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2020年11月30日月曜日

待機的PCIを予定されているACS患者におけるチカグレロル vs クロピドグレルの比較

 TicagrelorはClopidogrelと同様, P2Y12受容体に結合し, 抗血小板作用をもつが, Clopidogrelは不可逆的な結合である一方, Ticagrelorは可逆的な結合である

安定したACS患者で, 待機的PCIが適応となる群, 且つ1つ以上の高リスク因子*を有する患者群を対象としたopen-label RCT.(ALPHEUS) (Lancet. 2020 Nov 12;S0140-6736(20)32236-4. doi: 10.1016/S0140-6736(20)32236-4.)

Ticagrelor vs Clopidogrel群に割り付け, PCI関連MI, Stent閉塞など比較

Ticagrelor: PCI前に180mg, 以後90mg bidで継続

 Clopidogrel: PCI前に300-600mg, 以後75mg/dで継続

*高リスク因子: >75, CCr <60mL/min/1.72m2, DM, BMI>30, 12M以内のACS既往, EF<40% and/or 心不全エピソード, 多枝病変, 複数のステント留置(1血管に2ステント以上, 2カ所以上の血管に3ステント以上, トータルで>30mmのステント), 左主幹部にステント, Bifurcationのステント, ACC/AHA type B2, C病変, グラフトに対するステント

母集団

・アスピリンは8割後半で使用している. 

・もともとClopidgrelを使用した症例が4割

アウトカム


PCI48hでのMIstent閉塞リスクなどは有意差を認めない

死亡リスクや30日以内のMIは有意差なし

出血リスク
・Major bleedingは両者で有意差を認めないが, 30日以内のMinor bleedingは有意にTicagrelorでリスクが上昇.


2020年11月29日日曜日

Febuxostatは心血管死亡リスクとなる?(2020/11/29 UpDate)

CARES trial: 痛風と主要な心血管疾患の既往がある患者群を対象としたDB-RCT.
(N Engl J Med 2018;378:1200-10.)
・心血管疾患: 心筋梗塞, UAPでの入院, Stroke, TIAでの入院, PAD, DMMicrovascular, Macrovascularの障害を認める患者群.(n=6190)
さらにUA ≥7.0mg/dLもしくは痛風治療を1-3wk中断後のUA≥6.0mg/dLを満たす群を対象.

上記をFebuxostat vs Allopurinol群に割付け, 心血管イベントを比較.
・Allopurinol投与量
 eGFR≥60ml/minでは300mg/dで開始し, UA<6.0mg/dL達成まで100mg/moで増量, Max 600mg/d
 eGFR 30-60ml/minでは200mg/dで開始. Max 400mg/d
・Febuxostat投与量:
 40mg/dで開始し, 2wk後フォロー. UA≥6.0mg/dLならば80mg/dに増量

母集団

アウトカム

Primary outcomeは有意差なし.
 個別に見ると, 心血管死亡リスクがFebuxostat群で上昇する結果.

2020/11/29 UpDate

FAST trial: 60歳以上で, 痛風既往がありAllopurinolを使用している患者群を対象とし, FebuxostatAllopurinolの心血管イベントリスクを比較したopen-label RCT
(Lancet. 2020 Nov 6;S0140-6736(20)32234-0. doi: 10.1016/S0140-6736(20)32234-0.)
・患者は60歳以上で, 1つ以上の心血管イベントリスクを有する患者群.
・6ヶ月以内のMI, Stroke既往がある患者, 重度の鬱血性心不全(NYHA III-IV), 重度の腎障害がある患者は除外

Allopurinol継続群(UA<6mg/dLを目標) vs Febuxostat切り換え群(80mg/dより開始, 必要に応じて120mg/dに増量)に割り付け, 心血管アウトカムの頻度を比較した.

6ヶ月間の痛風予防投与を全例に推奨.
 予防投与はコルヒチン0.5-1.0mg/d, 第二選択としてNSAID

母集団

アウトカム
・心血管イベントや死亡リスクは両者で有意差なし

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同様に痛風患者で心血管リスクを有する患者群を対象とし, FebuxostatとAllopurinolで心血管イベントを比較した大規模StudyであるCARESとFASTにおいて, 一方では心血管死亡リスクが上昇したとの結論で, もう一方では有意差は認めない結果となった.

CARESに登録されている患者の脱落した患者群を追跡調査した結果, CARESにおける心血管死亡リスクに有意差は認められなくなったことが判明しており, 結局ところ、FebuxostatがAllopurinolと比較して心血管死亡リスクを増やす根拠はない可能性が高い.

2020年11月26日木曜日

抗GBM抗体とANCAのDouble positive

 抗GBM抗体は基底膜に対する自己抗体で, 主に糸球体基底膜と肺胞基底膜に作用し, 糸球体腎炎や肺胞出血をきたす病態.

この抗GBM抗体症候群の10-40%でANCAも陽性となることが知られている.(反対にANCA関連血管炎では抗GBM抗体が陽性となるのは5-14%)(Clin Rheumatol (2013) 32:1317–1322).

この双方が陽性となる病態をDouble positiveと呼ぶ.

Nが大きい報告からは,

ANCA陽性例954例のうち, GBM抗体陽性が5%.

 GBM抗体陽性例121例のうち, ANCA陽性は32%

 DP82%MPO-ANCA (Kidney International, Vol. 66 (2004), pp. 1535–1540 )

ヨーロッパ北部の4箇所のNephrology centers2000-2013年に診断したAAV, GBM症候群646例の解析では,

 Single positive AAV568,

 GBM症候群(単独)41,

 Double positive37.(GBM抗体陽性例の47%, AAVのうち6.1%) , DPではMPO-ANCAが7割. (Kidney International (2017) 92, 693–702)


この2つめの論文では3者の比較もあり.

経過はAAVDPは亜急性経過で, GBM抗体単独群は急性

・肺病変や腎障害の程度はDP, GBM症候群で多い/高度

・年齢分布: GBM抗体単独群は若年でも多いがDPAAVは主に高齢者.


腎予後の比較

・生命予後は3者で差はないものの腎予後はDP, GBM抗体症候群で有意に悪い.

・初期から透析が必要な例が半数近い

・抗GBM抗体症候群は再発は少ない疾患であるが, DP群はAAVと同様の再発リスクがある.


腎病理の比較

DPと抗GBM抗体症候群の比較では, 双方とも免疫蛍光法でLinear IgGの沈着が認められる.

尿細管萎縮がDPで多い.


半月形成糸球体腎炎症例においてMPO-ANCA陽性例 46, DP 10, GBM抗体症候群 13例の腎病理を比較した報告(American Journal of Kidney Diseases, Vol 46, No 2 (August), 2005: pp 253-262 )


・DP双方の所見を有する

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DPは腎予後は抗GBM症候群なみに悪くて、しかも再発はAAV並みにあると、

嫌なトコ取りな感じ


2020年11月17日火曜日

関節リウマチや乾癬性関節炎で使用する生物学的製剤使用時の感染症リスクのまとめ

 ちょうど良いReviewがでましたので要点をまとめ:

Ann Rheum Dis. 2020 Dec;79(12):1532-1543.

Infectious complications of rheumatoid arthritis and psoriatic arthritis during targeted and biological therapies: a viewpoint in 2020

TNF阻害薬における感染症リスク
RCTより:

Observational Studyより:

TNF阻害薬による感染症: 要点

・重大な感染症に罹患した場合, TNF阻害薬は一時的に中止すべき. 感染症が治癒し, 安定すれば再開を考慮する


TNF阻害薬開始前に潜在性結核の評価を行う. また活動性結核を除外し, リスク因子も評価すべき. 潜在性結核と判断された場合, 抗結核薬による治療を行う.


TNF阻害薬はHBVの排除や再活性化に影響する. TNF阻害薬開始前にHBs抗原, HBc抗体による評価を行うべきである


TNF阻害薬使用者において, 細菌感染や真菌感染症予防はルーチンに行う必要はない. 年齢に応じたワクチン(肺炎球菌), インフルエンザ, 他のワクチンは推奨される.

 一部の生ワクチン(VZV, MMR)TNF阻害薬使用患者への投与は避けるべきかもしれない.


TNF阻害薬以外の生物学的製剤における感染症リスク


TNF阻害薬以外の生物学的製剤による感染症: 要点

IL-6阻害薬もTNF阻害薬と同程度, 感染症全体のリスクを上昇させる. また, CRPを抑制することで感染症に気づきにくくさせる可能性がある.

IL-6阻害薬における潜在性結核における再活性化のリスクはTNF阻害薬よりも低い可能性が高いが, それでも使用前に評価, 抗結核薬の使用は推奨される.


IL-17阻害薬は投与量依存性に皮膚粘膜カンジダ症(口腔や陰部)リスクを上昇させる. 軽症~中等症がほとんど.


JAK阻害薬は帯状疱疹(多分節, 播種性含む)のリスクを上昇させる. 特に65歳以上, ステロイド併用者ではリスクは高い. アシクロビル/バラシクロビルによる予防投与はリスクが高い患者群で考慮する


RTX投与による低γグロブリン血症では, 莢膜を有する細菌感染のリスクを上昇させる可能性がある. 年齢に応じた肺炎球菌, H. Influenza B, インフルエンザに対するワクチン接種を行うべきである

RTXHBVの再活性化リスクとなりえる. 使用前にHBVのスクリーニングを行うべきである. HBsAg陽性例では, RTX終了後12-18ヶ月間は予防投与を行うべき. また予防投与終了後12ヶ月間はHBVの再活性化のフォローを行う(HBV-RNA). HBsAg陰性, HBc抗体陽性例でも予防投与を行う.


生物学的製剤使用者におけるワクチンの推奨


生ワクチン接種時における免疫抑制治療のWaiting period



2020年11月10日火曜日

抜管後の誤嚥リスクを評価する

 (Chest. 2020 Nov;158(5):1923-1933.)

気管挿管後では誤嚥リスクが上昇する.

抜管後はBSE(Bedside swallowing evaluation)を行うことが推奨されるが, Meta-analysisではBSEと軟性鏡を使用した嚥下評価(FEES: Flexible endoscopic evaluation)やVideofluoroscopic swallow studyの結果とは解離が生じることが指摘されている.

急性呼吸不全で48h以上挿管管理されていた患者群を対象とし, 抜管後にBSE, FEESを行い, 誤嚥リスクを評価.

・Gold standardFEES(Flexible endoscopic evaluation of swallowing)としBSE(Bedside swallowing evaluation)の有用性を評価し, さらに有用な項目を用いたDecision Treeを作成した.

急性呼吸不全で48h以上気管挿管され, ICU管理となった成人患者 248例において, 抜管後BSE, FEESを施行

 挿管管理時間は126h[72-206]

 BSEは抜管後25h[21-45]で施行されFEESBSE1h[0.5-2]に施行された.

・BSEで誤嚥無しと判断された例が64

 FEESで誤嚥無しと判断された例が143

 BSEで誤嚥ありと判断された例が149

 FEESで誤嚥ありと判断された例が70(33%[26.6-39.2])

BSEは感度は良好だが, 特異度は低い
 嚥下試験は液体を使用する方法が感度が良好

Decision Algorithm

・挿管管理の時間

・水飲み試験
・APACHE IIスコア
・声の質
・内科, 心疾患か他か

・上記の5項目がリスクと関連
 この方法により感度95%[90-98], 特異度67%[60-73]で誤嚥リスクを評価可能
・リスクがある症例でFEESを行えばよい.

2020年11月5日木曜日

心筋梗塞後のコルヒチン: LoDoCo2 trial

 COLCOT trialについてはこちら

心筋梗塞予防に少量コルヒチンが有用だというCOLCOT trialに続いて, LoDoCo2 trialが発表

(N Engl J Med. 2020 Aug 31. doi: 10.1056/NEJMoa2021372.)

LoDoCo2: CAD患者における少量Colchicineを評価したDB-RCT

・35-82歳で冠動脈カテーテル, 冠動脈CTで冠動脈疾患が認められる患者, または冠動脈Caスキャンにおいて, Calcium score≥400 Agatston unitsを満たす患者群で, 導入まで6ヶ月以上安定していた患者群を対象

・中等度以上の腎障害, 重症心不全, 重症弁膜症, Colchicineによる副作用を経験したことがある患者群は除外

上記を満たす患者群をOpen-labelColchicine 0.5mg/d1ヶ月間使用し問題なく継続できた群を0.5mg/d vs Placeboに割り付け, 継続した

・心血管死亡リスク, MI, 脳梗塞など血管イベントリスクを比較した

母集団: N=5522

・腎障害はKDIGO 1-2が大半で, 3a5-6%程度のみ

・8割が再灌流療法施行歴がある


アウトカム


・心血管死亡, 心筋梗塞, 脳梗塞, 心筋虚血リスクは有意にColchicineで低下.

個別の評価では,MIリスク 0.70[0.53-0.93]と有意に低下

 3.0% vs 4.2%, NNT 83

他は有意差なし


副作用

痛風発作リスクは低下 NNT 50

・筋痛は増加する

2020年11月3日火曜日

側頭動脈炎における側頭動脈生検の長さは1.5-2.0cmが良いかも

 (Optimal length and usefulness of temporal artery biopsies in the diagnosis of giant cell arteritis: a 10-year retrospective review of medical records. Lancet Rheumatology 10.1016/S2665-9913(20)30222-8)

側頭動脈炎における生検のサイズは, EULARでは1cm以上採取することで組織所見陽性となるORが上昇するとの推奨がある.

Alberta2008-2018年に施行された側頭動脈生検症例を後ろ向きにReview

・1163例より, 1190件の側頭動脈生検を評価した.

 このうち222(18.7%)で側頭動脈炎と診断

・側頭動脈生検陽性に関連する因子は,

 年齢, ESR亢進, CRP高値, 生検の長さが要因として挙げられる



生検のサイズと組織所見陽性となるOR

・1.5cm以上でORは上昇.

 2.0cm以上採取してもORは上昇せず. 取りすぎても意味はない.

・1.5cm-2.0cm程度が理想と言える結果.

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近年は生検にエコーや造影MRI, PETといった生検に変わる診断方法が広がっており, 生検自体減っているような印象を受ける.

生検するならば可能ならば1.5-2.0cm程度, ということを覚えておこう