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2022年5月11日水曜日

b/ts DMARDs使用中のRA患者におけるカリニ肺炎予防


 (Rheumatology 2022;61:1831–1840)

FIRST registryにおけるRA患者のPCP予防の効果を評価

・このRegistryは産業医科大学病院第一内科, その関連施設におけるRA患者を対象とし, 登録されたRA患者が新規にb/ts DMARDが開始されると長期観察研究に登録される.

・PCP予防については-2009年とそれ以降の2つの期間で適応方法が変わり,

 双方をCohort 1, 2として評価した.

・2003-2009年では, b/ts DMARD切替時に医師の評価の基づいて, PCP予防薬の使用を検討(cohort 1)


・2009年10月以降は, 公表されている予防基準*に加え, 医師の評価に基づいてPCP予防の適応を検討(cohort 2)

*年齢≥65歳, 肺疾患の存在, 経口GCの使用の3項目中
2項目以上を満たす場合に予防を行う
 肺疾患はILD, 胸膜炎, びまん性汎細気管支炎, 気管支拡張症, 陳旧性結核, 炎症性結節で定義


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補足: bDMARD使用患者におけるPCPリスクを評価した報告

日本におけるInfliximab使用中患者 123例の評価.

(N Engl J Med 2007;357(18):1874)

・65歳以上


 PSL ≥6mg/dの使用量


 背景に肺疾患あり の3項目がリスク因子であった.

・上記リスクがなければ,
 PCPは発症はないが, 
3リスクがあると8割発症した.

 2つ以上満たす場合, PCP高リスクと判断され, 予防が推奨される.


bDMARDsを使用しているRA患者702例の後方研究

(Arthritis Research & Therapy 2014, 16:R43)

・このうち214例でPCP予防を行っていた.

・PCP予防を行わなかった561例のうち, 9例でPCPを発症
予防群ではPCP発症は無し.

・PCPのリスク因子は, 65歳以上, 肺疾患, GCの使用


と, 高齢者, GC使用, 肺疾患の3項目は強くPCP発症リスクとの関連がありそうな報告がでている.


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導入された患者は3787例.

・Cohort 1が807例. 
このうち予防が行われたのが113例(ST合剤 109) → PCP発症は1例のみ.

 
予防が行われなかったのが694例 → PCP発症は12例.

・Cohort 2が2980例.
このうち予防が行われたのが1512例(ST合剤 1411) → PCP発症は7例.


 予防が行われなかったのが1468例 → PCP発症は6例. 

・Cohort 1,2を合わせたリスク因子と
予防の有無によるPCP発症率

リスク因子

予防(-)

予防(+)

0

2/1115(0.18%)

0/150(0%)

1

4/881(0.45%)

2/731(0.27%)

2

7/229(3.1%)

6/600(1%)

3

4/36(11.1%)

0/144(0%)


・この数値からはやはりリスク因子が2項目以上満たす場合は予防を考慮したほうがよさそう



GCの使用有無別のPCPリスク因子の評価

・GC使用例ではリスク因子は年齢のみ


 非使用例において,
 年齢以外に肺疾患がリスクとなる. 

  また, 他にIgG低値, リンパ球数低下はPCPのリスクとなる