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2021年3月21日日曜日

自己免疫性自律神経障害

自律神経障害を呈する病態は糖尿病による神経障害やアミロイドーシスなどの沈着性疾患, 薬剤性, 腫瘍性など様々ある. しばしば鑑別も難しいことも多い.

中枢では島回, 前帯状回, 視床下部, 脳幹の障害は自律神経障害を来す

この原因の一つに自己免疫性自律神経障害がある. この一部に抗gAChR抗体の関連が証明されており, 治療可能な自律神経障害として押さえておく事は重要である.


自律神経により影響をうける臓器, 自律神経障害による症状

(The American Journal of Medicine (2019) 132:420−436)

自律神経障害により影響を受ける臓器は以下のようなものがある:


さらに, 自律神経障害による症状:
・起立性の低血圧, 不耐症が主な症状となる
・他に重要な症状として消化管, 分泌線の障害(乾燥症状や発汗障害), 膀胱, 生殖器の障害など

Autoimmune autonomic ganglinopathy: AAG. 自己免疫性自律神経障害
(J Neurol Neurosurg Psychiatry 2017;88:367-368.)
・自己免疫機序で自律神経節が障害されることで生じる後天性の自律神経障害で疾患のおよそ半数にAChRに対する抗体との関連が認められる
・AAGにおよそ半数に抗gAChR抗体(ganglionic AChR)が認められ抗体量は重症度と相関性を認める.
 重症筋無力症で認められる抗筋AChR抗体との交差反応は認めない
・Pure autonomic failurePOTS, 
 自律神経障害+感覚障害やCNS障害
 自律神経障害+自己免疫疾患や腫瘍などで疑う病態.

gAChR抗体が関連する可能性がある病態
(
Autonomic Neuroscience: Basic and Clinical 146 (2009) 13–17)
・急性/亜急性の自律神経障害. 特にコリン性の要素の障害が目立つ場合
・緩徐進行性/慢性経過のPure autonomic failure
・POTS: 起立不耐症
CIA: 慢性経過の発汗障害, 熱不耐
・消化管運動の障害
・末梢のSmall fiber neuropathy(感覚障害, 発汗障害)

日本国内より, AAGで抗gAChR抗体陽性となった179例を解析.(2012-2018, Nakane)
(Journal of Autoimmunity 108 (2020) 102403)

・抗体は抗gAChRα3抗体陽性例が116, gAChRβ4抗体陽性が13
 残り50例はDouble positive.
発症年齢は55±21, 女性例が59%
 急性, 亜急性例が26%のみで, 3/4は慢性緩徐経過.
前駆症状は15%(26)のみ. インフルエンザ様症状(11), 腸炎(9), ヘルペスウイルス感染症(2), 精巣上体炎(1), クラミジア感染症, 外科手術

自律神経症状の頻度

・起立性低血圧/起立不耐症がおよそ8
・下部消化管症状も7割強と頻度が高い
・乾燥症状や発汗障害が4割強
・他に膀胱機能障害や性腺機能障害
抗体別の症状比較では, 起立性低血圧や不耐症は双方同等乾燥症状や発汗障害, 上部消化管障害, 感覚障害はβ4抗体の方で頻度が高い

自律神経外症状は83%

・感覚障害が45%(四肢末端のしびれ感, 感覚障害など)
・CNS障害が33%(精神症状, 性格変化, 認知機能障害, パーキンソン症状, 失調)
内分泌が15%(Na, 無月経, SIADH, 下垂体不全など)
自己免疫疾患が30%(SS 20, 橋本病13)
腫瘍が11%(卵巣腫瘍 5, 肺癌 5, 胃癌 3, 前立腺癌 1, 上顎洞, 縦隔, 胸腺, 精巣)
検査所見では, 
 CSFのリンパ球増多は14%, 軽度の上昇のみ.
 蛋白上昇が48%, 蛋白細胞解離は37%で認められる.
 MIBG心筋シンチにおいて取り込みの低下が認められるのが80%
 CVRRの低下も72%で認められる

gAChR抗体陽性AAG 19例とSeronegative AAG 87例の比較
(Arch Neurol. 2004;61:44-48)

・Mayo clinicAutonomic laboratoryに起立性低血圧で紹介となった患者群で, 二次性の原因(糖尿病, MSA, 薬剤など)が除外され, 特発性起立性低血圧と判断され, さらに抗aAChR抗体が評価された106例を抽出.
・このうち, 陽性例19例と陰性例87例を比較: 
 年齢は陽性群で63.4, 陰性群で61.9歳で有意差なし
 性別は74% vs 54%で陽性群は女性が多い(陽性群では2.8 : 1).
・抗体陽性例は前駆症状が多く, 亜急性経過が多い
 さらに乾燥症状や瞳孔異常, 消化管症状の頻度が高い


補足: AAGを含む, 末梢の自律神経障害をきたす自己免疫機序の病態
(Clinical Autonomic Research (2019) 29:277–288)
・これらは一部オーバーラップすることもある


・傍腫瘍症候群に関連する自己抗体と自律神経障害

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自律神経障害は日常生活に著しく障害を及ぼす病態である.
AAGでは, IVIGや血漿交換, 免疫抑制療法が効果的である可能性があり, この病態を把握しておく事は重要.
ただし, 抗gAChR抗体は現時点では保険収載はなく, 自費検査となるため, なかなか運用は難しいのが難点.