人工呼吸器離脱, 抜管の評価にはSBTを用いる.
SBTを成功させた後に速やかに抜管するが, それでも抜管失敗する例はある.
(失敗は抜管後48-72時間以内の再挿管で定義されることが多い)
失敗リスク因子は以下のようなものがある
(N Engl J Med 2012;367:2233-9.)
喀痰が多いというのは一つの抜管失敗リスクとなるが,
どの程度多いとダメなのか?
熱傷患者で挿管管理を行なっている125例の報告
(burns 39 (2013) 236–242 )
・SBTが成功した患者群で抜管を行い, 抜管失敗リスクを評価.
・17例で抜管失敗
・抜管失敗のリスク因子はCPF≤60L/min (cough peak flow)と気道分泌量
・気道分泌量は抜管前6時間での吸痰頻度で評価しており,
上記スコア4は1時間に1回以上の吸痰を必要とする場合に失敗リスクとなる.
ICUにて2日間以上の挿管管理を行い抜管を施行した122例の前向きcohort.
(Respir Care 2007;52(12):1710 –1717. © 2007 )
・全例でSBTが成功したのちに抜管.
・抜管失敗(48h以内の再挿管で定義)は13%(16)
・抜管失敗に関連する因子は以下の3項目
中等度~多量の気管内分泌物(軽度: 2-4hに1回, 中等度 1-2hに1回の吸引, 多量 1hに数回)
GCS≤10点
SBT時の高CO2血症 PaCO2 ≥44mmHg
ICUで挿管管理され, SBTが成功した100例の前向きCohort.
(CHEST 2001; 120:1262–1270)
・上記患者群で, 喀痰量, 咳嗽の強さ, White card test(WCT)など評価し, 抜管失敗リスクを評価した.
・WCTは気管チューブ開口部から1-2cm離して白いカードを置き, 患者に挿管されたまま咳嗽をしてもらう. 咳嗽は3-4回ほど行う.
カードに喀痰が付着すれば陽性と判断する.
・咳嗽の強さは主観的に0-5で評価:
0: 咳嗽できない,
1: 空気の流れはあるが, 音はしない
2: 軽度の咳嗽音,
3: 明らかな咳嗽音
4: より強い咳嗽,
5: 複数の連続した強い咳嗽
・喀痰量は抜管前4-6h以内の看護師や呼吸療法士などの主観的評価
なし, 軽度, 中等度, 多量で評価
アウトカム 抜管失敗(72h以内の再挿管)は18例.
・抜管失敗リスク因子:
喀痰吸引の回数が2時間に1回以上, 中等度~多量な喀痰
咳嗽の強さが弱い~咳嗽できない
貧血(Hb≤10g/dL)
・WCT陰性もリスクとなる
喀痰量と咳嗽の強さの組み合わせはより抜管失敗リスク評価に有用
各指標と抜管失敗に対する感度, 特異度
・喀痰量が中等度~多量の場合もしくは2時間に>1回の吸痰を必要とする場合は強く抜管失敗を示唆する.
・咳嗽の強さとWCT試験の相関性は高い.
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・上記の報告からは, SBTが成功しても喀痰量が多く, 咳嗽の力が弱い場合は再挿管となるリスクが高いと言える.
・リスクとなる喀痰量は中等度〜多量で, それは1-2時間に1回以上の喀痰吸引を必要とする程度の量と認識しておけば良さそうだ.
・咳嗽の強さはCPFなど定量的な方法もあるが, White card testや主観的評価も有用かもしれない.
・喀痰量と咳嗽の強さとの兼ね合いで抜管を検討することも大事なのであろう