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2019年9月11日水曜日

リウマチ性髄膜炎

症例: 70歳台女性, 主訴数日の経過の変動する右片麻痺, 呂律障害

数年前にRAを指摘されているが, 使用している薬剤はNSAIDと少量PSLのみで近医フォロー中。
3-4日前より右下肢の脱力、歩行困難となった. 軽快, 増悪を繰り返し, さらに呂律障害を呈したため救急要請.

診察で手関節、MP関節、PIPの変形, 関節炎所見あり、リウマチ結節も複数認められた.
頭部MRIではDWIで脳の表層に一致した線状, 点状高信号所見(髄膜)が認められた.
髄液検査では, 細胞数50(多核球60%), タンパク60mg/dL, 糖45mg/dL(血糖90mg/dL)

参考画像(画像は論文より. 実際の症例も類似した所見でした)
(J Neuroradiol. 2014 Oct;41(4):275-7.)

これらの所見よりリウマチ性髄膜炎が疑われた, という症例.


リウマチ性髄膜炎
(Rheum Dis Clin N Am 43 (2017) 561–571)
RAに関連する髄膜炎は稀ではあるが, 重大な合併症
・脳, 脊髄を覆う3層の膜: 硬膜, くも膜, 軟膜全てに炎症を生じ得る
 >> 硬膜炎, 軟髄膜炎, その合併
RA髄膜炎は局所~びまん性の炎症まで様々であるが部位は脊髄よりも大脳周囲で多い.
基本的に長期間の経過のRAで合併する
 関節症状が安定していても生じるため, RA患者で新規神経症状が出現した場合は常に注意.

RA髄膜炎の症状は様々
・炎症の部位, 局所性かびまん性かでも異なる.
 頭痛や痙攣, 神経局所症状, 意識障害, 脳神経障害は多い.
・19例の症例報告のReviewでは, 意識障害が47%, 脳神経障害が26%, 片麻痺/対麻痺が21%, 痙攣が21%, 頭痛が11%との報告がある
 また, 皮下リウマチ結節が67%, 臓器リウマチ結節が47%で認められる.
 リウマチ性血管炎を合併している症例もある
(Semin Arthritis Rheum. 1989 May;18(4):258-66.)(Clin Rheumatol (2003) 22: 475–480)

RA髄膜炎の診断は画像所見と病理
・造影MRIでは髄膜の肥厚・造影効果が認められる.
 局所的な異常所見が主だが, びまん性のこともある.
同部位の組織では単核球浸潤, 形質細胞浸潤が認められるが, これら所見は非特異的.
 リウマチ結節が認められれば特異的所見となる.
また肉芽腫性炎症所見が認められることもある. 血管炎所見は稀.

・CSF中の抗CCP抗体やRFが上昇する報告もあり(Front. Neurol. 10:666. doi: 10.3389/fneur.2019.00666 )
CSF所見は非特異的. 単核球優位となるが, 多核球の上昇パターンもある. 髄液糖も正常~低下まで様々

画像の例
 (Rheumatol Int (2012) 32:3679–3681)
 (J Neuroradiol. 2014 Oct;41(4):275-7.)
(Clin Rheumatol (2003) 22: 475–480)

RA髄膜炎の鑑別疾患は様々.
・肥厚性硬膜炎を呈する疾患群
 IgG4関連疾患, ANCA関連血管炎, サルコイドーシス, 悪性腫瘍の髄膜播種など
・感染症では, 結核性髄膜炎, NTM, 真菌, 神経梅毒, ウイルス
・使用している薬剤による中枢障害
・RA+リンパ増殖性疾患の合併

RAに関連するCNS障害のまとめ
(Best Practice & Research Clinical Rheumatology 32 (2018) 500-510)

RA髄膜炎の治療
・Clinical trialは無し.
よく使用されているのはステロイド(mPSLパルス)
 ステロイドにDMARDs, アザチオプリン, シクロホスファミドを併用することもある.
治療でもMRI所見は残存することが多い
・再発することもあるため注意.