ブログ内検索

2018年10月1日月曜日

症例: 原因不明のぶどう膜炎

70歳台男性.
入院1ヶ月前より両目の発赤を自覚し近医にて結膜炎と診断ステロイド点眼を受けていたまた急激な視力低下を指摘され今後精査予定であったとのこと.
微熱も持続しており精査目的で当院を受診.その際の血液検査にてCRP 7-9mg/dL程度の上昇, ESR >100mm/hと炎症反応上昇を認めたがそれ以外の一般検査では異常は認められず.

両目の発赤は結膜全体の発赤で血管拡張も強い眼瞼結膜は正常眼底鏡では右で硝子体の混濁があり左では視神経乳頭は正常.

ぶどう膜炎、硝子体炎を疑い眼科紹介とし汎ぶどう膜炎の診断であった.ステロイド点眼により所見は修飾され鑑別に有用な所見は得られず.

また入院後より非特異的な頭痛を訴えるようになり髄液検査では細胞数20程度(単球多核球同数)のみの軽度上昇であった.

血液培養陰性
ぶどう膜炎の一般的な鑑別であるサルコイドーシスを示唆する画像所見血液検査は認めず(ACE, リゾチーム, IL-2Rの上昇縦隔LN腫大なし), 原田病を示唆する皮膚所見毛髪眼底所見なし
T-SPOT陰性各種自己抗体陰性.
胸腹部頭部CTで腫瘍性病変や原因につながる所見は得られず

問題点は
Etiology不明の両側の汎ぶどう膜炎右硝子体炎
#微熱持続的炎症反応高値
#入院時からの頭痛軽度CSF細胞数上昇

追加検査は?
-----------------------------------





















頭痛や眼病変があることから造影MRIを評価したところ肥厚性髄膜炎の所見が得られた.

#微熱持続的炎症反応高値
Etiology不明の両側の汎ぶどう膜炎右硝子体炎
#入院時からの頭痛軽度CSF細胞数上昇
 >> 肥厚性硬膜炎

-------------------------------












これら所見より, IgG4を評価すると, IgG 1600mg/dL, IgG4 190mg/dLとIgG4の上昇あり.

IgG4関連疾患によるぶどう膜炎硝子体炎強膜炎肥厚性硬膜炎疑い.
他の病変は乏しく明らかな所見はないが涙腺や口唇唾液腺生検を検討中である.

さて, IgG4による眼病変をおさらい.

IgG4-RDによる眼窩内病変
・両側性の涙腺, 三叉神経, 外眼筋, 眼窩脂肪織の炎症が多い.
(Ophthal Plast Reconstr Surg 2015;31:167–178) 

少ないが, 強膜炎も報告がある.
(Semin Arthritis Rheum. 2014 Jun;43(6):806-17.)

眼内病変の報告
(Curr Opin Ophthalmol 2017, 28:617 – 622)
強膜炎, 硝子体炎, ぶどう膜炎, 眼内の結節などの報告.
 眼周囲の附属器炎では両側性の炎症が多いが. 眼内病変では片側性の方が多い.

ちなみに強膜の結節は以下のようになるらしい
(Mod Rheumatol, 2014; 24(1): 195–198)

IgG4-RDによる眼窩内病変の鑑別
(Semin Arthritis Rheum. 2014 Jun;43(6):806-17)

・重要なのはリンパ腫.
後からリンパ腫が顕在化する例もあり, フォロー中もチェック.

ちなみに, ぶどう膜炎と肥厚性硬膜炎で検索すると, 4例の症例報告がHIT特発性2神経ベーチェット1, Cogan症候群が1

強膜炎と肥厚性硬膜炎では12件の論文がHIT
 高齢者でMPOANCA陽性, IgG4高値であった症例
 真菌感染
 IgG4-RDによる両側性強膜炎+肥厚性硬膜炎
 特発性と判断
 UCTDに伴うものと判断組織では線維化と形質細胞浸潤+リンパ球浸潤
 ANCA関連血管炎が2
 RA関連 


 大体IgG4関連とAAVが多い特発性や診断がついていないものは実はIgG4関連が隠れている可能性はありそう.(そもそも肥厚性硬膜炎自体がIgG4AAVが多くを占める)

 ぶどう膜炎や強膜炎の鑑別でIgG4RDも覚えておいた方が良いかもしれない