CMLでダサチニブ(スプリセル®)を1年前に開始された患者で,
両側性の大量胸水貯留をきたした症例.
ダサチニブは薬剤性胸水貯留を高頻度で来す薬剤であり,
薬剤自体は血液内科でしか使用しないと思われるが, 胸水貯留の鑑別として知っておいた方が良いかもしれない
Dasatinib胸水
(Current Opinion in Pulmonary Medicine 2010, 16:351 – 356)
・Dasatinibではおよそ20%で胸水貯留が認められ, 薬剤継続困難の主要な原因の1つとなる.
・特に2回/日の投与でリスクとなるため, 現在では1回/日で投与する
Dasatinibの投与量, 回数を評価したPhase 3. CA180-034における胸水貯留の頻度:
(Cancer 2010;116:377–86.)
・投与量が多いほど, また1日投与回数が多いほど胸水貯留リスクは増大.
・100mg/dを1日1回投与で最もリスクは低い.
他のリスク因子としては, 高齢者が挙げられる
(Current Opinion in Pulmonary Medicine 2010, 16:351 – 356)
DasatinibのPhase 3 trial, DASISION, CA180-034における胸水貯留症例
(Clinical Lymphoma, Myeloma & Leukemia, Vol. 17, No. 2, 78-82 a 2016 )(Haematologica. 2019 Jan;104(1):93-101. doi: 10.3324/haematol.2018.188987.)
・薬剤開始後〜胸水貯留までの期間は様々. 数年後に出現する例も珍しくはない
・Gradeも軽度〜重度まで様々である.
・胸水貯留の有無で予後や治療反応性には影響しない.
胸水はリンパ球有意(90%程度)の滲出性胸水となる.
症例報告ではTGが上昇する, 乳び胸となる例も報告あり
・胸水貯留の機序は判明していないが, 滲出性胸水, リンパ球有意からは免疫機序の胸膜炎が示唆される
血小板由来成長因子受容体, βポリペプチドの非標的抑制などの関与.
・ラットを用いた研究では, Dasatinib投与により用量依存性, 可逆性の内皮細胞透過性の亢進が生じる報告もある(Eur Respir J 2018; 51: 1701096 )
ダサチニブ胸水の対応
(Current Opinion in Pulmonary Medicine 2010, 16:351 – 356)
・大量胸水で症候性ならば休薬+ステロイドを検討
・ただし, ステロイド投与は確立された方法とは言いがたく, 短期的な投与に限るべき. 長期的な使用は避けるべきとするReviewもある(Clinical Lymphoma, Myeloma & Leukemia, Vol. 17, No. 2, 78-82 a 2016)
イタリアにおける報告:
2005-2017年に21箇所の血液センターでCML-chronic phaseでDASを使用された853例中, 196例で胸水貯留を認めた(23.0%)
(Ann Hematol. 2018 Jan;97(1):95-100. doi: 10.1007/s00277-017-3144-1.)
・胸水貯留を認めた患者の初期投与量hが100mg/dが7割と最多
・DAS開始後~胸水貯留っまでは16.6ヶ月[0.3-109.0]
1年以内~5年以降まで様々なタイミングで出現
・心嚢水貯留っもある
・投与量を減らした後も半数で再発.
取られた対応
・主には休薬, ステロイド, 利尿薬
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最近は1st lineで用いられる薬剤でもあり, しかも胸水貯留リスクは20-30%と非常に高い.
押さえておいた方が良さそうです.