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2022年2月28日月曜日

潰瘍性大腸炎とPR3-ANCA

潰瘍性大腸炎の患者でPR3-ANCAが陽性であった.

この意義は?


潰瘍性大腸炎におけるPR3-ANCAの陽性率

久留米大学病院で2015-2016年に診療したUC 102例, CD 67例, non-IBDの腸疾患 44例, 健常人 66例を対象にMPO-ANCA, PR3-ANCAを評価した報告.

(J Gastroenterol Hepatol. 2018 Sep; 33(9):1603-1607)

・UCの39.2%でPR3-ANCA陽性, 

 CDでは6.0%のみ.


・MPO-ANCAの陽性率はUCの12.8%と陽性はあるがPR3ほどではない.


・PR3-ANCAのTiter:
 2桁台〜100前半程度の上昇がありえる.


2011年までに紹介されたIBD患者142例を対象.

(Clinic Rev Allerg Immunol (2013) 45:109–116)

・初診時の冷凍保存されている検体を用いてPR3-ANCAを評価

・患者群は13.9±8.0年フォローされている

・疾患毎のPR3-ANCA陽性率は
 

 CD(74例): 2.7%, Titer 3.8[3.0-4.7]
 

 UC(48例): 29.2%, Titer 29.7[15.2-44.2]


 IC(20例): 15%, Titer 12.6[0.4-24.8]

・PR3-ANCA陽性の炎症性腸疾患の大半がUC

・各マーカーとUC, CDの鑑別能
: PR3-ANCAはよりUCを示唆する情報となる


GPA, IBDを始め, 様々な疾患におけるPR3-ANCA陽性率を評価

(Clinica Chimica Acta 424 (2013) 267–273)

・GPAにおける陽性率が60-75%

 
UCでは31%, CDでは1.9%程度.


福岡大学病院からの報告.
UC 173例(診断1ヶ月以内が77例), CD 110例, 他の腸疾患 48例, 健常人 71例においてPR3-ANCAを評価

(Gut Liver 2022;16:92-100)

・陽性率はUCで44.5%, CDで7.3%, 他腸疾患で2.1%, 健常人で1.4%

・Titerは2桁〜100前半が多い

・新規発症UC群では45/77で陽性(58%)であり, さらに頻度は高い

UCにおけるPR3-ANCA陽性, 陰性群の比較

・PR3-ANCA陽性例では重症例, 活動性が高い症例が多い.

新規発症例におけるPR3-ANCAの意義

・陰性例では軽症〜中等症のみ.
 陽性例では重症例〜中等症例が大半を占める

・Titerと活動性には相関性が認められる.

・また, 治療によりTiterは低下する


潰瘍性大腸炎におけるPR3-ANCAと治療反応性

・PR3-ANCA陽性のUCではTNF-α阻害薬や緩解導入療法の不応リスクとなる報告もある.


国内の単一施設におおいて, 寛解導入にTNF-α阻害薬を使用する50例の解析


(Inflamm Intest Dis 2021;6:117–122)

・このうち15例でPR3-ANCA陽性, 


 PR3-ANCA陽性はPrimary nonresponseのOR 19.29[3.30-172.67]と
リスクを上昇させる


活動性のUC患者159例後向き解析

(BMC Gastroenterol (2021) 21:325)

・このうち85例(53.5%)でPR3-ANCA陽性.

・
PR3-ANCA陽性例の方が有意に活動性が高い(MES)
 

 MES中央値: 3[2-3] vs 2[1-3]

PR3-ANCAと寛解導入療法への反応性.

・5-ASAへの反応は同等であるが, 
ステロイドへの反応性不良例の7割がPR3-ANCAが陽性例

・PR3-ANCA陽性UCはステロイドに対する反応不良のリスクとなる
(OR 5.19[1.54-17.50])

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まとめると

・UCにおいて3-4割でPR3-ANCAが陽性. 新規発症例ではさらに頻度は上昇する傾向.

 CDでは頻度は低く, 両者の鑑別に利用できる可能性がある.

・PR3-ANCA陽性のUCは活動性が高い傾向がある. 

 治療によりTiterは低下する.

・PR3-ANCA陽性のUCでは, ステロイドやTNF-α阻害薬へ反応性が悪い可能性がある.

2022年2月22日火曜日

稀な気道狭窄、喘鳴の原因: 血管輪

特に既往のない高齢女性.

上気道症状, 発熱を認め, その後強い喘鳴, 呼吸苦を認めたため受診.

診察では主気管支領域にStridorも認められたが, 声帯浮腫は認められず.

上気道症状は副鼻腔炎を認め, それに伴う症状と考えられたが, ではWheezeやStridorは?


胸部CTを評価すると, 肺炎像は認めないが, 胸部大動脈が右胸腔に認められ, 大動脈弓が右側に, また左鎖骨下動脈起始部が嚢状に拡張を認めていた.

上行, 下行Ao, 左鎖骨下Aに気管と食道が覆われ, 一部圧排されている像も認められた.


この病態は。。。?


大動脈弓の奇形, 発生異常

(Eur J Cardiothorac Surg. 2021 Nov 2;60(5):1014-1021.)(Current Treatment Options in Cardiovascular Medicine 2006, 8:414–418)


・大動脈弓の奇形は先天性心奇形の1%程度と稀な病態

・主な奇形には血管輪があり,
これは血管が完全に気管と食道を覆っている状態.

・重複大動脈弓と,
右側大動脈弓+異常な左鎖骨下動脈+動脈管索 の2つのパターンが78-99%を占める.


・重複大動脈弓では, 右回りの弓から右総頸動脈と右鎖骨下動脈, 左回りの弓から左総頸動脈と左鎖骨下動脈が生じる. 動脈管は双方, または左側より生じやすい.

・右側大動脈弓(RAA)で, 異常な左鎖骨下動脈と動脈管が生じる場合, 動脈輪を形成する.
 

 左鎖骨下Aは下降Aoと同程度の径で分岐し, 嚢胞状となることがあり, この構造をKommerell憩室と呼ぶ. 食道や気管の圧排の一因となり得る.

RAAによる血管輪のモデル: 


血管輪の臨床症状は,

・新生児の重篤な気道閉塞〜無症候性で成人例で偶発的に発見されるものまで様々.

・若年発症ほど重篤となる

・多い症状は喘鳴であり, 喘息や気管軟化症や気管支攣縮など初期診断される例がある. 

 他に咳嗽などの呼吸器症状, 再発性の気道感染症といった呼吸器症状, 

 嚥下障害, 摂食障害, 胃食道逆流症, 嘔吐などの消化器症状を呈することもある.


・これらは非特異的で多い症状であり, 特に小児領域では慢性的に持続する場合は血管輪も鑑別に入れておく必要がある.

・成人発症例では, 動脈硬化やKommerell憩室の拡大, 解離や破裂に関連して症状を生じるため, 症状はさらに非定型であることが多い.


オランダにおける先天性心奇形Cohortより動脈輪を認めた成人例69例を解析.

(Can J Cardiol. 2019 Apr;35(4):438-445.)

・診断年齢は11歳[0-70歳]


 合併症を認めたのは23例で, その大半が喘息や気道過敏

・他の心奇形を伴う例も多い


動脈輪の形態

・重複大動脈弓が21例, RAAが16例,
 左大動脈弓+右側異常鎖骨下動脈が30例

・発症年齢は小児期が多いが, 成人発症例もあり, 幅広い

・右側異常鎖骨下動脈と重複大動脈弓の図


初期症状

・呼吸器症状は8割で認められ, 呼吸苦やStridor, Wheezeなど

・消化器症状は3-4割.


成人例の症候性RAAに対する治療

・無症候性では治療の必要はない. 小児でも同様.
症候性の小児では手術治療が考慮される.

・成人例では進行性の血管拡張, 解離, Kommerell憩室の破裂に対して手術が適応となることが多い.

 呼吸器症状に対しては吸入療法など試されることもある.

2022年2月17日木曜日

EGPAに対するMepolizumabの投与量は?

EGPAではMepolizumab(ヌーカラ®)が適応になっており,

これは RCT(N Engl J Med 2017;376:1921-32.)において良好なアウトカム改善が得られたため.

このRCTでは300mg/4wkを使用しており, 保険適応量も推奨量も300mgとなっている.

重症喘息の場合は100mg/4wkであり, 製剤も100mgであるため, EGPAの患者さんは3回投与せねばならず, 結構大変.


実際はどのような使い方なのか? また効果はどうなのだろうか?

(Arthritis & Rheumatology Vol. 74, No. 2, February 2022, pp 295–306)

西欧におけるEGPA cohortの解析

2015-2020年に導入されたMepolizumabを使用したEGPA症例 203例を解析.

・このうち191例で一定量のMepoが使用された.

158例が100mg/4wk, 33例が300mg/4wkを使用していた.


両群における治療反応性を評価した.

・CRの定義はPSL ≤4.0mg/dで臓器障害を認めない(BVAS 0)


 PRはPSL>4.0mg/dで臓器障害を認めない


 再燃は一度CRを達成した患者において, BVAS >0 または喘息やENT症状が増悪し, PSL >4.0mg/d, 新規免疫抑制療法の追加された症例で定義された.


患者群

Mepo導入時のBVASは100mgと300mgで同等


 臓器障害も大きな差はない

 
PSL使用量も差は認めない


 他免疫抑制療法も同じ


治療反応性


・24M時点でのCRは300mg群でおよそ6割と高い傾向がある

 12M時点では両者で大きくは変わらない

臓器障害の経過

・24M時点では300mg/4wkでほぼ臓器障害が消失しているが,


 100mg群でも良好な改善効果が認められている.


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・Studyや適応では300mgであるが, 実臨床では100mgで使用されていることが多く, また効果も十分に期待できる.

・今後300mg vs 100mgのRCTが組まれる可能性がある.

・ちなみに1本(100mg) あたり, およそ18万円・・・・です.

 もう100mgでええやんか

2022年2月15日火曜日

好酸球性胆嚢炎

急性胆嚢炎にて胆嚢摘出術を施行したところ,

胆嚢の病理所見より高度の抗酸球浸潤が認められ, EGPAやHESの可能性について相談があった.


末梢血好酸球数の増多は認めず. 喘息や慢性副鼻腔炎の既往もなし. アレルギーもない.

薬剤の暴露歴も乏しく, 胆嚢炎以外に肺や腎, 皮膚, 神経など臓器症状も認められない.


はて?


ということで好酸球性胆嚢炎について調べてみる.


好酸球性胆嚢炎 Eosinophilic cholecystitis: EC

急性胆嚢炎において, 好酸球浸潤が>90%認められる症例で定義される病態.

50-75%の浸潤を認める場合, Lympho-eosinophilic cholecystitisと呼ばれる.

・胆嚢炎で胆嚢摘出術を行われた症例のうち, 好酸球浸潤が認められる割合は,

 625例のうち16例. このうち3例は著明な浸潤が認められた.
(Gastroenterology 1972;63:1049-1052.)

 217例のうち14例(6.5%): 好酸球性胆嚢炎で定義.
(Am J Surg Pathol 1993;17:497-501.)

 660例のうち55例(8.3%): ≥25%の浸潤で定義.
(Int Arch Allergy 1954;5:434-448.)

 といった報告が昔からでている.

・報告からはECの頻度は0.25-6.4%程度とされている


ECの背景疾患としてはHES, 薬剤, アレルギー, 寄生虫感染が挙げられる

・これらを認めず, また血管炎疾患による胆嚢炎が除外されれば,
 特発性好酸球性胆嚢炎と判断する. 

(Annals of Clinical & Laboratory Science, vol. 37, no. 2, 2007 : 182-185)


インド, ニューデリーの施設における報告

(Journal of Clinical and Diagnostic Research. 2017 Aug, Vol-11(8): EC20-EC23)

・2011-2015年に行われた胆嚢摘出術 1370例の組織を評価

・>90%の好酸球浸潤を認める症例をEC,


 50-75%の症例をlympho-eosinophilic cholecystitisと定義.

ECは22例(1.6%), LECは43例(6.4%)で認められた.

・ECは女性で多く(1:2.7), 
20-50歳台で多い

・ECのうち7/22は急性胆嚢炎, 残りは慢性胆嚢炎や胆石症のみ.

・末梢血好酸球増多は2/22と少ない


2000-2014年に胆嚢摘出術が行われ, 組織が評価された7494例中, ECと診断されたのは12例(0.16%).

(Revista de Gastroenterología de México. 2018;83(4):405-409)

・患者の平均年齢は39±11歳. 女性で有意に多い(5:7).

・10/12が急性胆嚢炎

・末梢血好酸球は320±80/µLとほぼ正常〜ごく軽度の上昇

・全例で特発性と診断された.


韓国における後向き解析
2001-2011年に行われた胆嚢摘出術の組織検体を評価

(Korean J Hepatobiliary Pancreat Surg 2012;16:65-69)

・3539例のうち, ECは30例で認められた(0.84%)

・このEC30例と年齢, 性別, 胆石の有無を合わせた他の胆嚢炎症例60例を抽出し, 比較

好酸球数の比較

・術前の好酸球数は209 vs 147と差はないが, 
好酸球増多を認める割合はEC群で多い.

・術後, 好酸球数はEC群では144とある程度横ばいの経過であるが
対象群では低下する.

・しかしながらさほど大きな差はない
(好酸球増多があればECを疑うきっかけになるか)


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・胆嚢炎において, 好酸球浸潤を顕著に認める病理所見が得られることがあり, 

 その場合 好酸球性胆嚢炎やLympho-eosinophilic cholecystitisと呼ばれる.

・EGPAやHESに伴う胆嚢炎と異なり, 末梢血好酸球増多を合併する例は少ない.

 またこれらは胆嚢の単一臓器の炎症を呈することも稀である.

・論文報告からは, 胆嚢以外に胆管や胃腸炎を合併する例も報告されている.

2022年2月10日木曜日

抗ARS抗体陽性のILD症例. 抗体別の特徴は?

 抗ARS抗体: Antiaminoacyl-transfer RNA synthetase抗体.

・抗Jo-1抗体(抗histidyl−tRNA-synthetase), PL7抗体(抗threonyl-), PL12抗体(抗alanyl-), OJ抗体(抗isoleucyl-), 抗EJ抗体(抗glycyl−tRNA-synthetase), 抗KS抗体, 抗Wa抗体など含まれる

・抗ARS抗体が陽性となる疾患群はASS(Antisynthetase syndrome)や抗ARS症候群と呼ばれる.

・ASSは間質性肺疾患, 炎症性筋症, レイノー現象 ± 機械工の手を特徴とする自己免疫性疾患


日常診療で検査可能な「抗ARS抗体」には5種類の抗体を評価する検査方法.

・含まれるものは抗Jo-1抗体, 抗PL-7抗体, 抗PL-12抗体, 抗EJ抗体, 抗KS抗体.

・自費検査になるが, 各個別の抗体を評価することも可能. 3万円くらい.


抗ARS抗体が陽性となったILD症例において, 個別の抗体間でどのような違いがあるのだろうか?


北京Chaoyang Hospのリウマチ膠原病科において,
2017年1月〜2019年6月に診療した抗ARS抗体陽性のILD症例 84例を後ろ向きにReview

(Medicine 2021;100:19(e25816).)

・抗Jo-1抗体が36例で最多(43%), 


 次いで抗PL-7抗体(26%), 抗EJ抗体(14%), 抗PL-12抗体(11%), 抗OJ抗体(6%)と続く

・抗Jo-1抗体や抗PL-7抗体陽性例では,
 筋炎や関節炎, 機械工の手, レイノーなどASSで認められる筋炎や皮膚関節所見を伴いやすい.

・抗PL-12抗体陽性例では, 筋炎や関節炎は少ない.

・抗OJ抗体陽性例ではほぼそれら所見は認められず.


画像所見

・抗Jo-1抗体, 抗PL-7抗体, 抗EJ抗体例ではNSIPパターンが最も多い

・抗PL-12抗体例ではOPパターン

・抗OJ抗体例ではUIPパターンが主となる.


画像所見の経過

・増悪傾向となりやすいのは抗Jo-1抗体や抗PL-7抗体陽性例.

 一方で改善する傾向があるのもその2つ.

 他は一定の経過であることが多い.


前述の北京Chaoyang Hosp.の呼吸器科, 集中治療科において, 2017年12月〜2019年3月に診療した抗ARS抗体陽性ILD患者 108例を後ろ向きにReview

(BMC Pulm Med (2021) 21:57)

・抗Jo-1抗体陽性例が33例で最多,


 次いで抗PL-7抗体 30例, 抗EJ抗体 23例, 抗PL-12抗体 13, 抗OJ抗体 9

・機械工の手は抗Jo-1抗体で半数以上で認められる.
 皮膚所見陽性例は抗Jo-1抗体,  抗EJ抗体例で多い

・抗Ro-52抗体陽性合併は抗Jo-1抗体, 抗EJ抗体陽性例で多い

CTパターンは,

・抗Jo-1抗体ではOP > NSIPが主.

・抗PL-7抗体はNSIPが多いが, UIPパターンも認められ,
 治療反応性も最も悪い.

・抗EJ抗体はOPパターンがおよそ8割を占める

・抗PL-12抗体ではNSIP > OPパターン

・抗OJ抗体ではOPパターンが主.


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抗ARS抗体陽性のILD症例の特徴としては,

・画像所見はOPやNSIPとなることが多い.

 抗体間で傾向性はありそうだが, ばらつきもありなんとも.

 UIPとなりえるのは抗PL-7抗体や抗OJ抗体.

・機械工の手や筋炎, 皮膚筋炎に関連した皮膚症状が多いのは抗Jo-1抗体と抗EJ抗体, 抗PL-7抗体

 逆にそれらが少ないのは抗PL-12抗体, 抗OJ抗体

・ILDの進行リスクが高そうなのは抗Jo-1抗体や抗PL-7抗体.


という傾向があるか

2022年2月3日木曜日

ANCA関連血管炎の分類基準 ACR/EULAR 2022

 International DCVAS studyからのDraftと同じ.

臨床上、小型血管炎や中型血管炎と診断した際に適応する.


GPAの分類基準 (Ann Rheum Dis 2022;0:315–320. doi:10.1136/annrheumdis-2021-221795)

鼻出血鼻腔内潰瘍・痂皮鼻粘膜うっ血鼻閉鼻中隔穿孔

+3

生検で肉芽腫血管外肉腫性炎症巨細胞を認める

+2

鼻軟骨の傷害

+2

画像で鼻副鼻腔の炎症・浸潤影乳突炎所見を認める

+1

構造的または感音性難聴

+1

Pauci-immune glomerulonephritis

+1

cANCAまたはPR3-ANCA陽性

+5

pANCAまたはMPO-ANCA陽性

-1

胸部画像検査で結節腫瘤空洞

+2

好酸球数>1000/µL

-4

・578例のGPA症例と652例の対象群のデータを用いた.

・Validationはさらに146例のGPAと161例の対象群を加えて,
91項目の候補から最終的に10項目を抽出

 対象群の内訳は以下の通り;


 microscopic polyangiitis (n=291), eosinophilic granulomatosis with polyangiitis (n=226), polyarteritis nodosa (n=51), non-ANCA- associated small-vessel vasculitis that could not be subtyped (n=51), Behçet’s disease (n=50), IgA vasculitis (n=50), cryoglobulinaemic vasculitis (n=34), ANCA- associated vasculitis that could not be subtyped (n=25), primary central nervous system vasculitis (n=19) and antiglomerular basement membrane disease (n=16). 


・5点以上で, 感度92.5%[86.9-96.2], 特異度 93.8%[88.9-97.0]

 DCVAS databaseを用いた評価では, 感度 83.8%, 特異度 94.6%と,
特異度は良好であるが感度はやや低下する

・カットオフと感度/特異度


MPAの分類基準 (Ann Rheum Dis 2022;0:1–6. doi:10.1136/annrheumdis-2021-221796)

鼻出血鼻腔内潰瘍・痂皮鼻粘膜うっ血鼻閉鼻中隔穿孔

-3

pANCAまたはMPO-ANCA陽性

+6

胸部画像検査にて線維化やILD所見を認める

+3

Pauci-immune glomerulonephritis

+3

cANCAまたはPR3-ANCA陽性

-1

好酸球数>1000/µL

-4

・149例のMPA症例と, 408例の対象群のデータを使用

・ValidationはさらにMPA 142例, 対象群 414例を追加し, 91項目の候補より最終的に6項目を抽出.

 対象群の疾患は以下;

 
granulomatosis with polyangiitis (n=300), eosinophilic granulomatosis with polyangiitis (n=226), polyarteritis nodosa (n=51), non-ANCA- associated small-vessel vasculitis that could not be subtyped (n=51), Behçet’s disease (n=50), IgA vasculitis (n=50), cryoglobulinaemic vasculitis (n=34), ANCA- associated vasculitis that could not be subtyped (n=25), primary central nervous system vasculitis (n=19) and anti-glomerular basement membrane disease (n=16). 

・5点以上で感度91%[85-95], 特異度 94%[92-95]


 DCVAS databaseでの評価では, 感度82.4%, 特異度 92.5%と感度が低下

・カットオフと感度/特異度


EGPAの分類基準 (Ann Rheum Dis 2022;0:1–6. doi:10.1136/annrheumdis-2021-221794)

閉塞性気道疾患

+3

鼻ポリープ

+3

多発性単神経炎運動神経障害

+1

好酸球数>1000/µL

+5

血管外の好酸球優位の炎症所見骨髄中好酸球増多

+2

顕微鏡的血尿

-1

cANCAまたはPR3-ANCA陽性

-3

・EGPA 107例と比較群 450例のデータを用いた

・Validationではさらに119例のEGPA, 437例の比較群を加え, 91項目の候補より最終的に7項目を抽出.

・比較対照群は以下

 
granulomatosis with polyangiitis (n=300), microscopic polyangiitis (n=291), polyarteritis nodosa (n=51), non-ANCA-associated small-vessel vasculitis that could not be subtyped (n=51), Behçet’s disease (n=50), IgA vasculitis (n=50), cryoglobulinemic vasculitis (n=34), ANCA-associated vasculitis that could not be subtyped (n=25), primary central nervous system vasculitis (n=19) and antiglomerular basement membrane disease (n=16). 

・6点以上で感度85%[77-91], 特異度99%[98-100]でEGPAを示唆


 DCVAS databaseでの評価では, 感度75%, 特異度99%と感度が低下

・カットオフと感度/特異度


糖尿病による関節・筋骨格系の症状

糖尿病患者では, リウマチ性疾患様の筋骨格系症状を呈することがあり, しばしばADLに大きく影響する.

・関節症状で紹介されるケースもあり, 関連する病態は押さえておくことは重要.

・関連する疾患/病態は以下の通り;

(Rheum Dis Clin N Am 36 (2010) 681–699)

・DMに関連する主な筋骨格系疾患の頻度

(Br J Sports Med 2003;37:30–35)


Diabetic Hand Syndrome(DHS): 糖尿病性手症候群

(Medicine 94(41):e1575)

・DM患者では様々な手の疾患を合併する.


 手根管症候群(Carpal tunnel syndrome: CTS)


 閉塞性屈筋腱鞘炎 (Stenosing flexor tenosynovitis: SFT)


 関節可動域制限 (Limited joint mobility: LJM)


 Dupuytren Contracture: DCなど が含まれる.

・DM患者606152例のフォローでは, 9年間で8.45%でDHSを合併

・年齢, 性別を合わせたコントロール群との比較では,

 
DHS全体 HR 1.51[1.48-1.53]

 
SFTのHR 1.90[1.86-1.95] 


 DDのHR 1.83[1.39-2.39]


 CTSのHR 1.31[1.28-1.34]


 LJMのHR 1.24[1.13-1.35] 

 若年ほどリスクは高い傾向.

・432例のDM患者における上肢の障害の頻度, リスク因子を評価した報告では, 

 頻度はSC 8.79%, CTS 8.56%, LJM 6.94%, DC 7.4%, TF 6.71%

 リスク因子は以下の通り: (JRHS 2014; 14(1): 93-96)


個別にみてみると,


Limited joint mobility(LJM): 別名糖尿病性手関節症

・主に手の手背側に硬く肥厚したワックスがかった皮膚を認め, MP, PIP, DIP関節の屈曲変形を特徴とする病態.

・1型DMの30-58%, 2型DMの45-76%で認められる
(非糖尿病患者では4-20%程度の頻度)


 長期罹患やコントロール不良のDMはリスクとなる.

・疼痛は伴わないが, 早期では軽度の疼痛や痺れが認められることがある

・複数の要因があり, コラーゲンの増加, 微小血管障害, 神経障害などが関連して生じると考えられている.

・診断は臨床所見で行われるが, 重要なポイントが2つある;


  Prayer sign: 拝むように, 両手の手掌を合わせることができない


  Table tap sign: 指を広げて手のひらをテーブルに置いた時, 手掌と指全体を平面に接触させられない.

・対応は理学療法. 疼痛があればNSAID.

 血糖コントロールは増悪を予防することを期待して行う.


Dupuytren拘縮

・手掌腱膜や皮膚が肥厚, 退縮し,
指が屈曲拘縮を生じる病態.


・DM患者では男女双方とも,
 第3,4指で生じやすい.

・非DM患者では男性で多く,
 第5指で生じやすい.

・DM患者における頻度は16-42%. 高齢者, 長期罹患がリスクとなる.


 一般人口では13%程度の頻度. 

・Dupuytren拘縮を認める患者におけるDMの頻度は13-39%であり, 
 Dupuytren拘縮では必ずDMを評価することが重要.

・遺伝的要因, 外傷, 長期間の高血糖, 微小血管障害, 虚血など多因子が関連している.


Flexor tenosynovitis (trigger finger): 

・腱鞘の線維性組織の増生により腱の運動が障害されて生じる


・DM患者の11%で認められる
(非DM患者では1%未満)

・DMによるFlexor tenosynovitisでは複数の指で生じ,
 多い部位は母指, 中指, 薬指.

・DM罹患期間が長いほど生じやすいが, 血糖コントロールとの相関はない


手根管症候群(CTS)

・手根管内で正中神経が圧迫される病態. 
一般人口の3.8%で認められるが, 
DM患者では神経障害(-)例で14%, (+)例で30%で合併

・DM罹患期間が長いほどリスクも高い

・握力の低下と手指の機能障害を呈し, 夜間に症状は増悪することが多い

・評価には身体所見が有用.
Tinel試験やPhalen試験, The hand elevation testがある.

・診断はMRIや神経伝導速度を行う


Adhesive capsulitis(癒着性関節包炎)

(Am Fam Physician. 2019; 99(5):297-300)

・主に肩関節で生じる(Frozen shoulder)

・肩甲上腕関節包の拘縮を特徴とし, 
進行性, 有痛性の肩関節運動障害で, 特に外転, 外旋が障害される.

・DM患者の10-29%で合併. Meta-analysisでは30%[24-37]


 同年齢の有病率は3-5%程度で, 40-60歳台の女性で多い.

 
DM以外にも甲状腺機能低下症もリスクとなる(27.3% vs 10.7%)

・両側性はDM関連で多い(33-42% vs 5-20%)

・DMの診断時に認められることがある.


Adhesive capsulitis(癒着性関節包炎)の臨床経過

・病期は疼痛期, 癒着/強直期, 改善期の3つに分けられる.


 Self-limitedで数年の経過で改善するが, 一部症例では慢性化したり, 
ROM制限を残すなどあり.

・著明なROM制限を伴う肩の疼痛で発症. 肩痛は全体的であり, 局所的な疼痛ではなく, 鈍い疼痛. 二頭筋への放散を伴うこともある.

・上腕の挙上や腕を背部に回す運動で疼痛は増強
屈曲, 外転, 外旋, 内旋のROM制限は特徴的な所見.

・体重減少や寝汗などの消耗症症状は認められない.


ACの鑑別疾患


ACの診断

・リスクがある患者や疑う症状があれば, 
糖尿病や甲状腺機能低下症の評価は行う.

・画像検査は他疾患の除外, 鑑別のために行うことが多い.

・肩関節の単純MRIでは, 烏口上腕靭帯肥厚, 烏口下脂肪組織の回旋区域への浸潤, 腋窩の肥厚所見が認められ, これら所見は癒着性関節包炎に対する特異性が高い所見. (Clin Imaging. Jul-Aug 2017;44:46-50.)


・烏口上腕靭帯肥厚 3.40±1.25mm vs 2.60±0.93mm


他にDMに関連する筋骨格系の障害

DISH: Diffuse idiopathic skeletal hyperostosis

・説明は別エントリー参照. http://hospitalist-gim.blogspot.com/2014/07/diffuse-idiopathic-skeletal.html

・2型DM患者の13-40%, 一般人口では2.2-3.5%で合併

・胸椎で生じる例が多く, 無症候性が多いが一部で脊椎の強直を認める


Neuropathic osteoarthropathy(シャルコー関節)

・神経障害を生じる様々な疾患に合併する, 進行性, 破壊性の関節症
糖尿病は最も多い原因疾患の1つ

・著明な関節変形や再発性潰瘍を呈し, 最終的には切断に至ることがある

・DMでは足関節や足指に多く認められる.

・機序は不明確なところが多いが, 繰り返す外傷, 感覚神経障害による感覚の低下, 微小骨折による損傷などが原因となる.


 また他の原因として, 神経障害が血流の増加を誘発し,
破骨細胞を刺激して骨吸収の増加, 骨粗鬆症,
骨折, 関節損傷を引き起こすことも指摘されている


 炎症も誘因となる

・関節内出血による破壊性関節炎, DMとの合併頻度は0.12%

・大半が外傷に由来するものであり, 
神経障害があると関節内出血に気付かず, そのまま酷使する為に生じる

・Risk Factors;

Risk

OR

Risk

OR

DM>=6yr

1.26[1.03-1.53]

肥満(BMI>30)

1.60[1.15-2.19]

HbA1c>7%

1.33[1.06-1.68]

神経障害

14.0[9.5-20.1]



上記双方

21.2[14.4-31.1]

(Am J of Med 2008;121:1008-1014)

Diabetic muscle infarction: 糖尿病性筋梗塞

(World J Nephrol 2018 March 6; 7(2): 58-64)(BMJ Open Diabetes Research and Care 2015;3:e000082.)

・DMでは稀な合併症.


 長期間のコントロール不良のDMに合併する報告が多い
(特に微小血管障害を伴う1型DM)

 動脈の閉塞には関連せず,
また, 糖尿病性ESRDを伴うことが多い

・急性経過の四肢筋痛と腫脹(触知可能なMassが34-44%)で発症し,
 運動で増悪する. 

 数日〜数週の経過で増悪を認める

・大腿が多いが, 下腿や上肢, 腹壁筋での発症もある.

・炎症反応や白血球は上昇する. CPKは正常〜軽度上昇程度であり, 疾患のマーカーにはなり難い.
MRIによる筋肉の評価は重要

・糖尿病性amyotrophyも類似した経過となりえる

 参考: http://hospitalist-gim.blogspot.com/2016/08/diabetic-amyotrophy.html

・DMI 126例のLiterature review:
 

 発症年齢は44.6歳[20-67], 1型DMでは35.9[20-65], 2型では52.2[34-67]
 

 2型DMが50%, 1型DMが41.7%
 

 DM発症〜DMI発症まで1型DMが18.9年[5-33], 2型が11.0[1-25]
 

 HbA1cは9.34%[5-21]と様々
 

 他のDM合併症を認める例(網膜症, 神経症, 腎症)が46.6%

・血液検査所見

・部位の分布: