのスコアとIEリスクを評価.

・複数回のSABを繰り返している患者は, 初回の1回のみを導入


 48h以内に死亡した症例は除外された

・SAB患者は90日間フォローされ, IE合併を判断


2017年〜2019年に対象SAB 637例を診断.
このうち77%(491例)で同意をとり導入.

・さらに14例は48時間以内に死亡し, 477例で評価された.

・IEの合併は87例で診断(18.2%)
 

 63例は2 major, 24例は1 major + ≥3 minorを満たす


 外科的, 病理で確定された症例は17例


 Native valve 53例, 人口弁 20例, 埋め込み型デバイス 14例


各スコアの感度, 特異度

・カットオフはPOSITVE >4, PREDICT ≥2, VIRSTA ≥3

・特異度はどの指標も不十分.


 感度はVIRSTAが最も良好で, この患者群におけるNPVは99.3%


 他の指標ではNPV 92.5%, 94.5%と5%以上でIEを逃す

・PREDICT Day 1は早期にTEEを行う患者群を抽出する指標として使用可能. PPV 66.7%.


まとめるとSABにおいて,

・心臓内デバイスがある場合


 塞栓症状/所見, 

 感染播種(髄膜炎)がある場合


 心疾患やIE既往がある場合 は早期にTEEを行うべき

・院内や施設発症のSAB, IV drug useでのSABでは,
 血液培養の陽性のタイミングや治療開始後の持続的血液培養陽性(48-72h)での結果を見てTEEを考慮.

・そういったリスクがない場合(特にVIRSTA <3)では, 
IEリスクは低く, TTEで代用, また菌血症としての治療が考慮される.
(TEEが可能な施設や患者の状態がゆるせばTEEが優先されるでしょうが)

2022年5月16日月曜日

敗血症患者におけるMALS(Macrophage activation-like syndrome)

MAS: Macrophage activation syndromeはマクロファージが過度に活性化した状態であり, 血球貪食リンパ組織球症(HLH)としても知られている.

・組織マクロファージの活性化によりINF-γ, IL-1β, IL-18, フェリチンの過剰な産生が認めれられる.

・ 悪性腫瘍や自己免疫性疾患, 先天性, ウイルス感染症(EBV)に伴うものが有名であるが, 重症敗血症でも伴うことが知られており, その場合MALS: Macrophage activation-like syndrome と呼ばれる.


敗血症におけるMALSの頻度. 予後への関連


敗血症(= 感染症+SIRS ≥2項目)患者において, MALSの頻度を評価.


(BMC Medicine (2017) 15:172)

・MALSはHScore陽性 and/or 肝胆道系障害+DIC合併で定義

・この研究ではHScoreの骨髄検査がRutineに行われていないため, 35点を引いて, カットオフ値を151点とした(通常は169点)

HScore
評価項目
評価と点数
元々免疫抑制状態がある*
なし: 0あり: 18
体温
<38.4: 0, 38.4—39.4: 33, >39.4: 49
臓器腫大
なし: 0肝腫大もしくは脾腫大: 23肝脾腫: 38
血球貪食の系統数**
1系統: 0, 2系統: 24, 3系統: 34
フェリチン値(ng/mL)
<2000: 0, 2000-6000: 35, >6000: 50
トリグリセリド(mg/dL)
<133: 0, 133-354: 44, >354: 64
フィブリノーゲン(mg/dL)
>250: 0, ≤250: 30
ASTIU/L
<30: 0, ≥30: 19
骨髄像で血球貪食像
なし: 0あり: 35
*HIV陽性長期間の免疫抑制療法を受けている(ステロイドやシクロスポリンアザチオプリンなど)
**Hb≤9.2g/dL, 白血球≤5000/µL, 血小板≤11/µLで定義

・肝胆道系障害は以下のうち2つ以上を満たす;
 

 (1) Bil≥2.5mg/dL, (2) AST ≥2ULN, (3) INR ≥1.5

・DICはDICスコアを用い, 5点以上を有意とした

・また, 登録患者はSepsis-3の定義を用いて, 敗血症を分類し,
 敗血症+上記を満たす群をMALSと診断.


・MALSの合併と10日死亡リスクへの関連,
 

 血液中サイトカイン, フェリチン値の関連を評価した

・One test cohort 3417例, Validation cohort 1704例



アウトカム: MALSの死亡リスクへの関連

MALSは有意な死亡リスク因子となる; 10日死亡OR 1.86~2.81

フェリチン値によるMALSの予測, 予後への関連

フェリチン>4420ng/mLは
感度 24.2%, 特異度 97.9%でMALSを示唆する


フェリチン≥4420となる群の28日死亡率は66.7%, 66%と高い

・Day 3でフェリチンの低下が<15%の場合, 
予後不良に対する感度が>90%.

・フェリチン高値となる例では, 有意にIL-6, IL-18, IFN-γ値が高値となり,

 IL-10/TNFαが低値


このデータより, 敗血症においてフェリチン値≥4420ng/mLはMALS合併の可能性を大きく上昇させることが示唆された.

敗血症でMALSを合併する場合, 抗菌薬治療や全身管理に加えて, 免疫抑制療法の併用も検討される(ステロイドやJAKi, IL-1, 6阻害など)

現在敗血症において上記フェリチン値上昇例を対象とした, IL-1阻害薬のPhase II trialsなどが進行中である.

また, 2021年11月に ICU管理となった市中肺炎症例の前向きCohortにおいて, このフェリチン値と予後への関連を評価した報告が発表.

Crit Care Med. 2021 Nov 1;49(11):1901-1911.

市中肺炎症例におけるMALS合併を評価した前方研究

・2箇所のICUにおける観察研究.
市中肺炎でICU管理となった患者群を対象.

・除外項目は再入院症例, 他ICUからの転院, ICU入室前に2日間以上経過した症例, 誤嚥性肺炎が疑われる症例, 合併感染症が疑われる症例, 心停止.


・上記を満たす153例の血清フェリチン値は275ng/mL[132-623]

・>4420ng/mLは15例(9.8%)で認められ, この群をCAP-MALSとした

 
CAP-MALS群のフェリチンは13880[9830-44720]



・CAP-MALSの5日, 10日間死亡率は33.3%,


 CAP群では6.6%, 10.9%と有意にMALS合併群で予後不良であった.


背景に血液悪性腫瘍がある場合, 
CAP-MALSのリスクを有意に増大: OR 6.74[1.42-30.42]

・Absolute riskは血液腫瘍(-)群で7.1%[2.81-11.3]
 

 血液腫瘍(+)群で41.7%[13.9-69.6%]でMALSを合併

・CAP-MALS群の33.3%で血液悪性腫瘍を合併
(CAP群では5.1%のみ)


 この血液腫瘍群を除外した141例で評価した場合,
 MALS群と非MALS群で死亡リスクは有意差を認めない.
 ただしサイトカインの差はある.


このCohortからは, 敗血症でMALSを合併する症例ではその背景に血液腫瘍が存在する可能性が示唆された.

また死亡リスク上昇は血液腫瘍合併例でさらに死亡リスクとなり, それらがない患者群では死亡リスクの上昇は認めない.

2022年5月11日水曜日

b/ts DMARDs使用中のRA患者におけるカリニ肺炎予防


 (Rheumatology 2022;61:1831–1840)

FIRST registryにおけるRA患者のPCP予防の効果を評価

・このRegistryは産業医科大学病院第一内科, その関連施設におけるRA患者を対象とし, 登録されたRA患者が新規にb/ts DMARDが開始されると長期観察研究に登録される.

・PCP予防については-2009年とそれ以降の2つの期間で適応方法が変わり,

 双方をCohort 1, 2として評価した.

・2003-2009年では, b/ts DMARD切替時に医師の評価の基づいて, PCP予防薬の使用を検討(cohort 1)


・2009年10月以降は, 公表されている予防基準*に加え, 医師の評価に基づいてPCP予防の適応を検討(cohort 2)

*年齢≥65歳, 肺疾患の存在, 経口GCの使用の3項目中
2項目以上を満たす場合に予防を行う
 肺疾患はILD, 胸膜炎, びまん性汎細気管支炎, 気管支拡張症, 陳旧性結核, 炎症性結節で定義


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補足: bDMARD使用患者におけるPCPリスクを評価した報告

日本におけるInfliximab使用中患者 123例の評価.

(N Engl J Med 2007;357(18):1874)

・65歳以上


 PSL ≥6mg/dの使用量


 背景に肺疾患あり の3項目がリスク因子であった.

・上記リスクがなければ,
 PCPは発症はないが, 
3リスクがあると8割発症した.

 2つ以上満たす場合, PCP高リスクと判断され, 予防が推奨される.


bDMARDsを使用しているRA患者702例の後方研究

(Arthritis Research & Therapy 2014, 16:R43)

・このうち214例でPCP予防を行っていた.

・PCP予防を行わなかった561例のうち, 9例でPCPを発症
予防群ではPCP発症は無し.

・PCPのリスク因子は, 65歳以上, 肺疾患, GCの使用


と, 高齢者, GC使用, 肺疾患の3項目は強くPCP発症リスクとの関連がありそうな報告がでている.


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導入された患者は3787例.

・Cohort 1が807例. 
このうち予防が行われたのが113例(ST合剤 109) → PCP発症は1例のみ.

 
予防が行われなかったのが694例 → PCP発症は12例.

・Cohort 2が2980例.
このうち予防が行われたのが1512例(ST合剤 1411) → PCP発症は7例.


 予防が行われなかったのが1468例 → PCP発症は6例. 

・Cohort 1,2を合わせたリスク因子と
予防の有無によるPCP発症率

リスク因子

予防(-)

予防(+)

0

2/1115(0.18%)

0/150(0%)

1

4/881(0.45%)

2/731(0.27%)

2

7/229(3.1%)

6/600(1%)

3

4/36(11.1%)

0/144(0%)


・この数値からはやはりリスク因子が2項目以上満たす場合は予防を考慮したほうがよさそう



GCの使用有無別のPCPリスク因子の評価

・GC使用例ではリスク因子は年齢のみ


 非使用例において,
 年齢以外に肺疾患がリスクとなる. 

  また, 他にIgG低値, リンパ球数低下はPCPのリスクとなる





2022年5月7日土曜日

脱毛症に対するJAK阻害薬(Baricitinib)のRCT

 脱毛症については以下を参照ください

http://hospitalist-gim.blogspot.com/2021/07/alopecia.html

一般人口の2%で認められ, 自己免疫性疾患にも時折合併が認められる.

特に女性におけるストレスは強く, しばしばショックで抑うつ傾向となってしまう患者さんも経験する.


なかなか良い治療というのが現時点ではなく, JAK阻害薬の外用薬が期待されているが, まだ保健適応や大規模なStudyは無いのが現状.


その脱毛症(円形脱毛症)に対する経口JAK阻害薬, BaricitinibのRCTが発表.

(N Engl J Med 2022;386:1687-99.)

BRAVE-AA1, AA2: SALTスコア≥50(0が頭蓋の脱毛なし, 100が完全に頭蓋の脱毛がある)を満たす患者群を対象としたDB-RCT.

・患者は男性で18-60歳, 女性で18-70歳のAlopecia Areataで, SALTスコア≥50, 

 発症6ヶ月以上, 8年未満で, 最近6ヶ月間は改善を認めない症例(スコア10点未満の変動のみ)

 
発症8年以上経過した症例では, 自然に脱毛が改善, または治療により改善を認めた症例のみ導入が許可された.

・除外項目; びまん性パターンのAA症例, 

 以下の薬剤で治療された症例

 (1wk以内に外用GCを使用, 8wk以内の全身/局所GC投与, 4wk以内の外用JAKi, 8wk以内の全身JAKi投与)


 過去に12wk以上のJAKiを使用し, 反応が不良であった症例も除外

Baricitinib 4mg/d群, 2mg/d群, Placebo群に割り付け, 36wk後のSALTスコア≤20達成率を比較(BRAVE-AA1 654例, BRAVE-AA2 546例)


母集団


アウトカム

・36wk時点におけるSALT≤20達成率

 Baricitinib 4mg投与群では35.6~38.8%で達成. 

 2mg投与群では19.4-22.8%

 
Placeboでは3.3-6.2%と有意にBaricitinibで改善が認められる

・他アウトカム


合併症

・VZVは増加する可能性がある.
Cholesterolの上昇も認められる

2022年5月3日火曜日

全身性疾患に関連する舞踏様運動(Chorea)

付随運動であるDystoniaとChoreaの1/4は二次性であり,
 その原因として神経変性疾患, 遺伝性代謝異常, 後天性の全身疾患がある.

Chorea: 不規則に繰り返される短くやや速い不随意運動であり, 炎症性疾患や自己免疫性疾患関連でいうと, A群溶連菌感染症後, リウマチ熱や, 抗リン脂質抗体症候群の1症状として連想される.

診断のMinor criteriaにも含まれるものの, 正直あまりお目にかかるものではなく, ついつい忘れがちなChorea. 

忘れないためにも一度調べておくことにした.


(J Neurol Neurosurg Psychiatry 1998;65:436–445)

Choreaは被殻〜淡蒼球内部の間接経路の機能低下,


Dystoniaは同部位の直接経路の機能過亢進が関連.

・双方とも運動前野, 運動皮質への視床投射を適切に抑制できず,
 不随意運動を生じる.

・尾状核や被殻の病変では, 淡蒼球外側の抑制をきたし, Choreaに関連
視床下部〜淡蒼球内部の障害も関連している



ChoreaやDystoniaの後天性の全身疾患で多いものは低酸素/虚血性疾患と薬剤性.


頻度は下がるが, 他に感染症, 自己免疫性疾患, 代謝性疾患も原因となる


毒素/薬剤によるChoreaとDystoniaの原因


感染症によるChorea, Dystoniaの原因

・A群溶連菌後のChoreaの報告はしばしばある
(リウマチ熱の1症候にもChoreaが含まれる)
 

 A群溶連菌感染やリウマチ熱による一過性のChoreaをSydenham’s choreaと呼び, 小児で報告がある. 連鎖球菌Type 6 M蛋白に対する抗体が関連している.


代謝性疾患によるChorea, Dystoniaの原因

・電解質異常, 血糖異常, 甲状腺機能亢進症が原因となりえる


成人発症の自己免疫性Chorea

(Neurology" 2013;80:1133–1144)

・傍腫瘍性や, 自己免疫性脳症に関連するChoreaもあり.

 
Mayo clinicにおける36例の報告では, 非傍腫瘍性が22例, 傍腫瘍性が14例.

・発症年齢は67歳[18-87], 女性例が58%, 傍腫瘍性ではより高齢, 男性例が多い


・傍腫瘍性Choreaの自己抗体は

 
CRMP-5が5例, ANNA-1が3例
, ANNA-2が1例


 他にVGCC, GAD65が2例


 抗体陰性やANAのみなどもあり

・特発性の背景疾患としては,
 

 SLE(5, うち3例はAPLSと合併), APLS(5, うち3例はAPLSと合併),

 SS(3), ITP(3), 甲状腺機能低下症(1)/亢進症(2)がある


SLEやAPLSに伴うChorea

・APLS 1000例の解析では, Choreaの頻度は1.3%のみ.


 小児発症のAPLSでは14%, 成人発症では1%と, 小児例での合併が大半.


 (OR 17.8[4.3-69.8]) (ARTHRITIS & RHEUMATISM Vol. 46, No. 4, April 2002, pp 1019–1027)

・SLEにおいて, Choreaは最も多い行動障害の1つであるが,
その頻度は1-4%と少ない.

・Choreaを伴うAPS症例50例の解析では, このうちPrimary APSは15例のみで, 35例はSLE, lupus-like syndromeとAPSの合併例であった.

(Medicine (Baltimore). 1997 May;76(3):203-12.)



2022年5月2日月曜日

成人の中耳炎

中耳炎は小児で多い疾患であり, 成人発症は少ない. 

成人例の中耳炎は, 全体の<20%程度と言われている. 


・成人で発症する場合, 二次性に耳管狭窄を生じる病態や
悪性腫瘍の関連, 自己免疫性疾患の関連を考慮する.

・成人(特に高齢者)の難治性中耳炎ではANCA関連血管炎に伴う中耳炎(OMAAV)が有名だったりする (参考: http://hospitalist-gim.blogspot.com/2017/01/anca.html)


18歳以上で滲出性中耳炎を発症した167例を前向きにフォロー.

(Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 1994;120:517-527)

・年齢は18-81歳, 平均年齢は41.5±15歳.


 男性例が99例, 女性例が68例

・Habitual sniffing(習慣性鼻すすり)は除外


滲出性中耳炎のタイプ


N(F/M)

年齢(範囲)


急性滲出性中耳炎

79(36/44)

34(18-67)

片側49, 両側30

慢性滲出性中耳炎

33(15/18)

47(35-81)

3ヶ月以上で定義片側19, 両側14

喫煙誘発性鼻咽頭リンパ過形成

8(0/8)

41(25-47)


成人発症アデノイド過形成

7(2/5)

52(40-65)


外傷後鼓室内血腫

7(1/6)

29(20-44)



・他, 気圧外傷や外科治療後, 放射線療法後,
 NGチューブ留置, 経鼻Airway/挿管, 
アレルギー性アスペルギルス, 流行性耳下腺炎, 伝染性単核球症,
 喉頭周囲膿瘍, 悪性リンパ種, Schwannoma, ANCA関連血管炎などが
其々1-3例で報告.

・成人発症でも半数異常は急性, 慢性滲出性中耳炎であり, 二次性の要素はそこまで多くはない.
 ただし, 発症年齢は3-50歳程度であり, 高齢者での中耳炎は注意が必要と考えられる.


3224例の急性中耳炎患者のうち, 15歳以上の症例500例を前向きにフォローし, 小児発症例と比較した報告
(J Am Board Fam Pract 1993;6:333-339)
・年齢別では1-14歳発症が84.4%.
 
 15-24歳発症が6.1%,
 25-44歳発症が6.9%, 
 45歳以上が2.6%

・症状の比較:
 成人発症では, 扁桃切除歴(+)が3割.
 
 難聴や咽頭痛といった症状頻度も高い
 
 発熱は1/3程度しか認めない
・改善率は, 小児例では84%.
 
15-24歳では80.6%,

 25-44歳では75.9%

 45歳以上では61.8%と
治療反応性は加齢に応じて増悪する

また, 近年 好酸球性中耳炎の報告も増加.
報告例のMetaより, 特徴をまとめると以下の通り;
・50歳前後の中年で, 喘息や鼻ポリープを伴うことが多い.
・診断は滲出性中耳炎や慢性中耳炎で, 好酸球有意の液体貯留を認め, さらに以下の2項目を満たす;
 気管支喘息, 鼻ポリープ, 粘性の中耳液体貯留, 通常の治療への反応が不良
・治療は鼓室内ステロイド投与, チューブの挿入, 全身性ステロイド, 喘息に準じた生物製剤の使用など
・慢性化, 再発性の経過もある.
(Acta Otolaryngol. 2021 Jun;141(6):579-587. doi: 10.1080/00016489.2021.1901985.)