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2022年2月28日月曜日

潰瘍性大腸炎とPR3-ANCA

潰瘍性大腸炎の患者でPR3-ANCAが陽性であった.

この意義は?


潰瘍性大腸炎におけるPR3-ANCAの陽性率

久留米大学病院で2015-2016年に診療したUC 102例, CD 67例, non-IBDの腸疾患 44例, 健常人 66例を対象にMPO-ANCA, PR3-ANCAを評価した報告.

(J Gastroenterol Hepatol. 2018 Sep; 33(9):1603-1607)

・UCの39.2%でPR3-ANCA陽性, 

 CDでは6.0%のみ.


・MPO-ANCAの陽性率はUCの12.8%と陽性はあるがPR3ほどではない.


・PR3-ANCAのTiter:
 2桁台〜100前半程度の上昇がありえる.


2011年までに紹介されたIBD患者142例を対象.

(Clinic Rev Allerg Immunol (2013) 45:109–116)

・初診時の冷凍保存されている検体を用いてPR3-ANCAを評価

・患者群は13.9±8.0年フォローされている

・疾患毎のPR3-ANCA陽性率は
 

 CD(74例): 2.7%, Titer 3.8[3.0-4.7]
 

 UC(48例): 29.2%, Titer 29.7[15.2-44.2]


 IC(20例): 15%, Titer 12.6[0.4-24.8]

・PR3-ANCA陽性の炎症性腸疾患の大半がUC

・各マーカーとUC, CDの鑑別能
: PR3-ANCAはよりUCを示唆する情報となる


GPA, IBDを始め, 様々な疾患におけるPR3-ANCA陽性率を評価

(Clinica Chimica Acta 424 (2013) 267–273)

・GPAにおける陽性率が60-75%

 
UCでは31%, CDでは1.9%程度.


福岡大学病院からの報告.
UC 173例(診断1ヶ月以内が77例), CD 110例, 他の腸疾患 48例, 健常人 71例においてPR3-ANCAを評価

(Gut Liver 2022;16:92-100)

・陽性率はUCで44.5%, CDで7.3%, 他腸疾患で2.1%, 健常人で1.4%

・Titerは2桁〜100前半が多い

・新規発症UC群では45/77で陽性(58%)であり, さらに頻度は高い

UCにおけるPR3-ANCA陽性, 陰性群の比較

・PR3-ANCA陽性例では重症例, 活動性が高い症例が多い.

新規発症例におけるPR3-ANCAの意義

・陰性例では軽症〜中等症のみ.
 陽性例では重症例〜中等症例が大半を占める

・Titerと活動性には相関性が認められる.

・また, 治療によりTiterは低下する


潰瘍性大腸炎におけるPR3-ANCAと治療反応性

・PR3-ANCA陽性のUCではTNF-α阻害薬や緩解導入療法の不応リスクとなる報告もある.


国内の単一施設におおいて, 寛解導入にTNF-α阻害薬を使用する50例の解析


(Inflamm Intest Dis 2021;6:117–122)

・このうち15例でPR3-ANCA陽性, 


 PR3-ANCA陽性はPrimary nonresponseのOR 19.29[3.30-172.67]と
リスクを上昇させる


活動性のUC患者159例後向き解析

(BMC Gastroenterol (2021) 21:325)

・このうち85例(53.5%)でPR3-ANCA陽性.

・
PR3-ANCA陽性例の方が有意に活動性が高い(MES)
 

 MES中央値: 3[2-3] vs 2[1-3]

PR3-ANCAと寛解導入療法への反応性.

・5-ASAへの反応は同等であるが, 
ステロイドへの反応性不良例の7割がPR3-ANCAが陽性例

・PR3-ANCA陽性UCはステロイドに対する反応不良のリスクとなる
(OR 5.19[1.54-17.50])

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まとめると

・UCにおいて3-4割でPR3-ANCAが陽性. 新規発症例ではさらに頻度は上昇する傾向.

 CDでは頻度は低く, 両者の鑑別に利用できる可能性がある.

・PR3-ANCA陽性のUCは活動性が高い傾向がある. 

 治療によりTiterは低下する.

・PR3-ANCA陽性のUCでは, ステロイドやTNF-α阻害薬へ反応性が悪い可能性がある.