70歳女性. 尿に膿が.
重症肺炎にてICU管理中. 喀痰からは緑膿菌が検出され, 抗菌薬にて肺炎歯改善傾向にある. しかしながら発熱は微熱が持続. CRPは10mg/dL前後で横ばいとなり, ルート感染, CDI, 肺膿瘍の形成などは否定的.
尿検査では細菌の検出はなく, 酵母のみ検出.
最初は経過観察していたが, 炎症が持続し, さらに尿道カテーテルより徐々に膿性の尿が漏出し始めた. ほぼ膿.
グラム染色では, 多数の好中球に発芽, 仮性菌糸を形成した酵母が多数認められた.
そこでエコーを当てると, このような像が得られた.
(写真は本人ではなく論文から)
(Kidney International (2007) 71, 373)
さて, これはなんだろうか?
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カンジダ腎盂腎炎. Fungus ball形成
カンジダが尿から検出されるのは決して珍しいものではない.健常人では<1%と稀だが, 入院患者では5%, 重症患者では10%で認められる.
(Clinical Infectious Diseases 2011;52(S6):S433–S436)
リスク因子は以下の通り
尿からカンジダが検出=カンジダUTIではなく, 無症候性の真菌尿であることが大半.
・ごく一部でUTI症状や, 発熱の原因となることがある.・また, 深在性真菌症, カンジダ血症の一部症としてカンジダ尿症を伴うこともある.
・UTI症状があり, 他の感染症が否定的で, かつ尿中の細菌に対する抗生剤治療で反応しない場合や, 膣や尿道カテーテルからのコンタミ, 常在によるカンジダ尿症が考えにくい場合, カンジダUTIを考慮する.
ちなみに, 検出されるカンジダは以下の頻度
カンジダUTIを疑った際のアプローチ
(Clinical Infectious Diseases 2011;52(S6):S452–S456 )
・まずカンジダ血症からのカンジダ尿症ではないかどうかを評価
・尿検査は繰り返し行い, 有意なカンジダ尿症かの確認も重要
カンジダ円柱は稀だが, 認められれば腎臓での感染を疑う.
・症候性のカンジダ尿症では, 腹部エコーにて腎臓, 膀胱の評価を
Fungus ballが認められる可能性, 閉塞の評価を行う.
CTにて腎膿瘍や周囲の炎症所見の確認も考慮する.
・症状は他のUTIと同様. 腎盂腎炎や膀胱炎, 前立腺炎, 精巣上体炎など生じる
・尿検査では
膿尿はカテーテル留置中の患者では非特異的に認められるため, カンジダUTIの診断に有用とは言えない.
カテーテル(-)で, 尿からカンジダのみ検出され, 且つ膿尿があれば疑わしい
・尿グラム染色では,
4-10µmの出芽している酵母で仮性菌糸を認めるものはC. albicans, parapsilosis, tropicalisを疑う.
2-4µmで仮性菌糸を認めない小さめの酵母はC. glabrataを考慮する.
(Clinical Infectious Diseases 2011;52(S6):S452–S456 )(Clinical Infectious Diseases 2005;41:S371–6 )
カンジダによるFungus ball
(RadioGraphics 2005; 25:1335–1356)
(Kidney International (2007) 71, 373)
・腎盂や膀胱で認められ, 尿管閉塞もきたす
カンジダUTIの治療
(Journal de Mycologie Médicale (2017) 27, 293—302 )
・感染部位や疑うカンジダにより抗真菌薬の種類, 投与期間を決める
・Fungus ballは長期間投与が必要となる
無症候性の場合は基本的に治療は不要
(Journal de Mycologie Médicale (2017) 27, 293—302 )