70歳台男性.
入院1ヶ月前より両目の発赤を自覚し, 近医にて結膜炎と診断. ステロイド点眼を受けていた. また急激な視力低下を指摘され, 今後精査予定であったとのこと.
微熱も持続しており, 精査目的で当院を受診.その際の血液検査にてCRP 7-9mg/dL程度の上昇, ESR >100mm/hと炎症反応上昇を認めたが. それ以外の一般検査では異常は認められず.
両目の発赤は結膜全体の発赤で, 血管拡張も強い. 眼瞼結膜は正常. 眼底鏡では右で硝子体の混濁があり, 左では視神経乳頭は正常.
ぶどう膜炎、硝子体炎を疑い眼科紹介とし, 汎ぶどう膜炎の診断であった.ステロイド点眼により所見は修飾され, 鑑別に有用な所見は得られず.
また入院後より非特異的な頭痛を訴えるようになり, 髄液検査では細胞数20程度(単球, 多核球同数)のみの軽度上昇であった.
血液培養陰性.
ぶどう膜炎の一般的な鑑別であるサルコイドーシスを示唆する画像所見, 血液検査は認めず(ACE, リゾチーム, IL-2Rの上昇, 縦隔LN腫大なし), 原田病を示唆する皮膚所見, 毛髪, 眼底所見なし.
T-SPOT陰性, 各種自己抗体陰性.
胸腹部, 頭部CTで腫瘍性病変や原因につながる所見は得られず
問題点は
#Etiology不明の両側の汎ぶどう膜炎, 右硝子体炎
#微熱, 持続的炎症反応高値
#入院時からの頭痛, 軽度CSF細胞数上昇
追加検査は?
-----------------------------------
頭痛や眼病変があることから, 造影MRIを評価したところ, 肥厚性髄膜炎の所見が得られた.
#微熱, 持続的炎症反応高値
#Etiology不明の両側の汎ぶどう膜炎, 右硝子体炎
#入院時からの頭痛, 軽度CSF細胞数上昇
>> 肥厚性硬膜炎
-------------------------------
これら所見より, IgG4を評価すると, IgG 1600mg/dL, IgG4 190mg/dLとIgG4の上昇あり.
IgG4関連疾患によるぶどう膜炎, 硝子体炎, 強膜炎, 肥厚性硬膜炎疑い.
他の病変は乏しく, 明らかな所見はないが涙腺や口唇唾液腺生検を検討中である.
さて, IgG4による眼病変をおさらい.
IgG4-RDによる眼窩内病変
・少ないが, 強膜炎も報告がある.
(Semin Arthritis Rheum. 2014 Jun;43(6):806-17.)
眼内病変の報告
(Curr Opin Ophthalmol 2017, 28:617 – 622)
・強膜炎, 硝子体炎, ぶどう膜炎, 眼内の結節などの報告.
眼周囲の附属器炎では両側性の炎症が多いが. 眼内病変では片側性の方が多い.
ちなみに強膜の結節は以下のようになるらしい
(Mod Rheumatol, 2014; 24(1): 195–198)
IgG4-RDによる眼窩内病変の鑑別
(Semin Arthritis Rheum. 2014 Jun;43(6):806-17)
・重要なのはリンパ腫.
・後からリンパ腫が顕在化する例もあり, フォロー中もチェック.
ちなみに, ぶどう膜炎と肥厚性硬膜炎で検索すると, 4例の症例報告がHITし, 特発性2例, 神経ベーチェット1例, Cogan症候群が1例
眼内病変の報告
(Curr Opin Ophthalmol 2017, 28:617 – 622)
・強膜炎, 硝子体炎, ぶどう膜炎, 眼内の結節などの報告.
眼周囲の附属器炎では両側性の炎症が多いが. 眼内病変では片側性の方が多い.
ちなみに強膜の結節は以下のようになるらしい
(Mod Rheumatol, 2014; 24(1): 195–198)
IgG4-RDによる眼窩内病変の鑑別
(Semin Arthritis Rheum. 2014 Jun;43(6):806-17)
・重要なのはリンパ腫.
・後からリンパ腫が顕在化する例もあり, フォロー中もチェック.
ちなみに, ぶどう膜炎と肥厚性硬膜炎で検索すると, 4例の症例報告がHITし, 特発性2例, 神経ベーチェット1例, Cogan症候群が1例
強膜炎と肥厚性硬膜炎では12件の論文がHIT
高齢者でMPOーANCA陽性, IgG4高値であった症例
真菌感染
IgG4-RDによる両側性強膜炎+肥厚性硬膜炎
特発性と判断
真菌感染
IgG4-RDによる両側性強膜炎+肥厚性硬膜炎
特発性と判断
UCTDに伴うものと判断. 組織では線維化と形質細胞浸潤+リンパ球浸潤
ANCA関連血管炎が2例
RA関連
RA関連
大体IgG4関連とAAVが多い. 特発性や診断がついていないものは実はIgG4関連が隠れている可能性はありそう.(そもそも肥厚性硬膜炎自体がIgG4とAAVが多くを占める)
ぶどう膜炎や強膜炎の鑑別でIgG4RDも覚えておいた方が良いかもしれない