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2020年10月28日水曜日

持続的透析治療における抗凝固薬の比較: 回路内クエン酸 vs 全身ヘパリン投与

 (JAMA. 2020;324(16):1629-1639. doi:10.1001/jama.2020.18618 )

RICH: 重度AKIや臨床的に透析療法を必要とするICU患者を対象とし, 持続的腎代替療法中の抗凝固薬として, 回路内クエン酸Na使用群 vs 全身UFH投与群に割り付け, 透析膜寿命を比較したRCT

患者群は以下の全てを満たす群

(1) KDIGO stage 3AKIまたは透析の絶対適応となる病態(BUN>150mg/dL, K>6mEq/L, Mg>4mmol/L, pH<7.15, 尿量<200mL/12h, 体液過多による肺水腫で利尿薬に反応しない)

(2) 1つ以上の病態: 重症敗血症以上, 昇圧薬使用, 治療不応生体液過多

(3) 18-90

(4) 3日間以上のICUでの集学的治療を行う予定の患者

(5) インフォームドコンセント取得

除外項目は以下;

・出血リスクが高い, 出血素因がある, 治療として抗凝固が必要使用する薬剤にアレルギー歴がある, HITの病歴, 維持透析患者永久的な腎動脈閉塞や手術治療の適応となる病変によるAKI, 糸球体腎炎によるAKI, 間質性腎炎, 血管炎, 腎後性腎不全, 12ヶ月以内の腎移植歴, HUS/TTP, 妊婦, 持続的な重度の乳酸アシドーシス*(pH<7.2, Lac>8mmol/L2h以上), 急性肝不全*, ショック*

*クエン酸の貯留, 中毒のリスクとなるため除外された.

・回路内クエン酸投与群では, フィルター前方で回路内に投与し, フィルター後のイオン化Ca 0.25-0.35mmol/Lを目標に調節

・全身的UFH投与群では, aPTT 45-60secを目標に投与

・血流量は100mL/. フィルターは72h毎に交換した

母集団


アウトカム

・計画ではN=1260の導入を予定していたがN=638の時点で, フィルター寿命に有意差を認め, 早期終了となった.

フィルターの寿命はクエン酸群で44.9h, UFH群で33.3h有意にクエン酸群で良好(AD 11.2h[8.2-14.3]).

出血リスクも有意にクエン酸群で低い結果5.1% vs 16.9%, AD -11.8%[-16.8~-6.8]

透析開始後~感染症リスクは有意にクエン酸群で上昇する: 68.0% vs 55.4%, AD 12.6%[4.9-20.3]

・ICU滞在期間や死亡リスクは有意差ないが早期終了のため, 評価は不十分とされている

感染症の詳細

・グラム陽性菌の頻度が上昇. 感染源が判明している例では, 菌血症, 肺炎, UTIなどに差はない.

感染症頻度は, フィルター寿命がないほどリスクが上昇している(12h延長毎にOR 1.08[1.05-1.11])

合併症頻度

・低P血症やアルカローシスがクエン酸群で多い

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・持続透析を行う場合, 回路内クエン酸投与はUFHと比較してフィルター寿命を有意に延長させる. また出血リスクも有意に低下させる.

・しかしながらフィルター寿命が長くなると, その分感染症が増加するリスクとなる.

・クエン酸の副作用としては低P血症やアルカローシスに注意.

・リスクとベネフィットを考慮して選択するよい