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2020年10月31日土曜日

Iphoneに接続して使うエコー、Butterfly IQを島国日本から導入してみ た 日記 その3

 その1, その2

大変苦労して, Butterfly IQを9月中旬に購入. 

知り合いにUSPSにて送っていただいたのですが, コロナ禍, 米国大統領選挙のアレやコレによりUSPSはパンクしており, 届くのに1ヶ月かかりました.

保険をケチったので, 紛失されたら2000ドルがパーになるので, 気が気じゃなかったです.

そしてついに届きました!


Butterfly IQ !!!


一つ悲しいお知らせがあり, この待っている1ヶ月の間に, なんと

New modelであるButterfly IQ+が発売. しかもキャンペーンでライセンス料が99ドル/年(通常420ドルくらい)とか...

(あと2週間待ったらよかったやん... orz)

これから購入する方には朗報ですけどね.


早速外来デビューさせてみました感想を簡潔に述べます.

・起動がほぼノータイム 使いたい時すぐいける

・インターフェイスがとても使いやすい. 後述

・画像は綺麗. 大体満足がいく画質, フレームレートです.


いまのところはかなり満足度が高いです.


充電はこのような台に乗せると充電してくれるようなタイプです. コードはUSB.


Iphoneにコネクターを差し込み, アプリを起動するとすぐに立ちあがります.

プリセットは18-19個くらいあって,

心臓, 腹部, 肺, 筋骨格, 軟部組織, FAST, 血管などなど, その部位に合わせた最適な設定になります.



筋骨格エコーの設定で起動.
この画面で, 縦にスワイプすると, 深度が変わります. 
横にスワイプすると, ゲインが調節可能. これも直感的でよいです

下部の一番右の[Action]をタップすると,
このようにラベルを貼れたり,
カラードプラ, パワードプラ, M-modeに切り替えができます.
血管ですと, パルスドプラなどもあります.

パワードプラの画像
これも横にスワイプすると, 感度が調節できます.
縦にスワイプで深さ.
ドプラの範囲は中央の□をタップして移動や縮小/拡大が可能

また, ビデオマークで動画撮影が,
青色十字っぽいマークをタップすると静止画となり, 距離の測定や画像の保存が可能です.

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直感的に色々操作できるインターフェイス. 
ほぼ待ち時間なく起動ができ, 外来でもサっと検査ができる簡便さ.
これは捗る, と思いました.

僕はこのプローブとゼリーを使ってないサコッシュに入れて肩から下げて移動しています.

また使い込んだらレビューします.


2020年10月29日木曜日

超高齢者のAfにおけるエドキサバンの少量投与

 (N Engl J Med 2020; 383:1735-1745)

ELDERCARE-AF: Low-dose EdoxabanStudy

・80歳以上の日本人の, 非弁膜症性のAf患者で通常投与量の抗凝固療法が適応困難*と判断された患者を対象.

 CHADS2スコア≥2

 *CCr 15-30mL/min/1.73m2, 消化管や致命的な臓器での出血エピソード, 低体重(≤45kg), NSAIDの継続投与, 抗血小板薬の併用など

・上記を満たす患者群 984例を,

 Edoxaban 15mg/d vs Placeboに割り付け, 血栓症リスク, 出血リスクを比較

母集団


アウトカム


・脳梗塞リスクは有意に低下: HR 0.31[0.16-0.59], NNT 24

 脳出血は差は認めず.

 全身の塞栓症は有意差なし

Major bleedingのうち, 消化管出血リスクは有意に上昇する: HR 2.85[1.03-7.88], NNH 67

・Major, clinically relevant nonmajor bleedingは有意に上昇: HR 1.65[1.20-2.27], NNH 14 

全出血リスク NNH 5.6

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80歳を超える超高齢のAf患者では, 半量のEdoxabanでも十分な脳梗塞予防効果が見込めるものの, 出血リスクの上昇も顕著.

Major bleedingでは消化管出血がNNH 67. 脳梗塞予防のNNT 24と比べると軽いとは言えるが, 何かしらの出血は起こると考えておいた方が良い(全出血 NNH 5.6)

適応をしっかりと患者毎に吟味すれば, 良い選択となるかも

2020年10月28日水曜日

持続的透析治療における抗凝固薬の比較: 回路内クエン酸 vs 全身ヘパリン投与

 (JAMA. 2020;324(16):1629-1639. doi:10.1001/jama.2020.18618 )

RICH: 重度AKIや臨床的に透析療法を必要とするICU患者を対象とし, 持続的腎代替療法中の抗凝固薬として, 回路内クエン酸Na使用群 vs 全身UFH投与群に割り付け, 透析膜寿命を比較したRCT

患者群は以下の全てを満たす群

(1) KDIGO stage 3AKIまたは透析の絶対適応となる病態(BUN>150mg/dL, K>6mEq/L, Mg>4mmol/L, pH<7.15, 尿量<200mL/12h, 体液過多による肺水腫で利尿薬に反応しない)

(2) 1つ以上の病態: 重症敗血症以上, 昇圧薬使用, 治療不応生体液過多

(3) 18-90

(4) 3日間以上のICUでの集学的治療を行う予定の患者

(5) インフォームドコンセント取得

除外項目は以下;

・出血リスクが高い, 出血素因がある, 治療として抗凝固が必要使用する薬剤にアレルギー歴がある, HITの病歴, 維持透析患者永久的な腎動脈閉塞や手術治療の適応となる病変によるAKI, 糸球体腎炎によるAKI, 間質性腎炎, 血管炎, 腎後性腎不全, 12ヶ月以内の腎移植歴, HUS/TTP, 妊婦, 持続的な重度の乳酸アシドーシス*(pH<7.2, Lac>8mmol/L2h以上), 急性肝不全*, ショック*

*クエン酸の貯留, 中毒のリスクとなるため除外された.

・回路内クエン酸投与群では, フィルター前方で回路内に投与し, フィルター後のイオン化Ca 0.25-0.35mmol/Lを目標に調節

・全身的UFH投与群では, aPTT 45-60secを目標に投与

・血流量は100mL/. フィルターは72h毎に交換した

母集団


アウトカム

・計画ではN=1260の導入を予定していたがN=638の時点で, フィルター寿命に有意差を認め, 早期終了となった.

フィルターの寿命はクエン酸群で44.9h, UFH群で33.3h有意にクエン酸群で良好(AD 11.2h[8.2-14.3]).

出血リスクも有意にクエン酸群で低い結果5.1% vs 16.9%, AD -11.8%[-16.8~-6.8]

透析開始後~感染症リスクは有意にクエン酸群で上昇する: 68.0% vs 55.4%, AD 12.6%[4.9-20.3]

・ICU滞在期間や死亡リスクは有意差ないが早期終了のため, 評価は不十分とされている

感染症の詳細

・グラム陽性菌の頻度が上昇. 感染源が判明している例では, 菌血症, 肺炎, UTIなどに差はない.

感染症頻度は, フィルター寿命がないほどリスクが上昇している(12h延長毎にOR 1.08[1.05-1.11])

合併症頻度

・低P血症やアルカローシスがクエン酸群で多い

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・持続透析を行う場合, 回路内クエン酸投与はUFHと比較してフィルター寿命を有意に延長させる. また出血リスクも有意に低下させる.

・しかしながらフィルター寿命が長くなると, その分感染症が増加するリスクとなる.

・クエン酸の副作用としては低P血症やアルカローシスに注意.

・リスクとベネフィットを考慮して選択するよい

2020年10月27日火曜日

低Na血症の補正: 3%食塩水 ボーラス投与 vs 持続投与の比較

 (JAMA Intern Med. doi:10.1001/jamainternmed.2020.5519)

SALSA: 成人例の症候性*の低Na血症患者(≤125mEq/L)を対象とし, 間欠的ボーラス投与群 vs 持続投与群に割り付け比較

・*中等度の症状: 頭痛, 眠気, 倦怠感, 不快感

 重度の症状: 嘔吐, 意識障害, 痙攣, 昏睡(GCS≤8)

神経因性多飲症, 妊婦/授乳婦, 無尿, 低血圧, 肝疾患(AST,ALT>3ULN), 非代償性肝硬変, コントロール不良のDM(HbA1c>9%), 心臓外科手術既往, AMI, ACS, 頭部外傷, 3ヶ月以内の頭蓋内圧亢進歴は除外

間欠的ボーラス投与のレジメ


持続投与のレジメ

Relowering治療は5%ブドウ糖を10mL/kg, 1hで投与 and/or IVデスモプレシン 2µgを使用する.

母集団

・重症例が1/4程度含まれる


アウトカム

過度補正の頻度(24h>12mEq/L, 48h>18mEq/Lの補正)

・24-48hにおける症状残存率

・治療開始後~ 5mEq/L上昇までの時間

 治療開始後~130mEq/L達成までの時間

・良好な補正達成率: 24h5-9mEq/L上昇, 48h10-17mEq/L上昇または130mEq/L達成で定義


過補正率は両者で有意差なし

・目標値達成までの時間も両者で有意差なし.

・Relowering治療は持続投与群で多くなる

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・重度の低Na血症において, ガイドラインで推奨される3%食塩水のボーラス投与.
 実臨床では, ボーラス投与により過度にNaが上昇してしまうのではないか, という懸念があり, 避けられている状況もある.
・このRCTでは, ボーラス投与でも過補正のリスクは持続投与と変わらず, Relowering治療の必要となる例も少ないという結果であった. 安全に施行できそうな治療と言えそう.


2020年10月26日月曜日

若年の繰り返す偽痛風. その背景に成人発症の低ホスファターゼ症

 20歳台後半〜急性の関節痛、関節腫脹を繰り返し, NSAIDで改善する経過を有する40歳男性.

そのうち自然と治るのでそのまま様子を見るようになったが, ここ数カ月, 持続的な関節炎となり受診した.

結果的に結晶性関節炎を繰り返し, 慢性的な関節障害, 炎症となったと判断したが, 若年で繰り返すCPPD, この背景疾患は何なんだろうか?


ふと一連の血液検査の経過をレビューしてみると, 初診時から一貫してALPが正常下限値よりも低い状態が持続していた.

基礎疾患, 低栄養, 薬剤でこの低ALPとなる原因は認められない.

これは, もしかすると成人例の低ホスファターゼ症による繰り返す偽痛風では? ということで勉強します.


低ホスファターゼ症

低ホスファターゼ症はALPをエンコードするALPL geneの異常により生じ, , , 腎におけるALP活性が低下する病態

・重症度により症状は様々であり重症例では小児, 乳児期の骨形成不全, 痙攣, Ca血症 から,成人発症の乳歯の早期脱落以外何も症状を認めない例まである (Curr Osteoporos Rep (2016) 14:95–105)

・臨床分類では6:

周産期重症型

胎児期〜新生児期

重度の骨石灰化障害呼吸障害生命予後不良

周産期良性型

胎児期〜新生児期

長管骨の彎曲生命予後良好

乳児期型

生後6ヶ月まで

発育障害くる病様骨変化呼吸器合併症

小児型

生後6ヶ月〜18歳未満

乳歯早期脱落くる病様骨変化

成人型

18歳〜

骨折偽骨折骨軟化症筋力低下

歯限局型

様々

乳歯早期脱落歯周疾患


発症のタイミングと症状/障害臓器

(Curr Osteoporos Rep (2016) 14:95–105)

血液検査では, 血清ALPが低値になるこの点で臨床的に気づきやすい.
・小児の成長期において, ALPが低値なのは明らかに異常.
他にALPが低下する原因
 低栄養, 栄養障害, ビタミンD中毒, 内分泌疾患など
(Bone 102 (2017) 15–25)

成人における低ホスファターゼ症
・成人発症例では無症候性, 非特異的な骨痛, 関節痛, 歯牙の早期脱落, BMDの低下や,軟骨へのヒドロキシアパタイトの沈着による可動域制限,Rotator cuff, , アキレス腱の石灰沈着といった軽度な症状から繰り返す骨折既往, 骨折後の治癒の遅延などが認められる.

・成人例では, 繰り返す骨折や骨粗鬆症の精査においてALPが低値である場合に疑い, その後フォローし持続的低値を確認さらに他にALPが低下する原因を除外する
・さらにPyridoxal-5’-phosphage(Vit B6), 尿中PEA(phosphoethanolamine)の上昇があれば診断をサポートする
・繰り返す偽痛風も診断のきっかけになり得るかもしれない
(Journal of Bone and Mineral Research, Vol. 32, No. 10, October 2017, pp 1977–1980 )

成人で診断されたHPP患者22例の解析 (Bone 54 (2013) 21–27 )
・発症年齢は30-50歳台で多い.  
・家族歴を有する例は少ない
・症状は筋骨格性疼痛, 骨折など. 
 軟骨石灰化や偽痛風症例もある.
・血清ALP値の中央値は正常下限の40%程度. 

骨折既往あり, なしで分けて比較
・骨折(-)の3割が偽痛風症例. 無症候例は半数.

成人例のHPP 38例の解析
(Osteoporos Int2017 Sep;28(9):2653-2662.)
・骨密度は正常となる患者が多い
・ALPは正常下限ギリギリ〜1/3以下の低下まで様々

臨床的特徴
・骨折既往は4割弱
・歯牙の異常が5割程度
・軟骨石灰化, CPPDによる関節痛症例は8例.
・繰り返す筋骨格性疼痛も4割. 持続性疼痛など疼痛は色々なパターンがある.

各症状別の対応
骨折, 骨粗鬆症にはテリパラチドも効果的

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・成人発症の低ホスファターゼ症は、若年の骨粗鬆症, 骨折, 繰り返す偽痛風, 歯牙の異常で考慮する. 
・説明のつかない持続的なALP低値で疑う

という感じ

2020年10月14日水曜日

腰椎穿刺における凝固障害とSpinal hematomaの関係

 参考 血小板減少患者での腰椎穿刺

(JAMA. 2020;324(14):1419-1428. doi:10.1001/jama.2020.14895 )

凝固障害とSpinal hematomaの関係を評価したCohort

デンマークにおけるnationwide, population-based cohort.

 2008-2018年に腰椎穿刺を行った83711件を評価し施行後30日以内のSpinal hematomaの頻度, リスク因子を評価.

・凝固障害はPLT <15/µL, INR >1.4, APTT >39secで定義


母集団

・全体におけるSpinal hematomaの頻度は0.20%[0.16-0.24]

 凝固障害(+)では0.23%[0.15-0.34]と有意差なし

・リスク因子は男性例(HR 1.72[1.15-2.56])

 41-60(HR 1.96[1.01-3.81]), 61-80(HR2.20[1.12-4.33])


凝固障害の程度とリスク

・PLT低下, INR延長, APTT延長の程度別の評価でも特に頻度に差はない 

・さらに凝固障害の程度, LP施行の背景疾患(感染症, 神経疾患, 血液悪性腫瘍, 小児例)の比較でも差はない結果.


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デンマークのコホートからは, 凝固障害の有無でLPにおけるSpinal hematomaのリスクは変わらない結果.

腰椎穿刺を行う状況は, 大抵急ぎで行う状況だと思われるため, 余程ひどい出血傾向がない限りは, 必要があれば行うべきと思う. 

2020年10月8日木曜日

皮膚筋炎+肝障害

皮膚筋炎で徐々に肝障害が増悪した経過を辿った症例があった.

皮膚筋炎自体で肝炎を合併しやすい/するという認識があまりなかったため, 当初は薬剤による肝障害を考えていたが, 治療強度を強めることで反対に改善を認めたため, 皮膚筋炎に伴う肝障害であろうと判断した.

そこで調べてみると, 近年国内から発表された論文が目についた.

38例のPM, 77例のDM患者を後ろ向きに解析した報告(国内)

(Rheumatol Int. 2019 May;39(5):901-909.)

・このうち, 肝障害はDM患者の17%(13/77), PM患者の3%(1/38)で認められた.

 大半がDM患者で認められる

悪性腫瘍を認めないDM 50例の評価ではこのうち10例で肝障害.

・この10例全例で抗MDA5抗体陽性

・抗MDA5抗体陽性例の27例中半数以上で肝障害を認める

・血球は両者で有意差はない

これらのうち, 肝生検を行った5例の病理結果からは,

・薬剤性肝障害, 脂肪性肝炎, 急性肝障害/肝炎, PBC疑い, AIH疑いとの所見


抗MDA5抗体陽性のDMでは肝障害を合併しやすい傾向がありそう.

件の症例も抗MDA5抗体陽性例であった.

抗MDA5抗体陽性のDMでは, 急性の重症間質性肺炎や血管炎, 皮膚障害, 関節炎など様々な臓器に炎症を呈する. この一つとして肝障害が生じるのかもしれない.

また, この症例ではフェリチンも上昇(2000-3000)していたことから, Macrophage activation syndromeの可能性も疑った.


DMによるMacrophage activation syndromeの報告

(Rheumatol Int. 2020 Jul;40(7):1151-1162.)

・DMMAS/血球貪食症候群が合併した報告もあり2020年発表のLiterature reviewでは19例の症例報告がまとめられた

DM発症からMAS発症までは3ヶ月以内. MASが先行する症例もあり

・ステロイド単独の治療では不十分であり, 他の免疫抑制療法, RTX, 血漿交換など使用されている.

この19例中, 6例は抗MDA5抗体陽性例

 他の13例のうち, 明確に抗MDA5抗体を評価し, 陰性となったのは1例のみ

 他は未評価. 陽性の可能性はあり.


抗MDA5抗体陽性DM, 肝障害でさらに血球が低下し始めればMASへ移行していた可能性も.

この疾患はDMだけにとどまらず, 多臓器に炎症を呈する病態となり得るため, 注意が必要.

同様に炎症性サイトカインが暴走する病態として, IVLやAOSD, 最近ではCOVID-19など念頭に上がるが, その鑑別の一つに抗MDA5抗体も覚えておきたい.

2020年10月7日水曜日

COVID-19に対するステロイドのMeta-analysis

COVID-19に対するデキサメサゾン(2020/10/7 UpDate)

COVID-19肺炎に対するヒドロコルチゾン

COVID-19に対するメチルプレドニゾロンのRCT


これらのRCTと小規模の2つのRCT, 合計7 RCTsでMeta-analysisを施行
(JAMA. 2020;324(13):1330-1341. doi:10.1001/jama.2020.17023 )


患者群の詳細のまとめ

アウトカム
・全死亡リスクはOR 0.70[0.48-1.01] 有意差はないが低下する可能性はあり

Sub解析
・年齢や性別, 症状出現~の期間では差はない
・昇圧薬非使用例では低下する可能性が高い