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2020年10月26日月曜日

若年の繰り返す偽痛風. その背景に成人発症の低ホスファターゼ症

 20歳台後半〜急性の関節痛、関節腫脹を繰り返し, NSAIDで改善する経過を有する40歳男性.

そのうち自然と治るのでそのまま様子を見るようになったが, ここ数カ月, 持続的な関節炎となり受診した.

結果的に結晶性関節炎を繰り返し, 慢性的な関節障害, 炎症となったと判断したが, 若年で繰り返すCPPD, この背景疾患は何なんだろうか?


ふと一連の血液検査の経過をレビューしてみると, 初診時から一貫してALPが正常下限値よりも低い状態が持続していた.

基礎疾患, 低栄養, 薬剤でこの低ALPとなる原因は認められない.

これは, もしかすると成人例の低ホスファターゼ症による繰り返す偽痛風では? ということで勉強します.


低ホスファターゼ症

低ホスファターゼ症はALPをエンコードするALPL geneの異常により生じ, , , 腎におけるALP活性が低下する病態

・重症度により症状は様々であり重症例では小児, 乳児期の骨形成不全, 痙攣, Ca血症 から,成人発症の乳歯の早期脱落以外何も症状を認めない例まである (Curr Osteoporos Rep (2016) 14:95–105)

・臨床分類では6:

周産期重症型

胎児期〜新生児期

重度の骨石灰化障害呼吸障害生命予後不良

周産期良性型

胎児期〜新生児期

長管骨の彎曲生命予後良好

乳児期型

生後6ヶ月まで

発育障害くる病様骨変化呼吸器合併症

小児型

生後6ヶ月〜18歳未満

乳歯早期脱落くる病様骨変化

成人型

18歳〜

骨折偽骨折骨軟化症筋力低下

歯限局型

様々

乳歯早期脱落歯周疾患


発症のタイミングと症状/障害臓器

(Curr Osteoporos Rep (2016) 14:95–105)

血液検査では, 血清ALPが低値になるこの点で臨床的に気づきやすい.
・小児の成長期において, ALPが低値なのは明らかに異常.
他にALPが低下する原因
 低栄養, 栄養障害, ビタミンD中毒, 内分泌疾患など
(Bone 102 (2017) 15–25)

成人における低ホスファターゼ症
・成人発症例では無症候性, 非特異的な骨痛, 関節痛, 歯牙の早期脱落, BMDの低下や,軟骨へのヒドロキシアパタイトの沈着による可動域制限,Rotator cuff, , アキレス腱の石灰沈着といった軽度な症状から繰り返す骨折既往, 骨折後の治癒の遅延などが認められる.

・成人例では, 繰り返す骨折や骨粗鬆症の精査においてALPが低値である場合に疑い, その後フォローし持続的低値を確認さらに他にALPが低下する原因を除外する
・さらにPyridoxal-5’-phosphage(Vit B6), 尿中PEA(phosphoethanolamine)の上昇があれば診断をサポートする
・繰り返す偽痛風も診断のきっかけになり得るかもしれない
(Journal of Bone and Mineral Research, Vol. 32, No. 10, October 2017, pp 1977–1980 )

成人で診断されたHPP患者22例の解析 (Bone 54 (2013) 21–27 )
・発症年齢は30-50歳台で多い.  
・家族歴を有する例は少ない
・症状は筋骨格性疼痛, 骨折など. 
 軟骨石灰化や偽痛風症例もある.
・血清ALP値の中央値は正常下限の40%程度. 

骨折既往あり, なしで分けて比較
・骨折(-)の3割が偽痛風症例. 無症候例は半数.

成人例のHPP 38例の解析
(Osteoporos Int2017 Sep;28(9):2653-2662.)
・骨密度は正常となる患者が多い
・ALPは正常下限ギリギリ〜1/3以下の低下まで様々

臨床的特徴
・骨折既往は4割弱
・歯牙の異常が5割程度
・軟骨石灰化, CPPDによる関節痛症例は8例.
・繰り返す筋骨格性疼痛も4割. 持続性疼痛など疼痛は色々なパターンがある.

各症状別の対応
骨折, 骨粗鬆症にはテリパラチドも効果的

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・成人発症の低ホスファターゼ症は、若年の骨粗鬆症, 骨折, 繰り返す偽痛風, 歯牙の異常で考慮する. 
・説明のつかない持続的なALP低値で疑う

という感じ